異空間と日常 どうして……さっきまでは普通に話せたのに
桜柳絵美里と坂本東也の二人が帰るまで、表情豊かなどこにでもいるような生徒がいる高校のクラスルームがあった。しかし、今はその面影などどこにもない。35人学級の教室に残された四万十川を除く32名は血の通っている人間とは思えないような面持ちで四万十川春見を見ている。
「あなたたちが集まった理由は未来を守るためということは理解していますのよね。」
すると32人の生徒は一斉に立ち上がり、
「はい、我々は生産性のある未来の実現に向け、その崩壊を阻止すべく、桜柳絵美里様にストレスない学校生活を送らせるため、四万十川春見リーダの元、桜柳絵美里が理想とする世界を再現することです」
33人は寸分の狂いもなく無機質な声で言った。
「はい。その通りですの。あなたたち33人はこの学校の中でも、クラスメートという非常に身近な存在。この高校の485人の中でも最も重要なポジションに位置しているんですわ。」
四万十川は一呼吸を置いて、
「つまり、この高校にいる485人の未来人のうち特に優秀な皆さんに集まっていただきました。これから大変なこともありますけど皆さん、生産性のある未来のため私とともに頑張っていきましょう」
「はい。リーダ、四万十川春見様」
「それじゃあ全員解散」
四万十川春見がそういい放った瞬間、一斉に教室を後にした。
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今、私はトウヤ君の隣に座っている。
ディーゼルエンジンの騒音のおかげでトウヤ君と話すには少し大きな声で話さなければならない。どうしてだろう、教室の中では周りのことなんて一つも気にせずトウヤ君に話しかけるのに二人きりになった途端に何を話したらいいのかわからなくなってしまう。
人がまばらな車内には、エンジン音とレールのつなぎ目を通過する音のみが響いている。
「なあ、絵美里」
「えっ、あっ、どっ、どうしたの?」
思わず動揺してしまった。なんでだろう。さっきまでは普通に話せたのに。
「さっきまでの元気はどこに行ったんだよ」
「別に。私は私のままよ」
違う、私はそういいたいんじゃない。どうして思った通りにできないのかしら。
「そう」
トウヤ君は返事をしたまましばらく黙っていた。
暗い気分になりかけたその時、
「明日は一緒に学食に行こう」
「えっ、いいの?」
「今日は、その……まあ、明日学食行こう!」
「うん!」
舌っ足らずなトウヤ君。私はいつの間にかこんなトウヤ君を好きになっていたんだわ。いつから好きになっていたんだろう。まあそんなことはどうでもいいわ。私はトウヤ君と同じ高校に通い、一緒に登下校をできるようになった。これ以上の幸せなんてこの世には存在しないかも。でも、これ以上の幸せって何なんだろうな。
これからも、主人公とトウヤ君とのドキドキで不思議な学校生活が続きます!