第一部第一話 英雄の国バトワー 二
アリエスが剣を取り出して構えると、近くから似たような魔物が飛んできた。
──仲間か。
そう察したアリエスは、次々に現れる魔物をしばらく見つめ、何十匹も集まった魔物を、いとも簡単に片付けた。
そのうち一匹の亡骸を拾い上げ、いろいろ観察してみた。
体調は十センチあるかないかの小柄。ふわふわの毛に覆われており、たくさんあれば何かに使えそうな綺麗な毛をしていた。
耳や鼻はなく、かわいらしい小さな目と口があるのみ。いわゆる、ペット系の魔物か。
アリエスは何十匹もの魔物の毛皮を貰い、袋に入れた。あっというまに袋は満杯になった。
「……さて」
魔物の駆除も済ませ、アリエスは城下町であるサウザーへと歩き出した。
*
城下町、サウザー。世界でも有名国バトワーの城下町とだけあって、貿易も盛んで、人口もなかなかのもの。エリックはここで数年間過ごしたという。
アリエスも幼い頃、サウザーの大広場で、アリエスの祖父に剣術を教えてもらっていた。
今、この町には物凄く老齢の、エリックを知る者がいるという。どうやら人間の言葉を話す魔物のようだ。
アリエスは何より先に、その魔物が住んでいるという少し町から離れた小屋へと行った。
扉を開けると、体長一メートルほどの小柄な老人……いや、魔物が寝ていた。
「あのー……」
「!な、な、何じゃ!?」
突然声を掛けられたので、老人のような魔物に飛び起きて、今にも死にそうな顔をしていた。
「あの、すみません。エリックって人について、何か知りませんか?」
「エリックか。懐かしいのう……。いいじゃろう。若いの、こっちにおいで」
アリエスはそばにあった椅子に腰かけると、老人のような魔物は話しだした。