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悠々自適な転生冒険者ライフ ~実力がバレると面倒だから周りのみんなにはナイショです~  作者: こばやん2号
第十三章 G・T・H(A)[グレート・ティーチャー・ヒビーノ(秋雨)]
141/180

141話



「さて、一応だが釘は刺しておくとするか」



 ウルフェリアの寝室に忍び込んで夜這……もとい、彼女の魔法力を向上させるための処置を行った秋雨は、珍しく学園に休暇届を出して街へと繰り出していた。



 その目的は、彼女をいじめていた二人の生徒であり、これ以上いじめをさせないようにするための工作である。



 調べたところによると、二人の生徒は子爵家と伯爵家の次男と三男のようで、それなりの権力を持った家の出ということがわかった。



 しかし、腐っても貴族であるからして、家の権力を使えば多少の無理難題を押し通すことはできるため、ここらで大人しくさせておく必要があったのだ。



 そこで彼が使った手は、彼らの家と敵対関係にある派閥の貴族家を動かすというものであった。



 目には目を歯には歯をという言葉があるが、権力には権力をということであり、それが最も彼らには打撃を与えられると考えたからである。



 しかし、真正面から言っても「はいそうですか」と彼らが素直に動くことはないだろう。人間誰しも自分たちに利がなければ、面倒なことに首を突っ込むということはしないのである。であれば、動くように仕向ければいいのだ。具体的には、噂を流すことであった。



「もし、そこのお方」


「ああ? 俺か?」


「こんな噂を知りませぬかの?」



 秋雨は幻術で作ったローブを着た得体のしれない老人に姿を変え、いじめっ子の家に関する噂を流した。もちろん、大抵がデマであり、本当にそんなことをやっている確証はない。



 だが、庶民はそういった上の人間のスキャンダル話は大好物のようで、周囲にいた人間が瞬く間に噂を拡散させていった。



 SNSなどが存在しない世界で、噂や情報は人伝に伝わっていく。そういった伝達手段は、人を介することで噂の正確性が失われ、どんどん話が飛躍していくのだ。



 最終的に敵対派閥の貴族の耳に入る頃には“いじめっ子の家が敵対派閥の貴族を牽制する名目であれこれとよからぬ動きをしている”というところまで話が大きくなり、それを受けて事実確認のため情報収集に動くことになる。結果として敵対派閥の貴族を動かすことに成功したのである。



 そして、その動きはいじめっ子の家にも当然伝わり、状況的にお互いを牽制する動きとなり、その余波を受けていじめっ子たちにも「余計な行動は慎め」というお達しがあり、獣人をいじめるという敵対派閥の貴族にとってはこれ以上ないスキャンダルとなる行動も制限されることとなり、必然的にウルフェリアのいじめが一時的になくなったのである。



「よし、これで試験までの間の時間稼ぎはできただろう」



 目的が達成された秋雨は、すぐにその場から消えるようにいなくなった。



 数週間後、今回の噂の出所がローブを被った怪しげな老人だということを嗅ぎつけた貴族たちであったが、その老人が見つかることは終ぞなかったのである。









「んっ、んん……」



 秋雨が街へと繰り出す日の早朝、ウルフェリアの意識が覚醒する。



 しばらく微睡んだあと、むくりと起き上がった彼女は、ベッドから降りて柔軟体操をする。



 少々小ぶりの引き締まった臀部から腰の括れにかけてのラインはとても美しく、鍛え抜かれた肉体美と女性としての妖艶さの二つを兼ね備えていた。よく性的な創作物などで“セ〇クスをするために生まれてきた存在”という表現があるが、彼女の肉体こそその表現に相応しい。



 一通り体を解し終わったウルフェリアだったが、ここで室内に違和感を覚える。それは獣人特有の野性的な勘なのか、それとも女としての勘なのかはわからない。



 そして、その違和感の正体が机の上に置かれた置き手紙であることに気づく。



「これは……」



 そこには、魔力鍛錬についての詳細な方法が記載されており、今の自分に足りないのは魔力を制御することであるということも詳細に書かれていた。



「すんすんすんすん……匂いがしない」



 獣人族の癖なのか、置き手紙を鼻に近づけ匂いを嗅いでみる。だが、そこから読み取れるのは紙特有の匂いのみであり、それ以外は何も感じられない。



 ここにきて秋雨の勘が冴えわたり、彼が部屋をあとにする前に匂いを消していたことが幸いし、ウルフェリアに匂いを覚えられることはなかった。ファインプレーである。



「まあ、やってみるか」



 そもそも、彼女が魔法学園に入学したのは、獣人にしては多い魔力量であったためであるが、それだけで名門と言われているダルタニアンに入れるほど甘くはない。



 ダルタニアンの一般入試試験もまた編入試験と同じく筆記と実技なのだが、両分野においてウルフェリアはしっかりと合格ラインを超える点数を獲得している。つまりは、ダルタニアンに入学できるほどの優秀さを持っているのだ。



 その優秀さが仇となって、いじめのターゲットとして目を付けられる結果になってしまったのは、皮肉としか言いようがない。



 しかしながら、種族が獣人だということで、人族の一般生徒よりも魔法が不得手であることは事実であり、そのために入学してからも人一倍努力を積み重ねてきた。



 ウルフェリアも、授業以外でなにか修練方法がないかと探していたところであったため、置き手紙に書かれていた内容は、まさに彼女が求めていた情報でもあった。



「へその下あたりに意識を向け、そこに魔力が集まるよう頭で想像するか。……ん、お腹が熱くなってきたな。これが魔力というやつか」



 秋雨がまずウルフェリアにやらせようと考えた魔力の鍛錬法は、彼が当初この世界にやってきたときに行っていたもので、へその下あたりにある丹田という場所に魔力を集め、それを自在に操るというものだ。



 己の体内にある魔力を感じることで、より魔法についての理解度と熟練度が上がっていき、魔力自体を制御することも可能になってくる。



「なんだか、今日は魔力の巡りがいい気がするぞ」



 ウルフェリアは、魔力の巡りが良くなっていることに気づいたが、どういった理由でそうなったのかまでは答えに辿り着けなかった。



 それは当たり前のことで、夜中寝ている間、誰かが自分の体をマッサージしているなど夢にも思わないだろう。もし、そんな突拍子もない答えに辿り着いたのなら、それはもはやエスパーの領域だろう。



 しばらく、鍛錬を続けていくと倦怠感を覚え始める。魔力が枯渇しかかっている兆しである。それと同時に何やら妙な感覚が彼女を襲った。



「な、なんだこれは? はあ、はあ、あっ、手が勝手に」



 それは秋雨が施したマッサージの副作用的なものであり、彼自身も予想だにしていないことであった。



 これは、まだこの世界においてつまびらかにされていないことではあるが、他人の魔力を体内に流された人間は、その相手の持っている性質の影響を受けやすいという現象が存在する。



 例えば、消極的な人間が積極的になったり、戦いが好きでない者が好戦的になったりということだ。



 つまりは、性的なものに過剰なまでの好奇心を持った秋雨の魔力を受けてしまったウルフェリアがどうなるのかは想像に難くないだろう。



「あっ、んっ、きもちっ、気持ちいいっ」



 それから、早朝だが夜のマッサージをしてしまったウルフェリアが、最初の授業が始まるぎりぎりの時間にやってくるという珍しい姿を目にする生徒たちであったが、心なしかいつもよりも肌艶が良く色気が漂っていた。いつもと違う彼女を怪訝に感じながらも、その理由が朝方に一人プレイでハッスルしていたということまでに思い至るには、生徒たちは若すぎたのである。



 なにやら、とんでもないものを目覚めさせてしまった気がしなくもないが、それを今の秋雨が知る由もない。



 こうして、ウルフェリアの二つの意味での開発が始まったのであった。

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― 新着の感想 ―
[気になる点] 無理にHシーンを入れなくても話を進められるのでないですか?このままだと、「なろう」から再び警告が来て、書き直し!いっそのこと「ノクターン」へ移動した方がよいのではないでしょうか?
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