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第28話 就任!リュービ部長!

ソウソウとの和睦が成立し、文芸部に平和がもたらされた。


俺・リュービは、トウケン部長に呼ばれ、図書室隣の空き部屋に通された。


「リュービ君、私は君に文芸部部長を任せたいと思う」


文芸部部長・トウケンは思いもかけない提案を俺にしてきた。


「え、そんな、俺は部外者ですよ」


俺はあくまで援軍として文芸部にやってきた身。部員でもなんでもないのにいきなり部長なんて…


「皆ともよく話し合った結果だ。他の部員は君の部長就任を望んでいる」


「でも、トウケンさんはまだ引退には早いじゃないですか」


「私も三年生、今引退しなくても近いうちにその時は来る。


それに今回の件でよくわかったんだ。この学園で部長をやるということがどういうことか。


私は内申点ばかり気にして部長をやって委員をやって…でも私では皆を守れなかった。


君には守る強さがある。この部を、部員を守って欲しい」


「しかし、俺はソウソウやエン姉妹のように強くない。


今回の戦いもソウソウには勝てなかったわけですし…」


「確かに彼女らは強い。いや、強すぎる。彼女達は全てを倒し、頂点を目指す者達だ。


彼女達は決して他者が隣を歩くことを認めない。そのような者にこの部を託したくはない。


だが、リュービ君、君なら別の道を探せるだろう。私はそんな君にこの部を託したい」


「しかし…」


「頼む。もう私では皆ついてこないのだ」


後輩の俺に深く頭を下げるトウケン部長に、俺は根負けした。


「…わかりました。部長の件お請けします」


「ありがとう、リュービ君」




文芸部部長就任の件を義妹のカンウ・チョーヒ、そして同じく援軍にきたデンカイに報告した。


「…というわけで俺は文芸部部長になることになった」


「おめでとうございます!兄さん!」


長く美しい黒髪をなびかせて、カンウが俺の手をとり感激してくれた。


「アニキがついに認められた!よかった、よかったよぉ…」


左右の中華風のお団子ヘアーを揺らしながら、チョーヒも涙ぐみながら喜んでくれた。


「二人ともありがとう」


「リュービさん、おめでとうございます」


「デンカイもありがとう」


「私達も役目が終わりましたので馬術部に戻ります。


それとあの時は助けてくれてありがとうございます。またいつでも遊びに来てくださいね!」


「ああ、文芸部の部長になったし、馬術部との同盟も強化していこうと思っている。これからもよろしく頼むよ」


髪をアップにまとめた女生徒・デンカイは援軍に来た馬術部員を率いて部室へと帰っていった。


「さて、兄さん…いえ、部長。これから文芸部はどうしていきましょうか」


「そうだなアニキは部長だもんな!部長、どうするんだぜ?」


「やめてくれよ、カンウ、チョーヒ。二人はこれまで通り呼んでくれ」


「ふふ、すみません兄さん。ですが、文芸部は本当にどうしていきましょうか?」


「そうだぜ、アニキ。文芸部部長って何するんだぜ?」


「リュービさん、部長就任おめでとうございます。そうですね、では、文芸部の活動と部員達を簡単に紹介しておきましょうか」


くせっ毛気味のショートカットに、赤いフレームの眼鏡をかけた文芸部員の女生徒・ビジクが部を案内してくれた。


「文芸部の主な活動は部誌の発行です。部誌の内容は小説・詩・随筆・論評と多岐に渡ります。


現在の主な執筆者はこの二人です」


ビジクに紹介された執筆者のうちの一人は、長身で、茶髪を短めのボブにカットにし、黒いフレームの眼鏡をかけた男子生徒。


明陳圭(みょうちん・けい)、チンケイだ」


チンケイは無愛想な感じに話を終えると、続いて隣の小柄な、銀髪ショートの三白眼の女生徒が挨拶をする。


「私はその妹の登亜(とあ)、チントウです」


「他にも執筆者はいたんですが、主な人達は今回の騒動で去ってしまって。チョウショウさんとか」


少しビジクが気まずそうな顔をしたので、次の場所に移った。


「こちらでは製本作業や発行手続き等をやっています。ここの担当は私ビジクと」


「その妹の美作芳枝(みまさか・よしえ)、ビホウです~」


真面目そうな姉・ビジクとは対象的に、赤毛に肌を黒く焼き、薄く化粧をしたギャルっぽい娘が挨拶をしてくれた。


「今残っている文芸部の中心人物はこんな感じでしょうか。他には…」


「おい、俺を紹介せんか!俺は副部長の曽我兵介(そが・ひょうすけ)、ソウヒョウだ!」


話に割り込んできたのは、明るい茶髪に、白いヘアバンドをつけ、上着の前を開けて赤いTシャツを見せている男子生徒。


そして、その隣には見覚えのある金髪に、片耳からイヤホンをぶら下げた、へらへら顔の男子生徒。


「そして俺がリュービの大親友、簡田庸介(かんだ・ようすけ)ことカンヨー!」

挿絵(By みてみん)


「カンヨー!なんでお前がここにいるんだ!」


こいつ・カンヨーは中学時代から付き合いのある俺の悪友だ。


「親友のお前が部長になったと聞いてなー、俺も恩恵に…いや、支えになろうと思ってなー!


ははははは」


「調子のいい奴…」




「うう、面白くない。本来なら副部長であるこの俺が部長になるべきじゃないのか!」


副部長・ソウヒョウは不満な様子でぼやいた。


「まあ、ソウヒョウさんは誰も支持してなかったから仕方ないっすね」


ソウヒョウに相づちを打つのは、オールバックの髪型に、アゴヒゲを少し生やした、右耳にピアス、十字のネックレス、腰からチェーンを垂らした男子生徒・ゾウハ。


「ああ、そうだな。誰も俺を支持してくれなかったからな…ってお前らも支持してないってことじゃねーか!」


「まあ、俺らは黄巾党の騒動の時に所属した傭兵みたいなもんなんで部員としての発言力はあんまないっすからね」


「俺だってリュービが来る前にソウソウと戦ってたっつーのによぉ!誰も評価しやがらねー」


「それで負傷してさっさと戦線離脱しましたっすからね」


「うるさいよ!


クソー、ビジク姉妹にチンケイ兄妹が熱烈に支持したのが大きかったなぁー。おまけに環境委員長のコウユウの推薦までありやがるしよー」




文芸部・書庫~


薄暗い室内でチンケイ・チントウ兄妹の二人が対面していた。


「上手くいきましたね、兄さん」


「ああ、トウケンは内申点ばかり気にする上にプライドが高く、問題ばかり起こしていたからな。ようやく引退してくれた」


「しかし、リュービ支持でよくまとまりましたね。誰かエンジュツ辺りを次期部長にして保護下に入ろうと言い出すかと思いましたが」


「やはりソウソウ戦であてにならなかったエンジュツ軍と最後まで戦ったリュービの印象の差だろうな。


エンジュツでは会長になれん。あれとは古い付き合いだが、あんなのに任せたところで波乱が増えるだけだ」


「では、兄さんはリュービを生徒会長にするおつもりなんですか?」


「いや、リュービでは無理だ。おそらく会長になるのはソウソウだろう」


「では、何故リュービを部長にしたんですか?リュービ部長ではまたソウソウと戦うことになるだけでは?」


「ソウソウも和睦を結んですぐ攻撃はできまい。


それに敗戦や保護を求めてソウソウ傘下に加われば何の仕事を押し付けられるかわからん。


ソウソウに文芸部を高く売り付ける。その橋渡しにリュービが最適だったというだけのこと」


「それではあまりにもリュービに悪いのではないですか」


「どうした、リュービに守られて惚れでもしたか?」


「バカなこと言わないで下さい、兄さん!」


顔を赤らめて反論するチントウ。


「私の目的は文芸部の活動を守ること。選挙戦に興味などない」


会話の最中、チントウのスマホが鳴り響いた。


「はい、チントウです。はい、え、そんな…


兄さん、大変です。リョフが、あのリョフが文芸部に逃げ込んできたそうです!」


「なに!その名は計画に無いぞ…文芸部よ、どこに行こうと言うのだ!」

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