第14話 天誅!トータクの最期!
「では、これよりトータクとの最後の戦いを行う!突撃部隊は我がソウソウ軍、ソンケン軍改めソンサク軍、リュービ兄弟、そしてリョフだ。
チョウバク、コウソンサン、オーイン、生徒会室の守りは頼むぞ」
ソウソウの指揮の下、トータクとの最終決戦の準備が急ピッチで進められた。
「いよいよ決着をつける時ですね、兄さん!」
「腕が鳴るんだぜ!」
俺達三兄妹も突撃組だ。俺の義妹達、長い黒髪の少女・カンウ、お団子ヘアーの少女・チョーヒも準備万端といった様子だ。
「すみません、私も連れていって下さい!」
「ソウソウ、このチョーリョーという男は信用できる。連れていっても裏切りはしない」
「いいだろう。ついてこい!」
隻眼の男子生徒・カコウトンが男子部屋で拘束されていた青髪の男子生徒・チョーリョーを連れてきた。彼もこの戦いの結末を見届けたいのだろう。
「では、出陣!」
「オーッ!」
ソウソウの合図と共に一斉に閧の声が上がる。
俺達は中央校舎の更に西部、トータクが根城にしているという保健室に向かった。
「ここだな!
トータク!これで最後だ!大人しく投降せよ!」
ソウソウを先頭に保健室の戸を勢いよくあけると、そこにはトータク、そして…
「クックック フハハハ ワーッハッハッハ
待っていたぞソウソウ!」
「なんだこの犬!」
トータクの前には無数の犬…犬と呼んでいいのか、愛玩とは真逆の、獰猛を絵に描いたような、凶悪な面構えの犬だ。
「我輩の家はペットショップでね…
こんなこともあろうかと、とびきりデカくてとびきり狂暴なのをあるだけかき集めておいたのさ!
いかにお前らが強かろうとこの狂犬共に勝てるかな?噛まれたら怪我じゃすまないぞ!」
トータクの犬達は、牙をギラつかせ、ヨダレを垂らしながら、命令を待っている。
「行け!お前達!奴らを噛み殺せ!」
トータクの合図に従い、一斉に襲ってくる犬達!
「クッ!撤退だ!お前らとにかく逃げろ!」
人に押される形で一斉に保健室から飛び出し逃げる俺達。
「兄さん!こちらに早く!」
「アニキ!」
「カンウ・チョーヒ!俺に構わず逃げろ!」
はぁ…はぁ…味方にもみくちゃにされながらも、俺はなんとか犬から逃げきった。
しかし、カンウ・チョーヒとはぐれてしまった。ソウソウも無事だろうか。
助けたくても俺には力がない。カンウ・チョーヒの様に強くもないし、ソウソウのように頭もキレない。他にあるものと言えば…
その時、俺はズボンのポケットから微かな重みを感じた…
「うぅ…クッ…!」
保健室、ソウソウとトータク、そして数匹の犬のみが残っていた。犬達はソウソウを取り巻き、逃がさないようにしながらも、まだ、襲いかかりはしなかった。
「ソウソウ、他の仲間は逃げ散ったようだな!」
「トータク…!」
ソウソウは片膝をつきながらトータクを睨み付ける。
「いいね、その目、ゾクゾクするぞ。
お前のそのイヤらしい体、露出の激しい服装、どれをとっても我がイチモツのご馳走だ…」
トータクは舐めるようにソウソウの体を見回した。
「ソウソウ、お前に最後のチャンスをやろう。ソウソウ、我輩の女になれ!抱いてやるぞ!」
「断る!このソウソウ、男を抱く趣味はあっても、男に抱かれる趣味は無い!」
「ギィィ!ならば抱かれるだけの姿にしてやろう!
我が愛犬達よ!手足の一二本喰い千切っても穴さえ残れば構わん!
かかれぇぇ!!!」
「クッ…!ここまでか!」
ソウソウは目を瞑り、数秒…何も起こらない。
ソウソウは薄目を開け、周りを見ると犬達は大人しくその場にお座りしていた。
そしてその目の前には一人の男が…
「どうした?何故襲わない!襲え!襲え!襲え!」
「大丈夫か、ソウソウ!」
「リュービ!」
ふぅ…なんとか間に合ったようだ。ソウソウも少し服が破け怪我をしているみたいだが、無事のようだ。
「それは…我輩が配下共に渡した犬笛!
何故お前がそんなものを持っている!」
「無粋を憎む武人から貰ったのさ」
チョーリョーが渡してくれた笛は犬笛だった。おそらく彼もこの事態を予想していたのだろう。
「トータク…お前…負け…他の…犬も…私と…チョーリョーで…大人…しく…させ…た…」
犬を従えたリョフ達も部屋に入ってくる。
元トータク陣営の彼女達からしたら、狂暴な犬もペットでしかない。おかげでカンウ・チョーヒも無事だ。
「何故だ!何故だ!何故だ!どいつもこいつも裏切りおって!」
「貴方は餌をやるだけやって、キチンと御自身で面倒をみられないから、なつかないし、慕わないのです」
青髪の男子生徒・チョーリョーも部屋に入ってくる。もはやトータクの味方はこの部屋にはいなかった。
「う…うぅぅ…わーーーーーー!!!」
学校中に響くようなトータクの絶叫。
「生き物が役に立たんのなら、道具に頼るまでだ…このナイフでせめてソウソウ!お前だけでも死ねー!」
「見苦…しい…」
トータクはナイフを手にソウソウに襲いかかろうとするも、リョフの敵ではなく、その一撃であっさり気を失った。
こうしてトータクの乱は幕を閉じたのであった。
トータク、リジュ、カユウ、ジョエイは西涼高校に強制送還されることになった。
しかし、リカク・カクシはあの騒動の後、行方知れずになってしまった。
それとトータクは西涼でも色々やらかしていたようで、退学になるという話である。
「我輩の出番がこれで終わりなんて認められん!
こうなったら伝説を残してやる。体を張った一発芸、秘技人間ロウソク!」
「あ~トータク様!立派です~」
「トータク様、挿し絵なんかないから、その下品な一発芸伝わらないわよ」
「なぜだー!」
リョフ、チョーリョーはこちらの学園に転入することが決まった。
リョフは、自らが傷つけたソンケンの見舞いにいった。
「ごめん…腕…」
「まあ、そう気にするな。逆の立場だったら俺もやってたかも知れない。それに治療費はエンジュツのお嬢がもってくれるしのぉ!」
生徒会長は再び空席となった。また改めて生徒会長選挙を行うそうだ。
それまではオーインが生徒会長代理を務めることになった。
トータクの手から取り戻した生徒会室のドアを勢いよく開けたのは薄紫の長い髪の少女・エンショウ。
「ソウソウ!この学生寮建設費ってどういうことですの!なんで私が払うことになってるんですの!」
「エンショウ、ソウソウならここにはいませんよ」
「全くどこ行ったのかしら!なんでどこにもいないのよ!」
まあ、そんなわけで、生徒会長選挙が控えてるけど、一応学園に平和が戻った。
桜も散り、春が終わろうとしている。あの長いようで短かったトータク戦も終わった。俺は校庭の隅のベンチで、ガラにもなく一人物思いにふける。
「さて、カンウやチョーヒ待たせてるし、そろそろ戻るか」
「リュービ!」
立ち上がる俺を呼び止めたのは赤黒い髪に、同じ色の瞳をもつ少女・ソウソウ。この戦いが始まる前は彼女とこんな風に話ができるようになるとは思わなかったな。
「今回は協力助かったぞ」
「いやぁ、俺はそんな大したことしてないよ」
「いや、リュービ、お前のおかげで私も無事だった。だからお前に褒美をやろうと思ってな」
「そんな、受け取れないよ!」
「気にするな。手を出せ」
「…はい」
言われるままに手を差し出す俺。なんか俺、この娘に弱いな…
ソウソウが俺の手を掴んだ。
ソウソウの手、柔らかいな…なんか変に意識してしまう。これは女の子と手を繋いだことになるんだろうか。
ソウソウは掴んだ俺の手を自身に引き寄せた。
むにゅ!
ソウソウは俺の手を自身の胸に押し付けた。柔らかな感触が俺の手を伝ってくる。って、え?
「ん…」
「な、ソウソウ、何を…!」
「どうだ?私の胸の感触は?あのトータクも触れなかった極上の褒美だぞ」
いやいやいやいや、どうだと言われても!ソウソウの胸柔らかい…例えるならこの柔らかさは…ダメだ!何にも浮かばん!というか頭が働かない!
「だ、だめだよ、ソウソウ…こんなのは…」
「気に入らないか?私はこれでも校内美少女ランキングトップ10より下になったことがないんだぞ」
「いや、気に入らない…わけじゃ…ないです…」
そりゃ、気に入らないわけがない。
「正直でよろしい」
ソウソウが満足そうな顔でニコリと笑ってきた。
「はい、ここまで」
ソウソウは俺の手を胸から引き離した。
「続きがしたかったらもっとイイ男になって私の下に来い」
ソウソウが体を倒し、唇を俺の耳元に近づける。
「その時は最後までしてやる」
「そ、ソウソウ!」
「ははは、ではなリュービ、また会おう!」
ソウソウは疾風のように去っていった。
「ソウソウ、とんでもない女の子だなぁ…」
「アニキ、遅いぞ!」
「こんなところで何してるんですか?ずっと待ってたんですよ」
俺の行くのが遅れたから、長い黒髪の少女・カンウとお団子ヘアーの少女・チョーヒ、俺の二人の義妹が迎えにきたようだ。
「ごめん、カンウ・チョーヒ!」
「何でじっと右手見てたんだぜ?」
「兄さん、怪しいです…!」
「いや、これは…なんでもないよ、はは、さっ、帰ろう」
まあ、なにはともあれ
第二部 完