絵美里さんのドキドキ列車通学!?
「トウヤ君、あーん」
トウヤ君のほうは赤く染まっていた。この程度でこんなになってしまうなんてやっぱりトウヤ君はかわいいな。
「ちょっと、ちょっと、待ってくださいよ。さすがにあーんはないですよ」
四万十川は鬼の形相で言った。
「私がしたいからやっているの。何か文句でもあるわけ?」
「大ありですわ。これは私の弁当ですの。人の弁当であーんをするなんて聞いたことがないわ」
「そんなの全く関係ないわ」
「まあまあ二人とも落ち着いて…」
慌てふためくトウヤ君。でもここで私は譲るわけにはいかないわ。
「トウヤ君。私に食べさせてもらうの嫌じゃないわよね」
「いや、あの、そのだな。まあ、四万十川さんも目の前でこういうことさていい感じはしないだろう。それに、入学初日からあーんしてもらうのは状況的にもあまりよろしくないと思うんだ。ただでさえ同じ箸を使って食事をしているわけだし」
「……わっ、わかったわよ」
「じゃあとうやさん、私の弁当を食べましょう。はい、あーん」
四万十川は私の「あーん」を阻止して自分だけそれを楽しもうとしていた。どういう頭の思考回路を持ち合わせていたらこんなことができるのかしら。
「ちょっとちょっと待ちなさいよ!さすがにそれはないわ」
「私の弁当をどうしようと勝手でしょう」
「あんた、自己中にもほどがあるわ!!」
「わかったわかった、二人とも落ち着いて。もうどっちもすきなようにすればいいから」
「トウヤ君、私だけを見ていればいいのよ」
どうして四万十川の肩なんて持つのかしら。考えられないわ。
「トウヤ君、私のほうが魅力的ですよね」
「まあなんだ、ここでは答えないことにしてもいいかな」
「「なんですって」」
噴き出された感情を抑えきれずに思わず言ってしまったのだが運が悪いことに四万十川とハモってしまった。どうしてこんなことになってしまったのかしら。でも、トウヤ君とここまで近い距離で食事をできて私はまあ満足だわ。あとは帰りにトウヤ君と一緒に帰るのみね!
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昼休みの後にはショートホームルームがあったが、短い話で終わったのであまり退屈はしなかった。それもそのはず!トウヤ君がいる空間にいられるんだから。
ショートホームルーム終了のチャイムが鳴り、真っ先にトウヤ君のところに飛びついた。
「トウヤ君、一緒に帰ろう。拒否権はないわ」
「そうだろうとおもったよ。まあ、話もあるし一緒に帰ろうか」
「やったぁ。うれしい。一緒に帰りましょう。」
「ああ」
ついにかなったこの瞬間。トウヤ君とこの桜並木で肩を並べて下校するという夢をかなえることができた。トウヤ君なら私のゆうことを何でも聞いてくれるんだから。
「トウヤ君、話って、何?」
「いや、なんだその、僕はね君のことは全く嫌いではないんだよ」
トウヤ君は頬を赤らめながら言っている。
「そんなことはわかってるよ。嫌いだなんて言わせないわ」
「ただねえ、あくまでも友達として、友達としてにしてくれないかい。まあもはやどうでもいい気がしてきたが」
「私は、トウヤ君が望む形でいいわ。でも欲を言えばその、恋人の形のほうが望ましいんだけど」
トウヤ君ってこういうところが優柔不断でかわいいんだけどさすがにここまでくるとヘタレに見えてくるわ。でも、私のトウヤ君への気持ちは変わらない。
「恋人って言っても、その、恋人っていうのがどういうものかわからないんだ」
「そう」
さすがはトウヤ君、純粋な心をもってとってもかわいいわ。
トウヤ君とともに学校からの坂道を下り、ローカル線のプラットホームに到着した。1時間に1本しかない不便な路線であったにもかかわらず列車は3分足らずで到着した。今日は何から何まで運がいいわ。
電車に乗るとボックスシートのわきの2人掛けの席にトウヤ君と隣り合わせで座った。こんなにトウヤ君と近づいたのは初めてだなあ。体がほてってるのがトウヤ君にばれてしまったらどうしよう。あ、でも問題ないわ。トウヤ君のことが大好きなんだから。
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足早に教室を後にした2人であったが。彼女らのクラスのほとんどの生徒はしばらく教室に残っていたのであった。
ショートホームルームが終了した直後は、がやがやと騒がしい一般的な高校の放課後の雰囲気を醸し出していたのだが、坂本東也と桜柳絵美里が教室を後にし、しばらくすると教室内が静まり返った。
するとおもむろに四万十川春見は教壇の上に上った。
「みんな、協力してくれてありがとう……」
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