#56 後ろの正面だぁれ?
よろしくお願いします。
僕達はまだ水に追われながら滑り続けていた。
僕はもう走り疲れたのでソリに乗っている。
「ニャティ。大丈夫かにゃ?」
「はいにゃ。スピードにもにゃれてきましたにゃ」
それは良かった。でも、これからどうなるんかね?
「ゴールもにゃんか怖いにゃあ」
「にゃ~」
嫌な予感しかしないよね。このスピードで落とし穴は嫌だなぁ。
バガン!!
「「にゃ?」」
なんか凄い音が響いた。そして、妙な浮遊感を感じた。
え?マジで?そして、また落ちていく。
「「にゃあああああああああ!?」」
速っ!?怖っ!?ソリどうしたらいい!?乗ったままがいい!?飛び降りるべき!?
バキン!
「にゃえ!?」
今度はソリが壊れた。なんでよ!?
手足をバタバタして何とかナティに近づいて抱き着く。
ナティも僕に力強く抱き着いてくる。
下はまだ真っ暗だ。どこまで深いんでしょうか?この高さ落ち続けるって結構絶望ですよ?
ナティはもう僕の胸に顔を埋めて、目をギュッと閉じている。
クルっと体を回して、僕の体を下側にする。
「ニャニャキィ?」
「大丈夫だにゃ」
ちょっと涙声だ。大丈夫だよ。僕が守るからね!
その時、下からネットのような物が飛んで来て僕達を捕まえる。
「にゃ!?」
ネットは何かに吊られていたようで、急に移動が横に変わる。
「うにゃあ!?」
「にゃああああ!?」
今度はネットごと切られたのか、また下に落ちていく。
しかし、すぐに何か柔らかいものの上に落ちる。
つ、着きました?もう落ちないですか?
「も、もう大丈夫ですかにゃ?」
「多分……」
起き上がろうとするが、ふらついてしまって尻餅をついてしまう。
ちょっと休憩しよう。
ポテっと後ろに倒れて寝転がる。
「ニャニャキ?」
「ごめんにゃ。ちょっと休むにゃ」
「はいにゃ」
ナティが僕の頭元に回って座る。
「……足が短くて膝枕出来にゃいですにゃ。にゃ~」
ナティが残念そうに落ち込みながら、僕の頭を撫でてくれる。
いやぁ、これだけでも幸せですよ?膝枕は憧れてるけど。でも僕らの足だと正座って難しいよね。出来ないわけではないけどね。太ももが余り出っ張らないんですよ。頭を乗せるほどの広さはない。
しばらくナティが頭を撫でてくれながら目を瞑る。
1時間ほどして起き上がる。
「ありがとうにゃ」
「にゃあ」
お礼を言って起き上がる。
時間は昼過ぎ。
「お昼食べて進むにゃ」
「はいにゃ」
サンドイッチをハムハムと食べる。……そろそろ考えないと街に着く前にサンドイッチ無くなっちゃうなぁ。ナラルスさんに一杯作ってもらったけど、進んでないからなぁ。
食べ終わり一服してから先に進む。何故かね、ぼんやりと通路の入り口が光ってるんですよ。まぁ、そこに行けってことだよね。
先に進むと広い空間に出た。見えたのは古城の天辺だった。目の前にはつり橋のような道があり、その道は古城の最上階に繋がっていた。
「ゴールですかにゃ?」
「いやぁ……下にも道があるにゃ」
下を覗くと古城の正門からも道が続いている。
つまり、これもアトラクションの1つということだ。
「戦闘はあるのかにゃ?」
「そう思って動いた方がいいですにゃ」
「だにゃ」
城に近づき、城内に入れそうな小さな扉を開ける。
ギィ~
「ひぃ!?」
扉が開く音にナティが引きつった声を上げる。
うん。これは……。
「お化け屋敷かにゃ?」
「にゃ~」
中はボロボロでどこかおどろおどろしい。真っ暗ではないが妙に見通せない明るさが恐怖を煽る。
ナティが僕の服の裾を強く握る。苦手だもんね。
「僕が前で進むにゃ。ニャティは無理に前を向かにゃくてもいいにゃ」
「にゃ」
すでに目をウルウルさせていて、まともに話す余裕はなさそうだった。
うん。でも、かわゆい。頑張ろ!
ギシ、ギシ、ギシィ、ギシ
古城の中をゆっくりと進む僕達。ナティはすでに背中に顔を埋めている。
というかね。なんで石造りの古城だったのに中は木造の床なん?
音が恐怖を煽るから?多分石床でも怖いぞ?
今の所、何もなし。血の跡みたいなものもないし、足音以外の物音もない。
問題はね、部屋を覗くべきなのかってことですよ。普通なら覗くでしょ?でもねぇ、背中のマイハニーがいつまで保つかってことですよ。
覗かなくて鍵を見つけないとってなると同じなんだけどね。でも覗いて何もなかったらマイハニー耐えられない気がするんだ。
だってね、
「ひにぃ………ひにぃ………ひにぃ………ひにぃ~」
って感じで呼吸が怪しいんだよ。休ませてあげたいんだけどさ。この状況だとどの部屋も多分ダメじゃん?
ここまで苦手だったとは……。
何部屋か覗くも何もなし。特に怪しい部屋もなし。
今は多分古城の半分位だと思う。つまりあと半分。何でも仕掛けられるんですよ。あの主さんからすると、このままで終わる気がしない。
すると、
《ねぇ……ねぇ……》
声が聞こえた。
「ひぃ!ひいいぃぃぃ」
ぐぇ。服が引っ張られてちょっと首が締まった。
さて、どう出るのでしょうか。
《後ろの正面だぁ~れ?》
後ろに何かいると。
「見にゃいにゃ!見にゃいにゃー!」
ナティはダメだよね。ゆっくり回ろうとすると、
ナティと強制的に離されて、強制的に後ろを向かされる。
マジか!?
「いにゃー!いにゃー!」
ナティがパニックになっている!あれ!?声が出せない!!
ナティは後ろを向かされるも、目をギュッと閉じている。
すると、
《ニャティ。大丈夫にゃ。にゃにもいにゃいにゃ。目を開けるにゃ》
「ほんとうにゃ?にゃにもにゃいにゃ?」
《僕を信じるにゃ》
ひ、卑怯だぞ!?僕の声を使うなんて!
ダメだ!ナティ!
「にゃあ~」
ナティは目を開けてしまう。
《バアァーーーーー!!!!》
その瞬間、真っ白なのっぺらぼうの顔が口を大きく開けて舌を出して、声を上げながらナティの目の前に現れる。
御定番ですね!僕?意外と大丈夫だった。
ナティは?
「ひっ………ひっ………ひっ………ひっ………ひっ」
目を見開いて、顔を引きつらせて同じく引きつった声を上げている。
まだ声が出せない!
《うひゃひゃひゃひゃひゃひゃ!!騙されたにゃ~!!》
やめてぇ!僕の声で話さないでぇ!!
「ひぃいにゃああああああああああああああああああ!!!!」
ナティが大声で叫ぶ。すると【シールド・フェアリーズ】が発動したのか、周囲に盾が大量に現れる。
え。これってまさか。
盾から光線が一斉に発射される。
うおおおお!?
《ひえええぇぇぇ!?お助けぇぇぇ!?》
お化けも慌てて逃げ出す。
お前も逃げるんかい!?責任を取りなさい!!
「にゃあああああああああああん!!」
ナティは完全にパニック状態だ。大粒の涙を流して泣いている。
えぇい!!
ナティをお姫様抱っこする。今は声を掛けても逆効果っぽいからね。
では!
「おにゃああああああ!!」
そのまま走って先に進む。この攻撃を逆に利用して、一気に進むことにした。
《うわあああああ!?》
《あぶな!?こっち来ないでよ!?》
《うわぁ!?あぁ~……》
《こら!成仏するな!戻って来い!》
《光属性攻撃なの!?》
《げぇ!?引火した!!》
《ちょっと!!ここは火気厳禁よ!!》
《いぎゃああ!?天井が崩れてきたぁ!!》
うるさいやい!文句があるなら騙したのっぺらぼうに言え!因果応報って奴だ!
こっちはナティを宥めるのに精一杯だい!お前達のせいで声かけても信じてくれないんだぞ!
リフォン!ヘルプミー!
「きゅあ!きゅあ!?」
「リフォン!ニャティに声を掛けてあげるにゃ!」
「きゅ!」
リフォンがナティの上に降りて「きゅあ~」と声を掛けながらペロペロと舐め上げる。
「にゃああああん!にゃあああん!ひっぐ!にゃあ?にゃあ~」
リフォンに気づいたナティは涙をボロボロ流しながらギュウっと抱き着いた。
よし!これでもう少しで落ち着くだろう。
とりあえず走っていくと一番下の階まで着いたようで、大きな扉が現れた。
「ニャティ?大丈夫かにゃ?」
「ぐすっ……はいにゃ……もう大丈夫ですにゃ?……ぐすっ」
「にゃ。ニャティの攻撃で追っ払ったにゃ。ごめんにゃ。あいつのせいで声を掛けられにゃかったにゃ」
「ぐすっ……大丈夫ですにゃ……リフォンもありがとうにゃ」
「きゅあ!」
ナティを降ろして、お茶や果物を取り出す。
ちょっと休もうね。
「後はこの扉を抜けるだけにゃ」
「はいにゃ……怖いですかにゃあ?」
「どうかにゃあ?上の階の連中はもう来にゃいとは思うけどにゃ」
すると、ゴォン!と音を立てて大扉が開く。
「……やっぱり全部聞こえてるのかにゃ?」
「にゃ~」
流石にリフォンは危ないので2人でなでなでして帰還させる。
再びナティを背中に張り付かせて中に入っていく。
中は真っ暗で闇視でも奥が見えにくい。
嫌な予感しかしないです。
そして、
《後ろの正面だぁ~れ?》
「にぃ~!にぃ~!」
ナティの声が新境地に達したようだ。そして、また体が強制的に動かされる。
横並びにされる。嫌だなぁ。
グリン!と同時に後ろを向かされる。
しかし何もいなかった。
「にゃ?」
「にぃ~!にぃ~!」
「にゃにもいにゃいにゃ」
「騙されにゃいにゃ!」
やっぱりだめか。
そう思っていると、ナティの目が無理矢理な感じで開けられる。
そっちの方が怖いよ!!
それでも何もいないのが分かったようで少し落ち着く。
「にゃ~」
「大丈夫にゃ?」
「にゃ~」
そして2人同時に前を向くと、
目の前に全身真っ黒で目だけがない僕とナティがいた。
おぉう!?
「にぃ~!にぃ~!にぃ~!」
あかん!ナティがまた爆発しそう!
『は~はっは~!どう?楽しかったでしょ!』
声が響いてくる。
すると、黒い僕達の向こう側にピカっとスポットライトが光る。
『神!降臨!』
右手を天に向かって指差し、左手を腰に当てている少女がいた。
赤髪ツインテールに赤い瞳、服装は古代ローマを思わせる。
神様……なんだろうね。泣かせちゃったけど。
『よく来たね!忌々しいイチャイチャ猫カップル!』
ビシっとこっちを指差して叫ぶ少女神。
神々しいのが逆になんか腹立つね。
『もう泣いたって許してやらないかんね!』
自分も泣いたからね。
僕はナティを指差す。
「にぃ~!にぃ~!にぃ~!」
ナティはまだ大粒の涙をボロボロ流しながら恐怖に耐えている。
この泣き顔は堪えるだろう!
『うっ!?うぅ……あ、謝ったって許してやんないかんね!』
ならば!!
「ごめんにゃさいにゃ」
『あ、謝らないでよ!?土下座でもされたって許さないかんね!』
ほう?
「申し訳ありませんでしたにゃ!!」
『やめてぇーーーーー!!!!』
言われた通りに土下座してみた。
すると、叫びながら崩れ去る少女神。
優しい子なんだね。なんかゴメン。
『うぅ~。よくも乙女の純情を弄んだな!!』
乙女の純情は落とし穴ばかり作ったり、こんな城を建てない。
『うるさいやい!』
あ。やっぱり心読まれてる?
『もう本当に許さないかんね!!おいで!!ナにゃちゃんズ!』
両目に涙を溜めて僕を睨む少女神。そして、両拳を握りながら何かを呼ぶ。
すると目の前で大人しくしていた黒ナナキ達が突如動き出し、一糸乱れぬ動きで側転しバク転し、最後にクルクルと後転しながら飛び下がり、少女神の目の前で片膝立ちで降り立つ。
ちょっとカッコイイと思ってしまった。
って、待てぃ!ナにゃちゃんズって黒い僕達の事かい!?変な名前つけるな!!
『何だよ!!ナが最初に付いてるし、猫じゃない!間違ってないでしょ!!』
本人の許可を取れ!
『神が名前を付けたんだぞ!名誉に思えやい!』
思えるような行動してくれよ!今の所泣き虫なイタズラっ子じゃん!
『むっかーー!!本当に怒ったかんね!!』
地団太踏みながら怒る少女神。
じゃあ、何をする気だ?
『スペシャル!!』
少女神がバッと左を向き、右手を上にあげ左手を前に出して中腰になってポーズを取る。
それに黒ナナキと黒ナティも一緒にポーズを取る。
なんか恥ずいな!
『ファイナル!!』
今度は右側に向かって、左手を上に右手を下に伸ばし、右脚を蹴るように伸ばす。
中国拳法のイメージ?
『アーートララララララクション!!』
最後に正面を向いて、ギュウっと体を縮こまってしゃがみ、舌を震わせてラを発音しながら両手を大きく広げながら立ち上がり、最後にビシ!っとこっちに指差して決めポーズを取る。
黒ナナキ達は最後に少女神を称えるように片膝立ちになって仰いでいる。
なんやねん。
ナティも落ち着いたようで、きょとんとした感じで3人?を見ている。
『これが最後だぞ!もちろん戦闘!』
3人?は両手を腰に当てて仁王立ちになり胸を張る。
なんかお笑いトリオみたいに見えてきた。
戦闘?
『相手はこの神が操るコピーのお前達だ!』
ふむ。定番ではある。
しかし、神が操るというのは少しこちらが不利だな。
『もちろん戦闘力は今のお前達と同じだ!』
うわぁ……尚更辛くね?
『さぁ!私と遊ぼうか!』
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