第10話 交戦!ジョエイとカユウ!
「危ない!ソウソウ!」
間一髪、ソウソウの顔面めがけて放たれた弾は、側にいたソウコウが盾となり防がれた。
「ソウコウ!大丈夫か!無茶をするな!」
「私は大丈夫!
ソウソウ、貴方はこれから生徒会長にだってなれる人よ。
せっかく売り物になる顔してるんだから傷つけてはいけないわ」
「お前の顔だって同じだ。傷つけば悲しむ者がいる」
「ふん、弾の一発でくだらない茶番ね。お前達!ソウソウ部隊に一斉射撃よ!」
ジョエイの合図で敵生徒達が一斉にこちらに銃口を向ける。
「クッ!我々で盾になるか!」
「カコウトンどけ。ここからは私の仕事だ」
「ソウソウ、何を…!」
ソウソウは立ち上がり、自分の部隊をかき分け、一人敵陣前に現れた。
「降伏かしら?でも貴方達は全員処分ともう決まっているのよ」
「ジョエイ、ここにいるのは、大半がこの学園の生徒達だったな…」
ソウソウは正面を見据えると、まっすぐに人差し指を突きだした。
「おい、そこの銃を構えている女!私はお前を知ってるぞ。風紀委員のウキン!
お前は文化委員のリテン!体育委員のシカン!ジンシュン!シンショウ!ソーシ!…
お前達と送った学校生活を私は忘れた事はない!
お前達はこの私の顔を忘れたのか!」
ソウソウの言葉に敵の引き金の指が弛む。
「おい、お前達怯むな!学園のためにソウソウを捕らえなさい!」
「お前に選択の機会を与える!
お前達はトータクの学校に通いたいのか!
それとも自分達の学校を作りたいのか!」
ウキンと呼ばれた眼鏡の女生徒が銃口をジョエイに向ける。
「ジョエイ、私は学校の平和のためソウソウにつきます」
「私もソウソウとこの学校を取り戻す!」
「俺もソウソウにつく!」
リテンと呼ばれた女生徒、シカンと呼ばれた男子生徒も、ウキンに倣い銃口をジョエイに向ける。
「俺もだ」「私も」「俺も」「私も」「僕も」「私も」…
ジョエイ軍は次々とソウソウに寝返り、標的をジョエイへと切り替えた。
「待て!銃口を人に向けるな!待て早まるな!おい…」
「勝負あったなジョエイ!」
観念したジョエイはソウソウの捕虜となった。
「すみませんソウソウさん。私達もソウソウ隊に加えて下さい」
黒髪ロングに眼鏡、切れ長の目といかにも風紀委員という感じの女生徒・ウキンが他の生徒を代表してソウソウ軍の参加を申し出た。
「許す!お前達は私と共に来い!」
「ウキン達も加わったし、負傷した者もいる。
軍の再編成を行いたいが、ソンケン隊の動向も気になるな。
まだ合流予定地には来ていないようだが」
「ソウソウ、俺達でソンケン隊の様子を見てこよう」
「リュービ、では頼むぞ」
様子見ぐらいなら三人でも充分可能だ。俺達三兄妹はソンケンのいる南口に向かった。
中央校舎南口~
話は少し巻き戻る。ソウソウ隊とほぼ同時にソンケン隊も南口のトータク軍と戦闘を開始していた。
「我こそはコシン!まどろっこしい攻め方は性にあわねー。ソンケン、俺と一騎討ちだ!」
金髪の不良生徒・コシンが先頭切ってソンケンに一騎討ちを挑む。
「大将が出るまでもない。空手部副将テイフが相手をしよう!」
受けて立つのは眼鏡の男子生徒・テイフ。
「なんだ優男じゃねーか!吠え面かかせてやるぜ!」
勝負は一撃で決まった。テイフの正拳突きを腹に受け、コシンはその場に倒れこんだ。
「つ、つえぇ…」
「ええいコシンの駄犬め!
アタイはトータク様親衛隊の華原勇花通称、カユウ!
次はアタイが相手してやるよ!」
黒い軍服に身を包んだ女生徒・カユウが長鞭を両手に持ち、ソンケン隊を睨み付けた。
「相手にとって不足無し!」
テイフはカユウに対し、戦闘体勢をとる。
「まあ待てテイフ。全部一人で相手しようとすな。奴がここの大将ならワシが行こう!」
テイフの肩を叩き、代わりにカユウの前に現れたのは赤スカーフの男・ソンケン。
「アンタがソンケンか!可愛がってやるよ!」
カユウの鞭の連打を前腕で防ぐソンケン。
「ただ鞭を叩きつけるだけとは芸がないのぉ」
「減らず口が!」
カユウは鞭をソンケンの右手首に巻き付け防御の構えを力ずくで崩させると、腰につけたもう一つの鞭でソンケンを攻撃した。
「ハーハッハッハ、さぁ、あんたも降参してアタイの犬になりな!」
「あいにく、ワシにその手の趣味はない!」
ソンケンは右手首を回し、巻き付いていた鞭を掴むとカユウから奪い取ろうと、そのまま強く引っ張った。
「クッ…この馬鹿力め!」
ソンケンに力負けしたカユウは右の鞭を手離し、すかさず左の鞭で叩きつけようとするも、ソンケンは奪った鞭ではたき落とし、カユウとの距離を詰めていった。
カユウはソンケンの拳をかわすと、左手を掲げて、ヒラヒラと動かした。
「大将!危ない!」
取り囲んだカユウの配下の一人が、鉄パイプを手にソンケンに殴りかかろうとしたのを、とっさにソモが盾となり防いだ。
鈍い音と共にソモはその場にうずくまり、脇腹を抑え、小さく呻き声をあげている。
「ソモ、大丈夫か!
カユウ!後ろから襲うたぁどういうことじゃ!
一騎討ちじゃなかったんか!」
「誰もそんなこと言ってないだろ。アタイの犬達よ!
数はこちらの方が上だ!取り囲んで叩き潰しておやり!」
カユウの配下は鉄パイプやら角材やらで武装し、ジリジリとソンケン隊との距離を詰めていく。
「兄者、囲まれちゃったよ」
少し心配そうにソンケンを伺う妹・ソンサク。
「サク、心配はいらん。お前はソモを見ていてくれ。
テイフ・コウガイ・カントウ!
左右と後ろの守りは頼む!」
ソンケン・テイフ・コウガイ・カントウで隊の四方の守りを堅め、攻撃に備える。
「ハーハッハッハ、さぁ、お前達、ソンケン隊を潰してやんな!」
「そこまでです!」
長い黒髪をなびかせて一人の少女が現れた。
「なんだいお嬢ちゃん?あんたもアタイの犬になりたいのかい?」
「卑怯な真似はお止めなさい!」
「生意気な小娘ね!アンタも調教してあげるわ!」
カユウは再び鞭を手に、長い黒髪の少女に向かって叩きつけた。
長い黒髪の少女・カンウは鞭の連打をかいくぐり、カユウの元まで走り寄ると、カユウが反応するより早く、彼女の体を掴み、投げ飛ばした。
「ま、参った…」
カユウはその場に伸びてしまった。
「敵将はリュービが義妹・カンウが倒しました!」
「カユウ様がやられたぞ!ヤバイ逃げろ!」
カユウ敗北にソンケン隊を囲んでいた連中は蜘蛛の子を散らすように逃げていった。
「おっと、お前さんは逃がさんぞ!」
コウガイは落ちていたカユウの鞭を、同じく逃げようとしたコシンの足に巻き付け、転倒させた。
「痛ってぇ…なにしやがる!」
「お前さん、後漢学園の生徒じゃな、じっくり話を聞かせてもらうぞ」
「勘弁してくれよ…」
「怪我はないか、カンウ」
「はい、兄さん。あの程度でしたら私の敵ではありません」
「さすがカン姉だぜ!」
さすがカンウだ。我が義妹ながら頼もしい。
さて、ソンケン達は大丈夫だろうか。
「大丈夫だった、ソンケン・ソンサク?」
リュービはソンケン・ソンサクの元に駆けつける。
「おう、助かったぞ、リュービ、それにカンウも。しかし、カユウを一撃とはお前の義妹は強いのぉ」
「ありがとね、リュービ」
「ソウソウ隊もジョエイ軍を破り、合流地点にいる。さぁ、ソンケン隊も合流しよう」