ソウゾ国原則法
ソウゾ国原則法八条
第一条 国王は国の象徴であり定められた規則は絶対に守るものとする
第二条 1年に6回(2か月に1度)王都に各町村の特産物または農作物を定められた量を輸出することただし、各町村同士の物資の輸入輸出貿易については地区町村戸籍調査の際に貿易大臣への報告の後に、行うものとする
第三条 各町村、もしくは個人での武器の製造、所持を禁ず
第四条 犯罪行為は国王、もしくは国政大臣、王政が処罰することとする
第五条 王都に滞在するものは必ず職に就くこと ただし、満65歳までとする
第六条 正当な理由なく各町村の住民が定められた領域からの外出行為を禁ず ただし、特産物輸入の場合、もしくは各地区町村での貿易の場合は例外とする ただし、外出行為は許可のいるものとする そして、貿易の際も許可証が必要となる。
第七条 王都や王に対する批判や誹謗中傷等の言動を禁ず なお、意見がある場合玉座での話し合いとなる
第八条 1年に1度、必ず地区町村戸籍を国政大臣に提出すること
法に反した場合、第4条に倣い(なら)、王、もしくはソウゾ国国政大臣、王政が処罰することとする
これがオレ『シェン』が住むソウゾ国での絶対に守らなくてはいけない法律だった。
オレはこの法律・・・いや、国に対して強い不満を持っていた。
どう考えても、ただ農村民を自分たちの土地に縛り付け、王都だけが栄えるようにできているからだ。
オレの住んでいる村は王都からそれほど距離のない木々に囲まれた場所に位置するところであった。
その村は、土地の6割を畑で埋め尽くし、家は六軒しか建っていない小さな村である。
村の出入り口は二個ある。一つは王都に繋がる道があるものと、もうひとつは他の村に繋がる道がるものだ。
そして、その出入り口には王都から派遣されたとされる兵士が一人立っていた。
その兵士の身なりは全身を鉄と思われる縦長の鎧を着用し、頭には外を見るためだけに開けられたような横長の穴がある兜をかぶっていた。手には槍をもって、武力による制圧は不可能のようにみえた。
オレは兵士に話しかけようとしたことがあったが何も答えなかった。
ただ、村から村民が抜け出さないようにする見張り番のようなものなのだろう。
徹底的に村民を外に出さないつもりなのだろう・・・
オレはそれに関してでも強い怒りを感じていた。
オレはそんな村に住む男だった。
身長は170ほどあり、日々畑仕事で手にマメをつくりながら生活していた。
この生活に不満はあるが、別に畑仕事がイヤというわけではない。ただ王都だけが栄えてその他の村だけが衰退していく今の現状が許せないだけなのだ。
だが、身分というのはどこの国ににも存在している。この国では王都にいる者のほうが身分の高い者なので、そこを了承しないといけないのだ。
なのであやふやな気持ちのまま日々を過ごしていた。
※
「おーい、シェン!」
ある日、オレはいつものように畑仕事をしていた。
そこに村に住み始めてから仲が良くなった『モア』がやってきた。
モアはオレと年がほとんど変わらない村の唯一の存在だ。男同士、固い友情で結ばれている。
「おー」
オレも持っていたくわを置いて手を振りながら答えた。
モアは畑の中に入り、置いてあったくわを手にした。
村の各世帯は家族みたいなものなので特に勝手に家に入ったり畑に侵入したりしても、例外を除いて文句などを言われることはない。
「俺も手伝うぞ」
「あぁ、ありがとう」
笑いながらそんな会話を交わし、畑仕事を再開した。
そして、小一時間が経過し、珍しく村に来客がやってきた。
「シェン、隠れろ!」
家の中で休んでいた父さんが顔を出し、静かにオレに言った。
オレは家の裏にある森の方へ走っていき、用意のしてある穴に隠れる。
来客とは、出入り口にいる兵士と同じ身なりの兵士である。手には出入り口の兵士ほどではないが十分殺傷能力のある槍を持っていた。兵士、仮に『A』とでもしておこう。Aは村に入るな否や、村の中を鑑賞するかのようにしながら村長の家へ入って行った。
この村には出入り口の兵士意外にも月に1度、Aがやってくる。
地区町村戸籍検査を行うためだ。
これはソウゾ国が決めた法で、第八条にある通り、月に一度地区町村戸籍を国政大臣、つまり王政に提出
するというものだ。
地区町村戸籍というのは、各地区町村での農作物の収量や人口が記されている書類のことだ。
王政に提出することで王政が国民の人口や各地区町村が輸出する農作物を把握するのに使用するのだ。
だが、年に一度戸籍を出すだけでは国民を信用できないのかは知らないがこのように月に一度、兵士がやってきて、各地区町村の状況を検査するのだ。
例えば・・・子どもが生まれたり、急な悪天候で不作になってしまったりなど年に一度だと報告が遅くなってしまうものだ。
しかし、現実は調査だけで済むようなやさしいものではないのだ。
※
村長の家にやってきたAはすでに用意されていた椅子に腰を据え、机に足を置くようにしてすわった。そして頭の兜をはずし、素顔を見せた。平均的な成人男性の顔だった。
その後、村長が兵士の目の前に現れ、手には酒を持っていた。
「いらっしゃいませ、お待ちしておりました」
「おう、今月も来たぜ」
兵士がグラスを持ち、それに村長が注いだ。
その時の村長の顔は無機質な笑顔であった。
ご精読ありがとうございます。
悪人リメイクの第一話「ソウゾ国原則法」でした。
解説が多くなってしまいましたが、全部重要なことなので覚えて頂けると幸いです。
次回は話を進められると思います。
次回 悪人リメイク 第二話「守るために」
※諸事情により次回タイトル変更の可能性がありますのでご了承ください。