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幸せ猫が通ります~キャット驚くOnline~  作者: 岡の夢
4章 ツヴァートと闘技大会
99/121

#90 現実世界その3

不快な表現があります。ですが、色々とようやくです。

よろしくお願いします!

 GW明け。

 裕南は欠伸をしながら、学校を目指していた。


「ふわぁ~……ねむ」


 そこに潤達がやってくる。


「おはよう」

「おっす」

「おはようございます!」

「おはよ」


 いつも通りの4人。

 闘技大会の話になり、王子ナナキの事を聞かれたが誤魔化すように苦笑いする裕南に、綾が目をキラキラさせて詰め寄る。


「私も先輩にお姫様抱っこしてほしいです!」

「無茶言うな」

「何でですか!?」

「こっちだとする理由がないし、ナナキだと物理的に出来ないだろ?」

「むぅ!」

 

 綾が頬を膨らませる。

 裕南と潤は苦笑し、尚は呆れたように綾を見る。

 学校に近づくと徐に尚が真剣な顔で、裕南に声を掛ける。


「裕南」

「ん?」

「高棚に注意しておけ」

「……あの噂?」


 裕南の言葉に頷く尚。

 尚の話によると、高棚は中学の話と不良との目撃情報がかなり広がり、それによってかなりイラついていた様子で他校の生徒をリンチしたらしい。「らしい」というのは被害者が未だ意識不明で、監視カメラにも映っていなかったからだ。しかもリンチした場所と被害者が保護された場所が違う可能性も高いとの事。高棚ではないかと疑われているのは、高棚が友人に自慢していたからだ。その時、一緒にいた者の誰かが他の友人や教師に話したらしく、学校も本格的に調査に乗り出した。

 そうなると最も高棚が標的にする可能性があるのが、裕南である。


「やらかしたねぇ。……中学の話って尚達でしょ?」

「……そうだ。……すまん」

「今の所、謝るのは僕じゃないよ。僕だって問題あったんだし。僕のためにしてくれたことだろうしね」


 裕南の言葉に尚達は顔を顰めるも頷く。

 正直、高棚がそこまでの暴挙に出るとは考えてなかった。


「ただ……そこまで追い込まれてるなら、高棚が裕南に何をしてくるか予想が出来ん」

「だね。帰りがヤバイかな?」

「出来る限り俺と潤のどちらかと帰って欲しい。部活も出来る限り休む」

「だな」


 学校について教室に入る裕南達。

 同じ教室の少し離れた所で、奈季と那奈が話していた。


「ん?奈季。それって……」

「え?」


 那奈が指を差したのは奈季の鞄。そこにはストラップが2つぶら下がっていたのだが、那奈はその人形に見覚えがあった。


「ラブラブですなぁ。ニシシ!」

「もう!別にいいでしょ」

「まぁねぇ。次はニュウかな?」

「う~ん。そうだね。兎で作ってみようかな?」

「後、何個増えるかな?」

「……もう増えない……はず……でも……カッコいいからなぁ……」


 那奈の言葉に顔を赤くしながらも不安そうに俯く奈季。それに「ごちそうさま」と那奈は苦笑いする。奈季は机にうつ伏せになって、ストラップに触れる。


「……にゃ」


 小さな恋人に小さく声を掛ける奈季。

 その顔はとても幸せそうだった。




 放課後。

 潤は部活のブリーフィングとのことで、終わるまで待つことにした裕南。

 トイレに行こうとした時、


「き~は~な~く~ん」

「!!」


 高棚がにやけながら声を掛けてきた。

 雰囲気が今までと少し違うと思った裕南は、嫌な予感がする。


「……急に何かな?」

「一緒に帰らないか?遊びに行きたいところがあるんだよぉ」

「……悪いね。今日はもう約束があるんだ」


 早めに話を切り上げようとした裕南に、高棚はニヤニヤしたまま見つめる。


「へぇ~、断っちゃうんだぁ。ところでさぁ木花君。射手矢さんって知ってるぅ?」

「……同じクラスだけど?」


 訝しむように顔を顰める裕南。奈季ならば先ほど帰宅したはずだ。鞄を持って教室を出ていたのが目に入ったからだ。

 なのに何故その名前を、しかも裕南に聞くのか。裕南は意図が分からなかった。


「さっきさぁ、デートに誘ったんだけど断られちゃってさぁ……ムカついたから、一緒に居た奴らにあげちゃったよ」

「っ!?」

「一緒に来てくれるよなぁ?」

「……分かった」


 ニヤニヤした顔を崩すことなく、歩き始める高棚。その後ろを大人しく付いて行く裕南。

 向かった先は以前奈季が誰かに転ばされて裕南と出会った校舎裏だった。

 そこにいたのは3人の女子生徒と2人の男子生徒、そしてその足元に口元から血を流した奈季が座り込んでいた。1人の男子生徒の手にはバットが、1人の女子生徒の手には箒が握られており、その箒が奈季に向かって振り上げられていた。


「!!」


 裕南は思わず飛び出して、奈季を庇う様に左腕を伸ばす。その左腕に箒が力強く叩きつけられる。


「っつ!!」

「え!?木花君……!?」

「はぁ?なに、こいつぅ?」


 痛みに顔を顰める裕南。突然現れた裕南に目を見開く奈季。箒を振り下ろした女子は顔を歪めて裕南を睨む。

 そこに高棚が笑いながら裕南に近づく。


「はははは!!凄いなぁ!木花!関係ない女のために飛び出すなんてよぉ!そういうところがムカつくんだよなぁ!!!!」


 最後は怒りに顔を歪めながら、裕南の背中に前蹴りを放つ高棚。裕南は地面に倒れて、四つん這いになる。

 奈季が近寄ろうとするが、裕南は手で遮る。


「……随分と荒々しいね。どうしたの?高棚君」

「……相変わらず澄ましやがって。テメェだろ?俺の噂を流しやがったのは」

「……噂?変なこと言うね?僕の言葉が信憑性ないのは君が一番知ってるだろ?今更流して僕に何の得があるんだよ?それにやるなら、とっくに証拠を突き出してるさ」


 裕南は片膝を着いて体を起こしながら、高棚に反論する。それに高棚は更に顔を赤くする。足を振り上げて裕南を踏みつけようとするが、裕南は腕でガードする。

 

「おいおい。またやりすぎて意識不明とかにすんなよ!高棚!」

「うっせぇ!!」

「その噂。マジだったんだ!?」

「カメラに映らねぇように運ぶの大変だったんだぜ?」

「へぇ~。っていうか、うちらはそっちのブスが目的なんだけど。もういい?」


 箒を持ってる女子が奈季を指差す。


「いいぜ。裸にするなり好きにしろよ」


 高棚は目を血走らせながら、ニヤついて頷く。それに女子達もニヤニヤして奈季に近づこうとする。しかし、その前に裕南が立ちはだかる。


「あ?」

「悪いね。あんまり目の前で女の子が酷い目に遭うのは見たくなくてさ」

「はぁ~?何、ヒーロー気取ってんの?キッモ!」

「そんなブス庇うとかブス専?」

「あははは!!更にキモ!」


 女子達は裕南を見て笑う。そして箒を振り上げる。


「ほら、どけよ。また殴られたいの?」

「やれば?」

「……はぁ?本当にキモい。じゃあ死ねよ!!」


 女子が箒を裕南の頭に叩きつける。裕南は後ろに倒れそうになるが、踏ん張って耐える。また女子達をまっすぐに見つめる。

 それに女子達は顔を顰めて、再び箒を裕南の右肩に叩きつけるが、叩かれた直後裕南は両手で箒を掴む。


「放せよ!」

「そんな馬鹿いないでしょ」

「なら次はこっちだよ!!」

「ごぉ!?」

「木花君!!」

 

 女子が箒を引っ張るが、裕南の方が力が強かった。しかし、その時高棚がバットを裕南の腹に叩きつける。流石に裕南は箒から手を放し、背を曲げて痛みに呻く。奈季が叫ぶが、そこに高棚が近づいて来た。


「残念!王子様は弱かったのでした!恨むなら木花君を恨めよな!!!」

「っ!!」


 高棚がバットを奈季に向かって振り上げる。殴られるイメージが頭に浮かんで、奈季は目を瞑ってしまう。

 その高棚の顔に、裕南が右ストレートを叩き込んだ。


「ぶぇ!?」

「高棚!?」


 高棚は全く耐えられずに地面に倒れる。

 裕南は右手をプラプラさせて高棚を見下ろす。


「言ったろ?女の子が酷い目に遭うのは見たくないってさ」

「っ~!!木花ぁ……!!てんめぇ!!」

「僕だけなら我慢するけどね。彼女には絶対に手を出させないよ」

「黙れやあああ!!!」


 高棚は完全にキレて叫びながら、裕南にバットを構えて飛び掛かる。縦に振り下ろされたバットを裕南は躱して、高棚を押し飛ばす。高棚は再びよろけて尻餅を着いてしまう。

 その隙に箒を持った女子が奈季に向かおうとするが、裕南がすぐさま立ちはだかる。女子は箒を横振りし、裕南の脇腹に叩きつけられるが、裕南は痛みを我慢して女子の肩を思いっきり押し飛ばす。女子は後ろに倒れて、背中を打ち付ける。

 そこに今度は高棚がバットを横振りして、裕南の腹に叩きつける。裕南は右腕でバットを抱え込むように掴み、バットを引き抜こうとした高棚にタックルして押し飛ばす。後ろに体重を掛けていた高棚は抵抗できずに、後ろにいた仲間の男子生徒を巻き込んで、思いっきり背中から倒れる。


「はぁ!……はぁ!……はぁ!……」

「木花君……!!」

「逃げれそう?射手矢さん」

「さっき倒された時に足を挫いちゃって……でも、頑張れば!」

「無理しちゃ駄目だよ」

「でも!!」

「大丈夫。ちゃんと考えてるから。それに……()()()()()()()()()()()()に比べれば、この程度大丈夫だよ」

「……え?」


 裕南の言葉に目を見開いて固まる奈季。裕南は奈季に背中を向けている。その背中にどうしようもなく安心感を覚え、既視感を感じた奈季。そして先ほどの言葉。その瞬間、別世界にいるはずの最愛の男の背中と裕南の背中が重なった。全く身長も違うし、姿も違う。なのに、奈季は否定できなかった。

 その背中がナナキの背中だと言うことに。


「ざけんな。ざけんなざけんなざけんな!!ふざけんなあああ!!!」


 その時、高棚が叫びながらバットを両手で肩に担ぐように振り被って、裕南に飛び掛かる。そのバットは間違いなく裕南の頭を狙っていた。全力で振られたバットはあまりにも速く、裕南は避けれずに左腕を頭に添えるだけで精一杯だった。


 ゴォン!と鈍い音を立てて、裕南の左腕と側頭部に当たるバット。流石にその光景に全員が目を見開く。裕南は右に体が傾き、倒れていく。


「いやあああ!!」

「た、高棚!!おまえフザけんなよ!?」

「や、やばいって!?に、逃げよ!?」


 奈季が悲鳴を上げ、高棚の仲間達も「殺人」が頭に過ぎり、慌てて逃げようとする。

 

 その時、裕南が右脚を動かして倒れるのを踏ん張って耐えた。そして右手を握り込んで、ぼやけた視界で高棚を睨む。


「つああああ!!」


 裕南は叫びながら、右腕を振り被って高棚に振り抜く。

 高棚は殴った衝撃で両手が痺れてバットから手を放せず、振り抜いた勢いで体がまだ上手く動かなかったため、裕南の拳が迫るのをただ見ることしか出来なかった。

 そして、裕南の右拳が高棚の左頬に突き刺さる。


「ぶぅ!!」


 アッパー気味に叩き込まれ、顎を突き出して仰け反りながら後ろに倒れる高棚。ガランガラン!とバットが地面に転がる。

 それを奈季や男子生徒達は目を見開いて、唖然としている。

 何故かバットで殴られた裕南が立っており、殴った高棚が倒れている。一部始終見ていたのに理解が追いつかなかった。

 裕南は少しふらつきながらも、高棚を見下ろし、そして男子生徒達を見る。


「まだ……やる?」

「「「ひぃ!?」」」

「に、逃げるぞ!?」

「……無駄だよ?多分」

「あ?」

「知らないみたいだけどね。ここ、監視カメラ付いてるんだよ」

『!?』


 裕南の言葉に目を見開き、周りを見渡す男子生徒達。すると、屋上あたりに監視カメラがあり、間違いなく今いる場所に向けられていた。


「い、いつの間に!?」

「GW中だよ。掲示板に書いてたけど……知らなかったの?」

「じゃ、じゃあ……」

「今のは全部写ってるだろうね。あと、ついでに……」

  

 裕南が胸ポケットから携帯端末を取り出す。


「これにも今の会話や映像残ってるから。家のパソコンに送られてるし、僕の友達にも今頃届いてるよ」

『なぁ……!?』

「流石に……殺されかかるのは予想外だったかな……。まぁ、逃げる選択肢なんて彼女を見た瞬間無くなったけど」

「……木花……くん……ぐす……」

「あぁ……また……泣かせちゃったな……」

「ぐぅ……う……あ……」


 涙を流し始める奈季を申し訳さなそうに見つける裕南。そこに高棚が呻きながら動き出す。しかし、うまく体を起こせない様だ。どうやら脳震盪を起こしているようだ。


「バカなこと……したね……。今までの君なら……学校内で仕掛けることなんて……しなかったろうに……」

「お前達!!!何をしている!!!」


 そこに教師と思われる男性数人が駆けつけてきた。

 中には生徒らしき姿も見える。


「奈季!」

「裕南!」

「先輩!」


 那奈や潤達が2人に駆け寄る。


「ごめん!!ごめん奈季!!大丈夫!?」

「私は足が痛いだけ。でも、木花君はバットで頭やお腹を!」

「え!?」

「先輩!?頭から血が!?」

「え?ホント?」

「ばか!動くな!」

「先生!救急車を!それと……警察も」

「……だな。分かった」


 駆けつけた生徒の1人、肩までの黒髪ストレートの女性が教師の1人に指示を出す。警察という言葉に顔を顰めるが、ここまでの事が起きて内々で済ませられるわけはない。それを理解して頷き、携帯で電話を掛ける。

 その間に裕南は座らされ、綾がハンカチで傷口を押さえる。他の教師は高棚達を集めて、逃がさないように囲む。

 潤や尚が頭以外の怪我を確認していく。腹部と左腕が腫れ上がっており、顔を顰める。

 そこに奈季が那奈に支えられて、裕南に近づく。


「木花君……」

「木花君。ありがとう……!奈季のために……!ありがとう!」

 

 那奈は涙を流しながら裕南に頭を下げる。

 それに裕南は苦笑する。


「僕は僕のために動いただけだよ。()()

「……え?」

「僕はただナティのために、また1人で馬鹿をしただけだよ」

「……うそ……ナナキ……なの?」


 裕南の言葉に涙を流しながら唖然をする那奈。綾達も目を見開いて、奈季と那奈を見る。

 奈季は涙を流しながら、裕南の手を握る。


「……本当に……ナナキなんですね」

「こんなに近くにいたなんてね。驚いたよ」

「でも……どうやって……」


 奈季の言葉に、裕南は奈季の鞄を指差す。

 那奈や潤達も鞄に目を向けると、


「あ!」

「ナナキとナティ!」


 青の袴の和服を着た三毛猫とピンクの着物を着た白い猫の人形が手を繋いでぶら下がっていた。

 知らない人ならばともかく、潤達にはわかる。これはナナキとナティだと。


「で、でも……それだけで……」

「十分だよ。しかも、カランコエまで完璧に再現してる。僕の知り合いでここまで再現出来て、かつパッと見た目で誰か分からないのは……ナティだけだ」

「……」


 裕南の言葉に奈季と那奈は納得する。そして『カランコエ』という言葉に間違いなくナナキだと確信する2人。

 更に涙が溢れてくる奈季。顔を裕南の手に押し付けて、嗚咽を上げる。


「ぐすっ……えっぐ!……うああ……ああ!……」

「……ごめん。ナナキみたいに戦えなかった。また心配させたね」

「わ……わたしも……なにも……えっぐ!……できながっだ……!いまも……なにも……!」

 

 リアルでは魔法なんてない。目の前で怪我をしているのに【ヒール】が出来ない。あんなに叩かれていたのに盾も作れない。また、見ているだけだった。

 あんなに嫌だったのに。そうならないように、頑張ろうって決めたのに。リアルの自分は全く変わってない。心底、自分が嫌になる奈季。


「ここから頑張ろうよ。2人でさ」


 裕南の言葉に顔を上げる奈季。

 

「ナナキとナティみたいにさ。こっちの僕達も頑張って行こう。ここで出会えたんだからさ」


 ここで出会えたのは意味がある。そう思った裕南だった。

 

 その直後、救急車と警察が到着して、裕南達は病院に連れて行かれた。付き添いには潤。

 裕南は数日検査入院となり、奈季は帰宅を許可された。本日の面会は家族以外は許されず、奈季も事情聴取があり、裕南に会えなかった。



 そして翌日。

 病院の個室で横になっている裕南。

 頭は数針縫い、左腕はヒビが入っていた。腹部は奇跡的に腫れていただけだった。明後日には退院できるだろうとのことだった。


「で?学校はどうしたの?」

「あんなことあって普通に授業があるわけないだろ?」


 病室には潤達がいた。先ほどまでは穂香がいたが、テストがある日だったのに「そんなのどうでもいい!!」と涙目で叫んでいたが、理恵が首根っこを掴んで引きずって行った。

 その入れ替わりで潤達が現れた。


「それもそうか」

「今日と明日は休校だ。マスコミ対応やら保護者会やらでな」

「なるほど」


 そりゃそうだと納得する裕南。

 そこにノックが響く。許可を出し、潤が扉を開けると、そこには奈季と那奈がいた。


「こ、こんにちは」

「どうも~」


 何やら緊張している奈季。その奈季を見て目を見開く裕南達。


「ふふふ♪どう?ナナキ。可愛いでしょ?」


 那奈がドッキリ成功とばかりに笑う。

 奈季は今まで目元を隠していた前髪を上げ、顔をはっきりと晒していた。その顔は間違いなく美少女だった。


「ナティが美人だったから、リアルでも可愛いとは思ってたけどね。ここまでだったとは」

「うぅ……」


 裕南の言葉に真っ赤にする奈季。それに那奈も裕南の顔をジィーっと見る。

 

「……ナナキってイケメンじゃん」

「だ、だから言ったじゃない!ナナキはイケメンだって!」

「猫顔で分かるか。女の子っぽいとは思ったけど」

「まぁ先輩は中性的な童顔でイケメンですよね!」

「はいはい」

「酷い!?」

「なるほどねぇ。そりゃあ、お姉さんもブラコンになるわ」

「納得しないで。ニナ」


 奈季がお見舞いにクッキーを持ってきてくれたので、笑顔で食べる裕南。それをまだ顔は赤いが嬉しそうに見つめる奈季。そんな2人を見て『やっぱりお似合いだな』と再認識する那奈。

 もちろん奈季の鞄には手を繋いだナナキとナティがいた。


「しかし、まさかナナキ達が同じ学校だったとはね。運命的と言えば運命的かしら?」

「この分かり方は嬉しくないがな」

「まぁ……それはね」


 すると、尚達が奈季達に頭を下げる。

 

「ど、どうしたの?」

「あいつの噂を流したのは俺達なんだ。それがあんな結果になってしまって射手矢達には申し訳なかった」

「あ~……そういうことかぁ」


 奈季に顔を向ける那奈。それに奈季も頷き返す。


「あいつらの中にさ、女いたじゃん」

「ああ」

「あいつら、奈季をずっといじめてた連中なのよ。だから私達もナナキ達を巻き込んだ感じになってるの。だから謝らなくていいわ。おかげで奈季も救われたし」

「うん」


 互いに謝罪して、これで終わりと言うことでゲームについて盛り上がる裕南達。

 ちなみに裕南は穂香に頼んでヘッドギアを持って来させていた。なので夜にはゲームを始める気満々だった。


 すると今度はそこに担任の団藤が来た。


「何だ?随分とにぎわってんな」

「先生」

「おう。大丈夫そうだな。無茶しやがって」

「すいません」

「まぁ、状況的に仕方がないとは思うがな。あんまり彼女泣かせるなよ」


 団藤は奈季を見てニヤニヤしながら言う。


「なんでわかったんですか?」

「初々しい感じがあるからな。それに射手矢がベッドに腰かけといて、違うとかあるか」


 奈季は裕南のベッドに腰かけていた。本人は無意識で、裕南は全く疑問に思っていなかったので那奈たちは面白がってツッコまなかった。

 言われて気づいて顔を真っ赤にする奈季。


「まぁ、射手矢もいるなら丁度いい。高棚達についてだ」


 その話に姿勢を正す裕南達。


「高棚は傷害罪で逮捕。他の連中も脅迫やら暴行で逮捕。もちろん退学だな」

「……あれ?僕、被害届書いたっけ?」

「お前の姉さんと射手矢の親が出した。さらにこれまでのことも中島や月見里達が証拠を提出して、余罪も取り調べ中だ。間違いなく少年院行きだな。聞いた話じゃ、お前がいた中学校も荒れてるらしいぞ」

「今更荒れてもなぁ」

「まぁ、そっちはほっとけ。どうでもいい。もちろんお前はお咎めなし。ただ、しばらくは噂の的だぞ。頑張れよ」

 

 他人事のように話す団藤にジト目を向ける裕南達。

 「学校からだ」と見舞いの菓子を受け取り、怪我の事を聞いて帰ろうとしていた団藤だが、ふと奈季が持っている鞄に目を向けて、そこにあるものに目が止まる。


「……その人形」

「え?ああ、これは……って先生もDTOやってましたっけ?もしかして?」

「……知ってる。知り合いなのか?」

「僕達です」

「……そういうことか~」


 頭を抱える団藤。そのリアクションに、もしかして顔見知りかと推測する裕南達。


「……誰ですか?」

「……言いたくねぇなぁ」

「僕の知り合い全員に聞きまわりますよ」

「アウトだろソレ。ここだけの話にしとけよ?」


 団藤の念押しに頷く裕南達。

 顔を顰めて腕を組む団藤。


「青影だ」

『……え?』

「だから青影だって言ってんだよ」

『えええええ!?』


 驚きの声を上げる裕南達。まさかの青影だった。


「え!?あの兎さん夫婦の!?」

「あのナナキに宇宙空間に放り投げられた!?」

「「あの時は申し訳ありませんでした!!」」

「気にすんなよ。ゲームのことだしな。それにしても、あの猫カップルがお前らねぇ」

「僕達も昨日知ったんですよ」

「なるほどな。まぁ、黙っといてやるよ。あのラブラブを邪魔する気はねぇ」


 話が分かる教師、団藤であった。

 団藤は学校に戻り、裕南達は本当に身近に知り合いが多すぎであることに驚いていた。


「他にもいそうだな」

「ニュウとか近くの中学校にいるんじゃない?」

「あの中学にいるんじゃないですか?」


 那奈と綾の推測に否定しきれない裕南。確かめようがないので、どうしようもないが。

 

 その後もそれぞれのクランの話で盛り上がる裕南達。

 途中、買い出しに行くと尚、潤、綾、那奈が病室を出る。明らかに気を使われたのが分かり、苦笑するも内心感謝する裕南。

 そして奈季と2人きりになる。


「……本当に怪我は大丈夫なんですか?」

「大丈夫だよ。明後日には退院出来るよ」

「……やっぱり悔しいです。ナティだったら、すぐに直してあげられる怪我なのに」

「仕方ないさ。だからDTOを始めたんだから」

「……そうですね」

「そう言えばさ」

「はい?」

「なんで『ナティ』なの?」

「射手矢 奈季。それを逆にして『ナ』と『テ』と『イ』を抜き出したんです」


 ナティの由来を聞いた裕南はパチクリとして、突如腹を抱えて笑い出す。


「き、木花君?」

「くははは……!ゴメンゴメン。そこまで同じだなんてと思ってさ」

「え?」

「木花 裕南。それを逆にして『ナ』と『ナ』と『キ』を抜き出したの」


 裕南の言葉に今度は奈季がパチクリとする。そして顔を真っ赤にする。

 裕南は奈季の手を握る。


「昨日も言ったけどさ。魔法やスキルもないし、向こうみたいな冒険は出来ないけど、2人で頑張っていきたいって思ってる」


「……はい」


「だから……奈季が大好きです。僕とこっちでも付き合ってくれませんか?」


 奈季に微笑んで告白する裕南。

 それに奈季は目に涙を溜めて、同じく微笑み、手を握り返す。


「私も……裕南君が大好きです。こっちでも傍にいさせてください」


 2人は顔を近づける。


 そんな2人の様子を、ナナキとナティは手を繋いで見つめていたのだった。



やっとリアルでも一緒になれました!

ありがとうございました!

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