勝負は最初の自己紹介!
なんやかんやで入学式は無事に終わり教室へと移動する。
教室を見渡すとやはり中学からの友人はいなかった。
いなかった。
一人を除いて!
トウヤ君同じクラスになれた!!!
それ以上の喜びはもうないわ。トウヤ君と同じクラスになれるだなんて。うれしい!
「トウヤ君、同じクラスになれたね!」
「ああ。そうだねえ。……余計なことはしないでね」
「私にとってトウヤ君に対してすることに余計なことなんてないわ」
「やめれ、やめれ、やめてくれ。俺は高校でも友達を作りたいんだ。なあ。この気持ちわかるだろう」
「もちろん!トウヤさんの気持ちでわからない気持ちなんて一つもないわ」
「絶対わかってねえだろ」
と、トウヤ君との会話を楽しんでいるのもつかの間。担任が教室に入りホームルームが始まった。
「では、自己紹介をしましょう」
担任がそういい放つと出席番号順に自己紹介が始まった。この高校は男女別の名簿となっているため女子の出席番号は後半。だから私の順番は真ん中あたりってとこね。
そういえば、入学式の時にステージ上で話していた「四万十川春見」も同じクラスになったっていた。しかも後ろの席だ。
「鷺谷中学校出身、坂本東也です。趣味はレコードを聴くことです。よろしくお願いします」
無難な自己紹介でトウヤ君らしいわ。かわいいな。
トウヤ君が話しているこの時間がずっと続けばいいのに。
トウヤ君との高校生活の妄想を膨らませているとついに私の順番が回ってきた。やはりここはこうするしかない。
「鷺谷中出身!桜柳絵美里!わたしは……」
クラスの視線が私に張り付く。
もう言うしかない。
「わたしは…トウヤさんのことが……好き……です!」
予想通り。クラスが凍り付いた。
まあそれもそれでスタートとして悪くないわ。私にはトウヤさん以外必要ないんだから。
「おい、絵美里、てめえなんてことしやがる。」
「トウヤ君、このクラスにはトウヤって名前の人2人いたけどもちろん坂本君のことだよ」
トウヤって名前の人がいたので、勘違いして言ってるんだわ。かわいいな。
「お前さ、お前さ、まあもういいよ。うん。あとで話そうか」
トウヤ君と二人っきりで話せるなんて。さすがはトウヤ君。クラス内でのひそひそ話がまた次第に大きくなっているような気がするがそれがトウヤ君のせいだということを本人は全く気付いていないようで。
「あ、私の自己紹介は以上です。よろしくお願いします。」
そういった瞬間、後ろに座っていた四万十川さんが勢い良く立ち上がった。
「私っ、私は、星見ヶ丘中学校出身、四万十川春見。」
入学式に出席していた私たちの中で彼女を知らない人はいない。
クラスの注目が彼女に集まる。
「私は、このクラスで誰よりも早く彼氏を作ります!これは絶対負けられません。私は常に一番を目指します」
またひそひそ話が始まる。
いや、そんなの関係ない!私を差し置いて誰よりも早く彼氏を作りますって。許せない。私は誰よりも早くトウヤ君と恋人の関係になるんだから。こんな女に負けてられないわ。
「無理ね」
私は四万十川に向かってそういった
「あなた。どこからそんな自信がわいてくるんですの? 入学式の誓いの言葉は入試でトップの成績をとった人がやるもの。つまり私は成績がいい。容姿だってあなたよりも勝っていると思うわ。つまり、あなたに勝ち目なんてどこにも存在しない」
「あなたとは良いライバルになれそうね」
この女には絶対に負けられない。
私たちの戦いが始まったのであった。
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