#31 聖杯は、私のものだ!
よろしくお願いします。
僕は朝日を感じて、目を覚ます。
鼻先に何か薄っすらと触れている感覚があり、目を開ける。
すると、僕の目の前には。
ナティの顔があった。
「っ!?!?」
触れていたのはお互いの鼻先だった。
うぇ!?これ!?キッス!?
もはやキスといえる状況に僕はパニックになり、飛び起きてナティから離れる。
慌てたため、ベッドから落ちて頭を打つ。
「にぎゃん!」
「ふにゃっ!?ニャニャキ!?どこですにゃ!?」
「にゃあ~」
ナナキの悲鳴にナティが飛び起きる。
ナナキの姿が見えず、パニックになるもベッドの下からナナキの声が聞こえてきたので、覗き込むとナナキが頭を下にして落ちている姿が目に入る。
「大丈夫かにゃ?」
「にゃ、にゃあ」
僕は何とか返事をする。
ご……誤魔化せたかな?
その後、妙に顔を赤らめてソワソワしている僕をナティは不思議そうに見る。
僕達は食堂に行き、朝ご飯の支度をする。
ガスは魔道具のようで魔力を注ぐと使うことが出来た。
流石に調味料はなかった。
まぁ、料理なんて出来ないけど。
しかし、棚には金や銀の皿にコップ、透明の大きな器など様々な食器があった。金のコップには赤や青などの宝石がそれぞれコップに付いていて豪華だった。
料理人がいればさぞ豪華な食事が出来ただろうなと2人は考えながら、簡単な肉の塩焼きと果物を食べる。
ついでに僕達は換金目的で、コップやらなんやらをポーチに入れる。
むふふふふ。ちょっと王様気分味わえそう。
食事が終わると、一度外に出る。
入り口には竜が寝ており、祭壇がある部屋も特に変化はなかった。
例のガラス玉を取り出してみるも、特に変化はなかった。
ガラス玉を手に僕達は神殿を再び一回りするも、まったく新しい発見はなかった。
昨日見つけた日記と思われる本は回収しておいたが。
地下室もあったが特に何もなく、倉庫にも大して物はなかった。
うん。手詰まり。
僕達は祭壇の前の長椅子に座り、何かなかったかと考える。
「にゃ~。すでに知っているって書いてるのに、にゃんにもにゃいにゃ」
「でも、もう全部の部屋を回りましたにゃ」
「だよにゃあ」
僕達は特に思いつかなかった。
じゃあ、外はどうだと歩き回るも、花畑以外は何もなかった。
「どうするかにゃあ」
僕達は完全に行き詰った。
もう探せる場所もない。
誰かが来るのを待つしかない。
しかし、いつ来るのかも分からない。
僕はやることがなくなった。
するとナティが提案する。
「ニャニャキ。外でピクニックでもしますにゃ」
「ピクニック?」
僕は首を傾げる。
ナティはニコニコとしている。
「ニニャ達には申し訳にゃいですが。でも、やることもにゃいにゃら、楽しむしかにゃいですにゃ。だったら、はにゃ畑でゆっくりしますにゃ。……2人っきりですしにゃ」
ナティは顔を赤らめる。
それもそうだな。
僕は笑顔で頷く。
僕達は最初に降り立った花畑に行く。
花畑の外れに座ると、そこからは島の外が見え、雲の隙間から青い海が見えて絶景だった。
僕達はそれをぼんやりと見ながら過ごす。
風が気持ちいいな。
雨とかもないし。
途中から竜がやってきて、お肉をあげたり背中に登って日向ぼっこしたりした。
残念ながら、下に降ろしてという願いは聞いてくれなかったが、島の周りを飛んでくれと言うと、頭に僕達を乗せてゆっくりと飛んでくれた。
僕達は空からの光景を楽しんだ。
竜は時折雲の中に突っ込んだり、空中で旋回したりとサービス精神旺盛だった。
僕達はそれに慌てたり、笑ったり、抱き着いたりと楽しんだ。
なんだ。この竜さん良い人だな!
気づけば夕暮れになってきた。
竜は花畑に降り立ち、僕達を降ろす。
楽しかったな!
僕達は竜にお礼を言って、最低限の量を残して、あげれるだけのお肉を食べさせる。
2人と1匹は花畑で座り、日が沈むのを眺めていた。
ナティが僕の肩にもたれ掛かる。
僕はそれを優しく受け止め、肩を抱く。
幸せだなぁ。
2人の思いは一緒だった。
もはや2人の頭にはイベントのことなんて吹っ飛んでいた。
すると、急に僕達のウィンドウが開かれる。
コール画面だ。
僕達は顔を見合わせて、コールに出る。
『やっと繋がった!』
『心配させ過ぎなのよこの馬鹿猫!!』
「「すいませんでしたにゃ!!」」
ラドンナとニナだった。
どうやら着いたらしい。
『なんか地下に出たんだよねぇ。とりあえず上がるよ。何処に行けばいいんだい?』
「この島には神殿とはにゃ畑しかにゃいにゃ。神殿も目立つからすぐに分かるにゃ」
『了解』
僕達は竜に乗せてもらって神殿へと戻る。
入り口の前で待つこと10分ほどで人影が見え始める。
「おーい!ナナキー!」
ラドンナ達のようだ。
後ろには白蓮、リヴァラン、アガタ、ファナ、リリィ、蘭羅もいる。
僕達もラドンナの元に向かう。
皆と合流すると、
「「ふん!!」」
「「ぐにゃ!?」」
ラドンナとニナに思いっきり拳骨を浴びせられた。
なんで!?
ナナキ達はゴロゴロと転がり、痛みに悶える。
そんな様子を怒りの目で見ている2人。
「心配させたんだ。これくらいは当然だ」
その言葉に全員が頷く。
「べ、別にわざとこうにゃったわけでは」
「「あぁん?」」
「スイマセンデシタニャ。シンパイカケテゴメンニャサイニャ」
僕は言い訳するも凄まれて、すぐさま土下座する。
イイワケ、ダメ、ゼッタイ。
「まぁ、無事だったならいいじゃねぇか。そこらへんにしとけよ」
声を掛けてきたのは【赤月旅団】のフルレッドさんだった。
「せやねぇ。とりあえず2人に分かっとること聞きたいんやけどええかいな?」
紅玻璃さんも苦笑しながら声を掛ける。
「……仕方ないねぇ。で?どうすんだい?ナナキ。情報やるかやらないかはお前次第だよ」
「僕達じゃだけじゃ多分無理にゃので、はにゃすにゃ」
「おおきに。ほな、主だった連中に声かけてきますわ」
そう言って紅玻璃さんは離れる。
「ご無事で何よりですわ。ナナキ様」
「そっちも無事でよかったにゃ」
「ただディノ達には会えとらんのぅ」
「ま、そのうち来るさ」
再会を喜んでいるうちに、周りにそれぞれのリーダーと思われるプレイヤーが集まってきた。
ちょっと怖い。
同じクランリーダーだなんて思えません!
「ほな、お願いしますわ」
紅玻璃さんが促す。
僕はそれに頷いて、得た情報を離す。
この島の歴史、そして行われていた儀式。
そして聖杯を集めないといけないこと。
この島には特に何もなかったこと。
あと、2人には読めなかっただけで、本から何かしら情報は得られる可能性があること。
流石にガラス玉とヒントは言わなかった。
話終わると、全員が考え込む。
「あと2日で6つの聖杯かよ。これやばくねぇか?」
「あぁ~。これは壮絶な競争やなぁ」
「……出来れば協力体制を作りたいで御座るな」
フルレッドさん、紅玻璃さん、青影さんがこの後起こる奪い合いにうんざりした顔をする。
しかし、
「俺らがもらうぜ!」
「おい!行くぞ!」
「おらぁ!どけよ!」
「なにしやがる!」
周りはすでに乱闘が始まっていた。
我先にと来た道を戻る。
僕は首を傾げる。
「ここに来た時に他にも通路と転送装置みたいなのが見つかったんだ。おそらく、聖杯がある島に繋がってるんだろうな」
オグマが説明してくれる。
僕はその説明に違和感を覚えるも、答えが分からずにとりあえず納得する。
僕達はとりあえず食堂に移動し、相談することにする。
すると、フルレッドさんが声を掛けてきた。
「ナナキ。共同戦線だ。おれらも混ぜてくれ」
「拙者らもいいでござるか?」
青影さんも参加してきた。
僕は了承する。
でも、何にもないよ?
「申し訳ありません。我々もいいでしょうか」
声を掛けてきたのはライオンのビーストウーマン。
「あにゃたは?」」
「【深き緑園】のマヤウェルと申します」
「なんであたし達に声かけたんだい?」
「……正直、感ですね」
マヤウェルさんはラドンナの問いに苦笑しながら答える。
「あの乱戦に単身で飛び込んだところで、いつかPKされるだけです。ならば、結託したほうがまだ生き残れます。それに」
「それに?」
「ケット・シー御夫婦の幸運に縋ろうと思いまして」
マヤウェルさんの言葉にナティが顔を真っ赤にする。
そんなに噂になっているのか。
青影さんがマヤウェルさんのことを保証し、特に反対もなかったので、一緒に行動する。
食堂に集まり、もう一度情報を整理する。
そこで僕はガラス玉やここで集めたアイテムを全て取り出し、ヒントについても話す。
全員が考えている。
「確かに怪しいところはないで御座るなぁ」
「そうですね」
青影夫妻も僕達の探し方に特に問題はないと考える。
「だな。ヒントが読める以上、本の中に答えがあるとは思えねぇ。日記はともかくな」
フルレッドさんも同意する。
すると、フルレッドさんの後ろにいたケーンさんが声を挙げる。
「私はサブが【司書見習い】ですので、もしかしたら読めるかもしれません。貸していただいても?」
僕は日記をケーンさんに渡す。
ケーンさんは読み始めるが、すぐに首を振る。
「すいません。無理なようです。レベルが足りないようです」
「ってことは、これには答えに近いものが書いてあるってこったな」
レベルを求められるということは、情報の内容が重要である可能性が高い。
でも、読める人が凄く限られるなぁ。
「しかし、よりにもよって、聖杯がある島が落ちるとは」
「まったくね。島に行けないのに宝だけあっても困るわよねぇ」
「……にゃ?」
マヤウェルさんとルナイラさんの言葉に、僕は再び違和感を覚える。
島に行けない?
「どうしたかの?」
アガタが尋ねる。
「にゃんか違和感が……」
僕は首を傾げる。
現状の何かがおかしい。
そう感じる。
「あぁ!?」
「どうしましたの?リヴァ」
リヴァランが突如大声を上げる。
なにかに気づいたようだ。
「そうだよ!おかしい!なんで落ちた島へ行ける道があるの!?行けないから、司祭さんは死んだんだよね!?」
『あ!』
その言葉に全員が違和感の正体に気づく。
そうだ!転送装置があるなら死ぬわけがない!
ということは、あの司祭の言葉はフェイク!?
全員が混乱している。
その中で、白蓮だけが考え込んでいる。
その手にはヒントが掛かれた紙切れがあった。
「何か気づいたかい?白蓮」
ラドンナが白蓮の様子に気づく。
全員が白蓮に注目する。
白蓮はまだ考えているようだが、共有することにした。
「もし、その司祭の言葉が嘘だとすると、この紙のヒントが全てになりますわ」
全員がそれに同意する。
「そのヒントがどうかしたかの?」
「つまり、聖杯が他の島にあるのも嘘、ということになりますわ。そして事実、このヒントには聖杯を集めよなんて書かれていない」
その言葉に全員が目を見開く。
「【杯はあるべき場所にある。されど、それは望む形をしているとは限らない。その場所は知っている。答えは玉と共にある】これを今の状況を合わせて考えると……。『杯はあるべき場所にある』。聖杯のあるべき場所は?もちろんこの神殿ですわ。つまり聖杯はすべてこの神殿にある」
白蓮は言葉を続ける。
「『望む形をしているとは限らない』。つまり、分かりやすい見た目ではない。では、なにか。『その場所は知っている。答えは玉と共にある』……。ナナキ様。この玉があった部屋はどこですか?」
「2階の一番奥にゃ。その部屋の床にあったにゃ」
僕は答える。
白蓮は上を見る。
「つまり、この食堂の真上ですわね?」
「にゃ!?」
僕とナティはその言葉に建物の構造を思い出す。
……ほんとだ!?
思い出したナティが補足する。
「正確にはあの厨房の真上ですにゃ」
ナティの言葉に全員が厨房を見る。
「玉の位置がどの当たりかは分かりますか?」
「え~っと、あそこらへんですにゃ」
ナティが位置を指で示す。
白蓮はその下の棚に近づき、開ける。
中は空っぽだった。
「この棚にあったものは覚えています?」
「たしか……このへんの奴ですにゃ」
僕は金のコップと透明の器を示す。
なんかやっちまった感。
欲張るんじゃなかった!
僕は該当しないものをしまう。
全員が残ったものを眺める。
「ってことは、このコップか?」
オグマが金のコップを手にする。
コップにはそれぞれに異なった色の宝石が付いている。
白蓮が戻ってくる。
「杯というと、優勝杯とかのせいかコップを思い浮かべますが、正式には『盃』なんですの」
白蓮は透明の器を手にする。
「玉も透明。これも透明。見た目では分かりませんわね。そして、台座と同じ数もある」
白蓮は外を見る。
外は夜になっており、窓からは月明かりが差し込む。
「ここの女神は『月』。ならば月明かりが何かを起こす」
白蓮は窓に近づき、器に月の光を当てる。
すると、透明の器が赤く輝く。
全員がその光景に目を見開く。
なんだそれ!
「やっぱり流石はナナキ様とナティ様ですわ。そしてマヤウェル嬢の感も大当たりですわね」
白蓮は苦笑する。
そして、僕達を見る。
「この透明の器こそが、聖杯。お2人はすでに聖杯を集め終えていたのですわ」
ありがとうございました。
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