この高校でトウヤくんと青春を謳歌するのみ!えっ、いきなりライバル登場?
クラウンフィールド・ソベルバレンタインです。
前作とは作風がガラッと変わりましたが楽しんでいただけますと幸いです。
私の名前は「桜柳絵美里」。この春から高校生。「大内西高校」、通称西校に通う。第三セクターのローカル線の駅から10分ほど山を登るとやっと見えてくる校舎。道中には桜の木が植えてあり、桜の花びらがひらひらと舞っている。私はその桜並木にあこがれてこの高校へ入学した。
と、表向きではそうしているのであるが本来の目的は中学のころから好きだった「坂本東也」君がこの高校に通うということだったので、この高校に入学した。
「条件はすべてそろった。この高校でトウヤくんと青春を謳歌するのみ!」
無意識にこのようなことを公衆の面前で口走ってしまっている人がいた。それはほかでもなく私自身のことだったのであるが。
「おーーーーーいーーーーー。てめえ、絵美里また何てことしてやがる」
「と、トウヤ君!?なんでこんなところに」
「こんなところもクソもあるかよ。朝のラッシュ時だっていうのに1時間に1本しかないローカル線の電車、いや、『列車』を使って登校せざるを得ない俺ら遠距離通学者はこの時間に登校するしかないことくらいわかるだろ」
言われてみればそうであった。私が通っていた中学の学区からここへ行くためにはこの列車を使う以外に手段はない。思いもよらぬ幸運!毎日トウヤ君と同じ列車に乗って学校に通うことができるんだわ。
気分よくこの桜並木の山道を登る私。これからの高校生活はもう「楽しみ」以外の言葉はなく充実したものになるに違いない。そう思ったのであった。
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無駄に広い体育館で2時間ばかりの入学式を迎える。
本数の少ないローカル線でないと通うことができないこの高校に私と同じ中学の人はほとんどいなかった。それでも私はちっとも寂しいとは思わなかった。それはもちろん、トウヤ君がいるから。友達が少なくなってしまったというのはもはや私にとってデメリットではなくメリット。私の中学のことを知っている人が少ないから。
なんだか全部私の思い通りになっているなあ。私の高校生活のスタートもそんなに、いいえ、全く悪くないわ!
なんてことを考えていると入学式も半ばに。どういう過程で選ばれたのかよくわからないが、体育館のステージに上り「誓いの言葉」なるものを読み上げている女子生徒が緊張を押し殺したような声で話している。いやあ大変だなあ。あれってどういう仕組みで選ばれるんだろう。やっぱり成績上位だった人が選ばれるのかなあ。
「桜の花びらがひらひらと舞っている今日この頃。」
ありきたりな挨拶だ。
「私たち485名は大内西高等学校に入学することができました。」
485名ねえ。多くもないし少なくもないって感じね。あれ、でもこの高校の定員は490名だったはずじゃなかったっけ。まあ、5人くらい入学を辞退する人がいてもおかしくないわ。
「本日はこのような立派な入学式を挙式していただき、誠にありがとうございました。」
なんだろうこの眠気を誘うような定型文的なあいさつ。私には絶対こんな地味な挨拶なんてしないわ。
「私はこの大内西高等学校で成し遂げたいことがあります。それは、」
うとうとしていると壇上に上がっている女子生徒は急に話すのをやめた。緊張をしているのであろうか。
「それは、すべてにおいて1番を目指すことです。それは学問だけに限りません。恋愛においても一番を狙います!」
凛々しい声で言い放った彼女。彼女の自信満々な笑顔とは裏腹に体育館全体が凍り付いた。
ステージのほうを見て固まる教師陣。しばらくすると、ざわざわと生徒の間で騒めき声が聞こえてきた。そのステージ上の女子生徒と同じ中学であっただろう生徒とそうでない生徒が良くわかる。
ばかねえ。私はそう思った。しかし、そう思ったのであるが、自分でも同じようなことをするかもしれないとも思ってしまった。
でもバカなのは違いないわ。
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