第27話 奪還!ソウソウ対リョフ!
文芸部を襲撃したソウソウであったが、突然のチンキュウ・チョウバク謀反の報告に、本拠地であるテニス部へと急ぎ帰還した。
「チンキュウとチョウバクが裏切るとは…リュービ相手と聞いて浮かれ過ぎたか。
チョウバクが裏切ったとなると多数のテニス部員は向こうについただろうな」
赤黒い髪に赤黒い瞳を持つ少女・ソウソウはこの凶報に頭を抱えた。
ソウソウ軍の留守を任されていた、丸眼鏡をかけた小柄な少女・ジュンイクがソウソウの元に報告に来た。
「ソウソウ様、部を守れずに申し訳ありません。
今回の件、チンキュウとチョウバクだけではありません。彼らはリョフと手を組みました」
「リョフだと!」
「あの猛犬が動き出したというの!」
傍らのカコウトン・カコウエンが驚愕する。彼らはトータク戦でリョフの強さを我が身で味わっただけに、この報告は衝撃であった。
「やはりあの女は飼い慣らせぬか」
ソウソウは深くため息をつくと全軍に新たな指令を飛ばす。
「今、最優先するべきは部室を取り戻すこと。
トウケンとは和睦する。皆、準備にかかれ!」
文芸部拠点・図書室~
奥の床に前回のソウソウとの戦いで一人失神し、逃げ遅れたツンツン頭の黄巾党の男が寝かされていた。
「ううーん、ここは…」
「あ、気がつきましたか」
「げぇっ、カンウ!」
目の前に自分を一撃で倒した女生徒の顔が現れたので男は思わず絶叫した。
黒く美しい髪の少女は、化け物でも見たような驚きっぷりに少々不満げな顔をした。
「人の顔見て驚かないで下さい。失礼な人ですね。
ソウソウと和睦することになりました。あなたもソウソウに返します。準備して下さい」
「なぁカンウ…さん。何であんたはそんなに強いんだ?」
「強さですか…そうですね。初めは自分の正義のために力をつけました。
でも今は力になりたい人がいるんです。その人のために私はより強くなれるのです」
「そうか、やはり自分だけのために鍛えてもダメなのか…
カンウさん、俺を弟子にしてくれ!」
黄巾党の男は土下座をしようとしたが、腕が縛られているのでやむなく頭を地面につけて懇願した。
「な、何バカなことを言ってるんですか!」
「俺はあんたに惚れた!俺はあんたのために力をつけてぇんだ!
ぐはっ!」
カンウの手刀で男は再び失神した。
「もう…バカなこと言ってないでとっととお帰りなさい」
「カン姉モテモテじゃん」
ニシシと八重歯を見せながら、お団子ヘアーの少女・チョーヒがやってきた。
「からかわないで下さい。さぁ、伸びてるうちに早くこの男をソウソウに引き渡しましょう」
チンキュウの裏切りにあったソウソウは、すぐにトウケンに和睦を提案した。疲弊していたトウケンはこの申し出をすぐに受け、文芸部に再び平和が訪れた。
和睦が締結されるとすぐさまソウソウはリョフの籠る部室に急いだ。
「リョフに部室で籠城されると厄介だ。奴を引きずりださねばならん」
傍らの眼鏡少女・ジュンイクがソウソウに具申する。
「ソウソウ様、少し離れたところにセツラン・リホウの二人が陣を構えています。こちらを攻撃してリョフを誘きだしてはどうでしょうか」
「セツランにリホウ…あのテニス部のボンボン達か。奴らなら攻略を容易だろう。
我らはこれよりリョフを誘き出すためにセツラン・リホウの陣を攻撃する!全軍前進!」
リョフ陣営・テニス部~
腰までの長さのあるポニーテールに紅のリボンを巻き、深いスリットの入ったロングスカートを履いた少女。彼女が今やテニス部の主となったリョフである。
長身だが細身で、筋肉質とは言えない体つきだが、学園随一の戦闘力を誇り、一対一の戦いでは未だ負け知らずである。
「ソウソウが…動いた…ようだ…倒す…ぞ…」
「お待ち下さいリョフ様、罠があるかも知れません。部室に籠った方が得策です」
ソウソウよりリョフに寝返った参謀・チンキュウがリョフを止めようとする。
「うるさい…全部…倒せば…いいんだ…ろ?」
リョフはチンキュウをはねのけると、そのままソウソウ軍を目指して出撃した。
「ソウソウ様、リョフ軍がこちらに向けて出撃したようです」
「上手く釣れたようだな。
リテン、いるか」
「はっ、ここに」
青い髪を矢を模した簪でまとめた小柄な少女・リテンが前に進み出る。
「リテン、お前はこのままセツラン・リホウの陣を攻撃せよ。
他の者はリョフを迎え撃つぞ!」
ソウソウ軍は対リョフ迎撃用の陣形を展開した。
しかし、鬼神・リョフは十重二十重に包囲するソウソウ軍をものともせず突き進んだ。
「弱い…弱い…弱い…」
「リョフ!我等が相手だ!」
先陣を切って飛び出したのは隻眼の猛将・カコウトン。正面より突撃したが、さすがの猛将も鬼神の前には為す術もなく吹き飛ばされてしまった。
「リョフ…!」
カコウトンに続いて白髪の小柄な少女・ガクシンがリョフに突撃する。
「リョフ、私もいるわよ!」
茶髪ショートの女生徒・カコウエンが指でパチンコ玉を弾いてガクシンを援護する。
「お前達、リョフを包囲し、押し潰しなさい!」
更に切れ長の目をした女生徒・ウキンが部隊を指揮してリョフを追い詰める。
「まだ…足りない…足りない…足りない…」
しかし、ソウソウ軍の歴戦の将である彼女達も、鬼神・リョフの攻撃を止めることは出来ず、次々と倒されていった。
「カコウトン達でも止められぬか…
ならば切り札を使うまでだ!テンイ!」
「リョフ様、そろそろお戻り下さい!」
制止も聞かず出撃したリョフを連れ戻そうとチンキュウが駆け付けたが、リョフはまだ前進する。
そんなリョフの前に、焦げ茶色の長い髪を一つ結びにし、褐色の肌に、セパレートタイプのスポーツウェアを着、拳を包帯でくるんだ格闘少女が立ちはだかった。
「私は典来伊久亜、通称テンイ!
リョフ、私と闘え!」
「邪魔…する…な」
テンイはリョフに自慢の正拳突き放ったが、リョフは無傷でこれを防ぎきり、続くテンイの連打もリョフは全て受け止めた。打撃が防がれたテンイはリョフとがっつり組み、力比べに持ち込んだ。
「力は…多少…強い…な…でも…まだ…足りない」
リョフの人間離れした怪力に、ジリジリとテンイは圧されていった。
「ソウソウ軍随一の怪力テンイが力負けか。
だが、時は稼いだ!」
リョフがテンイを倒した頃、後方テニス部より別の鬨の声が上がった。
「リョフ様!部室がソウジン・ソウコウに占拠されました!」
薄い青髪に道着姿の男子・チョーリョーがリョフの元に駆けつける。
「リョフ様!セツラン・リホウもリテン軍に敗退したそうです!」
顔に傷を負った男がリョフの元に駆けつけ報告する。
「なら…全て…倒す…」
更に戦いを続けようとするリョフがチョーリョーが止める。
「お待ち下さい!度重なる連戦で部下達の体力は限界に達しています!すぐ撤退を!」
「…わかった…撤退…する…
道…切り…開く…私に…続け…」
リョフはソウソウ軍の包囲を打ち破ると、そのまま何処へと逃走していった。
ソウソウとリョフの戦いはソウソウに軍配が上がり、ソウソウは無事部室を取り戻した。
ソウソウ陣営・テニス部~
テニス部に残っていた三つ編みの女生徒・チョウバクはソウソウの捕虜となった。
「チョウバク、私は君を友人だと思っていたのだが、何故私を裏切ったのか」
ソウソウの問いに神妙な面持ちでチョウバクが答える。
「心の隙に魔が差しました…
私はいかなる罰でも受けます!どうか他の部員をお許し下さい!」
「いかなる罰でも…か。その言葉に二言はないな」
「は、はい」
「では、着いてこい」
ソウソウについて奥の部屋に入ると、そこはベッドが一つ置かれた部屋だった。
「あの…ソウソウ。これは?」
ソウソウは部屋の鍵をかけるとチョウバクの前に歩み寄った。
「最近忙しくてご無沙汰でな。
チョウバク相手をしろ」
「ま、待ってソウソウ!
そんな女の子同士なんておかしいわ」
うろたえるチョウバクに、ソウソウはキョトンとした顔で答える。
「そうか?私は女子校の出身だからな、割りと普通にあったもんでな」
「私もその女子校にいましたけど、そんなの普通にはありません!」
「いかなる罰でも受けるんだろ。私は女の扱いには慣れている。任せろ!」
「待ってソウソウ!友達同士でこんな…んん…」
ソウソウは自らの口でチョウバクの口をふさぐと、そのままベッドに押し倒した。
「そうだな、君と私の付き合いも長い。そう考えると…
興奮するな!」
「ま、待って…んんっ…や…ソウソウ…」
ぐったりと横たわるチョウバクを、ソウソウは優しく撫でる。
「はぁ…はぁ…ソウソウ…」
「チョウバク、君は今日から私のメイドになれ。それが罰だ」
「はい…わかりました… 」