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第29話 波乱!リョフの訪問!

挿絵(By みてみん)

「何でリョフがここにいるんだぜ!」


「ソウソウに負けて逃げてきたみたいです」


「あんなんにいられちゃ迷惑だ。すぐ追い出そうぜ!」


お団子ヘアーの義妹・チョーヒが場所も憚らず激昂する。長く美しい黒髪の義妹・カンウも不満そうな顔をしている。


長身ポニーテールの女生徒・リョフと俺達は、反トータク連合の時、戦った間柄だ。最終的にリョフがトータクを裏切り連合側についたが、即仲良しとはいかないようだ。


だが、俺達を頼って来てくれた以上、そう無下にもできない。


それにソウソウに加えて、リョフと対立するのは避けたいところだ。


「チョーヒ、困って頼ってきたんだ、そういうことをいうもんじゃない。


リョフさん、お茶をどうぞ。他の皆さんも」


「ありが…とう…リュービ」


「いえいえ、思えばこの文芸部もリョフさんがソウソウを攻撃してくれたから存続できたようなものですし」


「そうか…私の…おかげ…か…


ふふふ…リュービ…お前…いい奴…」


少し顔が曇っていたリョフだが、少しだが表情が明るくなった。


「兄さん、そこまで下手に出ることないんじゃないですか!」


「そうだぜ、アニキ!別にリョフがいなくたって俺達の勝ちだったぜ!」


「二人とも落ち着いてくれ」


「リュービ…その…二人は…お前の…妹…なのか…?」


リョフが不思議そうな顔でこちらを見てくる。

確かに知らない人からしたら説明がいる話だな。


「ああ、この二人は俺の義理の妹なんです。カンウ・チョーヒとは義兄妹の誓いをかわして兄妹分になったんです」


これで通じるだろうか?高校生の男女が兄妹の誓いをするというのも早々聞く話じゃないしな。


リョフは納得してくれたのか、俺の話に深く頷いてくれた。


「義兄妹…!なるほ…ど…私も…弟妹…が…欲し…かった…


リュービ…私…とも…義姉弟の…誓い…を…しよう…私が…姉で…お前…が…弟…だ…」


リョフの表情はパアッと明るくなり、俺の頭にポンと手を置いた。


「待て!なんでお前が姉なんだぜ!」


リョフのいきなりの姉宣言に呆気にとられる俺より先にチョーヒが反応した。


「私の…方…が…強い…


強い方…上…弱い方…下…当然…」


「じゃあこの場でお前を俺の妹にしてやるぜ!」


「望む…ところ…」


両者身構えて一触即発の空気が流れる。


チョーヒは強いが、リョフはかつて俺達三兄妹で協力してようやく一撃くらわせられた程の強敵だ。ここで闘わせるわけにはいかない。


「チョーヒ落ち着け!


わかりました、リョフさん、今日から姉弟になりましょう」


「そうか…!今日…から…お前…私の…弟…だ…」


リョフに力強く引き寄せられ、俺は豊満な二つの膨らみに顔を埋めた。


「あーどさくさに何兄さんを抱きしめているんですか!」


「弟…可愛がる…自然な…こと…」


ああ、この感じなんか懐かしい…


この心地好さにもう少し浸っていたいところだが、これ以上は本当にカンウ・チョーヒに殺されかねないな。


「とりあえずリョフさん達は人数も多いので隣の準備室の方をお使いください」


「わかっ…た…リュービ…また…後で…な…」


リョフ一行は退出し、隣の部屋へと移っていった。


「兄さん!なんでリョフさんと姉弟になってるんですか!」


「リョフは強い。今度ソウソウに攻められた時のためにも味方につけておいた方がいい」


「それでも姉弟の誓いなんてやってんじゃねーぜ!」


「そうです!確かに私達の兄妹の誓いは軽い気持ちで始めました。


ですが、もう私達にとっては兄妹の誓いは特別なものなんです!それをあんな簡単に…」


「アニキのバカー!」


二人の涙ぐむ姿を見て、俺は自身の誤りに気づいた。


「二人とも…


そうだな、俺達にとって兄妹の誓いは特別なものだよな。また折りを見て姉弟の件は断っておくよ」


「本当ですね、兄さん」


「アニキ!約束だかんな!」




エンジュツ本拠地~


濃い目の紫の長い髪に、幼さげな容姿と、胸だけ大人顔負けに育った小柄な体つきの少女・エンジュツは、居並ぶ群臣を前にして発言した。


「皆、聞きなさい。トウケンが私に無断で部長職をリュービに譲ったばかりかそのリュービも未だに私に挨拶一つ寄越さない。この無礼をどうしましょうか?」


群臣の一人、眼鏡をかけた男子生徒・エンショーは意見を述べる。


「部長就任はついこの間の話ですからそんなに急には動けないでしょう。もう少し待つべきではないでしょうか?」


しかし、灰色の髪に、メイド服を着た少女・チョウクンはその意見を遮り、自説を述べる。


「いえ、これはエンジュツ様に対する宣戦布告も同然です!是非リュービを討伐すべきです!」


チョウクンの発言に、ニヤリと笑うエンジュツ。


「ええ、全くその通りよ。チョウクン、貴女意見こそ正しい意見だわ。


貴方のような人物を配下にできて私も鼻が高いわ」


「はっ、光栄です!」


チョウクンの発言にエンショーは反論する。


「しかし、リュービにはカンウ・チョーヒという豪傑がいる上に、今文芸部にはリョフがいますよ」


「ふふ、安心しなさい。リョフとは既にチンキュウを通じて秘密協定を結んでいるの。これでリュービを挟み撃ちよ」


「流石、エンジュツ様。希代の戦略家ですな」


高らかに笑うエンジュツとチョウクンを見て、エンショーは思わずため息をもらした。


「やはり、初めから攻撃する気でしたか…」


「さあ、お前達、出陣よ!」




文芸部部室~


くせっ毛の女生徒・ビジクが部室に飛び込んできた。


「大変です。エンジュツが我が文芸部を攻めてくるそうです!」


「エンジュツが?何故突然…


いや、今は迎え撃つ準備が先だ」


エンジュツ軍侵攻の報告に、俺はすぐに部室にみんなを集めた。


「文芸部員を三つに分ける。本隊と別動隊と部室の守備隊だ。


本体は俺が率いる。別動隊はカンウ、守備隊はチョーヒだ」


「アニキ、オレが留守番かよ!嫌だぜ隣にはリョフがいるのに!」


「だからお前を残すんだ。リョフはまだ本心がわからない。万が一攻めてきた時、お前なら対抗できる」


「うー、そこまで言うなら仕方ないぜ。留守はオレに任せな!」


「では、カンウ、行くぞ!」


「はい!」


俺達が出撃しようとしたその時、扉を開けてリョフが姿を現した。


「弟…よ…エンジュツ…攻めてきた…そうだな…私が…倒そう…か…?」


「いえ、リョフさんは今来られたばかりで疲れています。今はお休みください」


警戒している相手に気を使われると、悪いことしている気分だ。しかし、もしリョフとエンジュツが裏で組んでいたら俺達は挟み撃ちだ。連れていくわけにはいかない。


「そうか…部下…疲れて…いるよう…だから…助かる…


それと…今度…から…私の…ことは…お姉ちゃん…と…呼んで…欲しい…」


「え…あ、ああ、わかったよ。とにかく出陣だ!」




「ふん、副部長である俺に相談も無しに部隊編成か。うちの部長は偉くなったもんだな」


リュービ達の出陣を見送りながら、ヘアバンドをつけた茶髪の男子生徒・ソウヒョウは不機嫌な様子で愚痴る。


そこへリョフ軍参謀・チンキュウが通りかかった。


「おや、ソウヒョウ副部長、どうされたのですか?」


「どうもこうもねーぜ!リュービ部長が部隊編成を勝手に決めてよ!」


「でも、貴方を守備隊の隊長に残したということは信頼されているということではありませんか?」


「何言ってやがる、守備隊長はチョーヒだ。俺はその一員だよ」


「え、副部長である貴方を差し置いてですか!」




リュービ達を見送ったチョーヒとカンヨーは部室に戻ろうと廊下を歩いていた。その帰り道カンヨーがボソッとぼやいた。


「ああ、俺もカンウと一緒が良かったなー」


「じゃあ、アニキ達について行けば良かったじゃねーか」


「いやー、やっぱり戦いは危ないしー、俺なんか足手まといだろうしー」


「弱虫なやつだぜ」


歩くチョーヒの耳にソウヒョウの声が届いた。


「そうなんだよ!リュービはボンクラなんだよ!


それにチョーヒなんて腕力だけで頭空っぽ!あんなの留守任せるなんてバカじゃねーの!」


「おい、ソウヒョウ!


アニキとオレの悪口かぜ!」


「チョーヒ!いや、これはその…」


「歯ぁ食いしばれ!」


チョーヒの鉄拳制裁にソウヒョウはその場に倒れた。


「全く!失礼な奴だぜ!」


腹をたてながらチョーヒはカンヨーと共に部室へと戻っていった。


「ぐぅぅぅ…チョーヒめ…副部長のこの俺を殴るとは」


「大丈夫ですか、ソウヒョウ副部長!


副部長に手を上げるなんて全く上を思いやる気持ちのない部員ですね」


「そうだ…何故俺が…副部長である俺が、先輩である俺が、後輩に気を使わねばならん」


「副部長に後輩が手を上げるなんて前代未聞。これはもう反乱ではありませんか?」


「その通りだ!奴こそ文芸部に逆らっているんだ!奴にこそ制裁を加えるべきなんだ!」


「チョーヒは排除すべきです。でないと文芸部とは名ばかりのリュービの私兵になりますよ」


「しかし、チョーヒは強いからな…」


「一人でダメなら他の部員も呼び掛ければいい。それに我等リョフ隊も協力しますよ」


「手伝ってくれるのか!」


「はい、我らは文芸部に恩のある身、出来る限りのことは致しましょう」


「よし、ゾウハ達に声を掛けよう!あの生意気な後輩にどちらが上かわからせてやる!」


一人暇になったチョーヒは図書室で居眠りをしていた。


「うへへ…アニキ…ギュッてして…ZZZ…」


「大変だー!チョーヒ!起きろー!」


「んな…なんだよ、カンヨー、いい夢だったのに起こしやがって」


「それどころじゃないぞー!外に!外に!」


カンヨーに言われて外に目をやると、ソウヒョウ率いる部隊が部室を取り囲んでいた。


「おい、チョーヒ!副部長としてお前の生意気な態度を許すことはできない!お前に制裁を加える!」


「なんだ、うるさい!」


「ぐはっ!」


チョーヒは、先頭に立っていたソウヒョウを拳の一撃で黙らせた。


それを見たチンキュウは今が好機と部員を煽った。


「皆、見たか!チョーヒが副部長を殴ったぞ!これは文芸部に対する反乱だ!やつらは文芸部を私物化する腹だぞ!」


「お前はリョフんとこの!何言ってやがる!オレは守備隊長だぞ!」


床に這いつくばりながら、ソウヒョウがチョーヒを指差す。


「うぅ…全軍、チョーヒを捕らえろ!」


「お前らが束になってもこのオレに敵うと思ってるのかぜ!」


「リョフ様、出番です」


部隊が左右に別れると、奥よりゆっくりとポニーテールの少女・リョフが、チョーヒ・カンヨーの前に現れた。


「妹…しつける…姉の…役目…」


「誰が妹だぜ!」


「ヤベーぜーチョーヒ。ここは逃げた方が良さそうだぜー」


「文芸部を守るってアニキと約束したんだぜ!逃げられるか!」


「その文芸部の連中が俺達を取り囲んでんだよ!全員殴り飛ばして二人で留守番する気かよ!」


「うう…チクショー!リョフ!この借りは必ず返すからな!逃げるぞカンヨー!」


「待ってくれーチョーヒ」


リョフ軍参謀・チンキュウは、敵を吹き飛ばしながら逃走するチョーヒと、その後を追うカンヨーの背中を見ながらほくそ笑んだ。


「ふふふ…上手くいった… 」

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