#23 濡れる爪と走り回る者達
編集後です。
あまり変わっていませんが(-_-;)
ダイマキナ―さんは二章か三章で活躍していただきます。
よろしくお願いします。
冒険者ギルドは人であふれていた。
冒険者に加えて、避難してきた住人は流石に収納しきれる数ではない。
「避難した怪我人は奥へ!子供や戦えない御老体も屋内へ!それ以外の方は申し訳ないが、冒険者の後ろで盾を持って待機してくれ!」
ギルド職員であろう男性が住人に大声で指示する。
「冒険者たちは少しずつ防衛圏を広げるぞ!」
外では職員や冒険者が敵を押し返しながら前進し、場所を確保していく。
もちろん職員も戦闘に参加している。
特に活躍しているのは3人。
「全くやってくれるねぇ!『渦巻き迸れ』【ライトニング・トルネード】!」
エリマが魔法を唱えて敵を焼き尽す。
魔法が収まるとすぐさまエリマの横から影が躍り出る。
「全く私は料理人なのよん!【バーニング・フィスト】!」
ナラルスが両手に火を纏い、敵を殴り飛ばして投げ飛ばす。
ナラルスに触られた敵は全身が燃えていく。
「仕方ないでしょ~。手が多いのは大事なことよ~。じゃあ広げるわよ~。『敵を押し返せ』【リフレクト・ウォール】」
シィナが結界を生み出して動かす。敵は結界に弾かれギルドから遠ざけられる。
その隙間を冒険者達が埋めていく。
しかし、ほぼ3人が働き、冒険者達はただの埋め合わせ要員と化している。
「はぁ、ジェジェンとタマ様が動いてくれれば、もっと早く終わるでしょん?」
「この騒動の原因が分からないからねぇ。下手にあの人達出すと面倒になりかねない。ギルドの防衛はしてくれてるんだ。文句は言えないよ」
ナラルスとエリマが話す。
エリマ達の前にいた敵はだいぶ減った。
シィナが近づいてくる。
「2人とも~とりあえず反対側を見に行きましょ~。ここはお願いしたから~」
シィナの言葉に2人が頷き、移動を開始する。
反対側も乱戦状態だった。
「すごいことになってるねぇ」
「仕方ないわよ~。強い子達は東門や街中走り回ってるんだもの~」
ベテランと言われる冒険者達は、防衛や救助に動いている。
だからここにいる冒険者は中級レベルの者が多く、突出した戦力がいないのだ。
「さて、行きましょうかねん」
「そうだねぇ」
「ナナキちゃん達は大丈夫かしら~」
シィナの言葉に2人も考える。
「大丈夫じゃないかねぇ。なんだかんだで強くなってるよ。あの2人は」
「そうよねん。それにあの子のことだものん。また、面白い子見つけてるわん」
「それもそうね~」
2人の言葉にシィナも納得する。
3人は反対側の戦線に参加する。
「さて、行こうかねぇ。ナナキ君達に先輩面出来るように」
「早くお魚仕込みに行かなくちゃん」
「私の癒しを~返せ貴様ら~」
3人の活躍は、それを見た多くのプレイヤーにNPCとの関わり方を考えさせるきっかけにもなったそうだ。
時はまた少し遡り、西門付近。
やはり西門にも敵が攻めてきていた。
「くっ!何としても死守せよ!敵を入れるなぁ!」
傭兵と見られる者達が門を開けられないように全力を尽くしている。
しかし、門の内外から攻めてくる状態に限界を迎えつつある。
隊長と思われる衛兵は部下に檄を飛ばすも、内心申し訳ない気持ちになっている。
(敵は内外にいる。撤退を決めても結局どちらかを突破せねばならん。ならばこのまま戦っても結果は変わらん、か。タイミング誤ったな)
「……すまん。もはやどちらにも逃げられん。出来る限り、敵を減らす」
隊長の言葉に部下達が覚悟を決めて頷く。
「おやまぁ。かっこづけ時に来てしもたなぁ」
突如、女性の声が聞こえてくる。
全員が驚き、声の主を見る。
そこにいたのは黒髪を横兵庫に纏めて簪を挿している和服の女性。胸元を着崩しており遊女のイメージを持たせる。黒い狐耳と狐尻尾が目に入る。
衛兵が剣を抜き構える。
それを狐女はコロコロと笑う。
「安心しぃ。うちらは救援に来た冒険者ですわ」
狐女は胸元からギルタグを取り出す。
それを見て警戒は続けるも、剣を収める。
「どうやってここに来たかはともかく、増援か。助かる」
「それでなぁ、お願いがあるんよ」
隊長が礼を言うと狐女が本題を出す。
「なんだ?」
狐女はにっこりと笑い。
「門が邪魔やから、開けてくれへん?」
その言葉に空気が凍る。
全員が唖然とする。
衛兵の1人が怒鳴る。
「ふざけるな!なんのために我々が戦ってきたと思っている」
「あんさんらが頑張りはったからや」
狐女はさらっと返す。
「門、壊されたぁないんやろ?ほなら簡単や。開けてしもたら壊されへん。あんさんらだけやったらともかく、街の中から救援に来たうちらやったらただ外に押し返すだけ。な?簡単やろ?」
コロコロとまた笑う。
確かに言ってることは理解できる。しかし納得は出来ない。
「……本当に行けるのか?」
隊長が聞く。
部下がその質問の真意に気づき、目を見開く。
「この程度であかんなんて言うてたら冒険者名乗れませんわ。空船に乗った気で任せなはれ」
はっきりと答える。
「……分かった」
狐女は笑顔で頷く。
「ほな。すぐに頼みますわ。うちのもんがお腹減らして待っとるよって」
狐女は窓から降りようとする。
「待て!…お前の名は?」
狐女はきょとんとし。
「あぁ。名前言うてませんでしたなぁ。【虎玄楼】の紅玻璃言います。ほな、よろしゅう」
蕩ける笑みを浮かべながら紅玻璃は窓から飛び降りた。
紅玻璃が交渉を済ました頃には、門の内側の敵はほぼ全滅していた。
門の目の前に人影がある。
「まだ開かないネ?」
「見てぇですな」
「大将。暇っす」
「……こっちが開けるか、向こうが開けるかの違いだ。開くまで待て」
そこにいたのは黒い装備の集団だった。
その中で特に存在感を放つのは4人。
長い白髪に黒いチャイナドレスを着ているダークエルフの女性。
巨体で灰色の肌に黒い重鎧を着ており、サイの顔を持つライカンスロープ。
黒い軽装で背中に黒翼を持ち、顔に黒い嘴状の被り物をしている鴉を思わせるビーストマン。
そして、上半身はほぼ何も身に着けずに黒い毛皮を持つ虎の顔をしているライカンスロープ。
全員が強者の風格を放っている。
この集団をまとめる者達である。
「お?姐さんが降りてきたっす」
鴉男が外壁の上を見て言う。
全員が上を見ると、大きな折鶴に乗って降りてくる紅玻璃がいた。
紅玻璃が4人の前に降り立つ
「お待たせ。そろそろ開くよって。準備しぃや」
その言葉に全員が殺気立つ。
それを見て紅玻璃が苦笑いする。
「犬の方がお利口に待てが出来そうやなぁ。童ばっかりや」
ボヤいたと同時に門が動き始める。
紅玻璃以外の全員が武器を構え、今か今かと合図を待っている。
「ダガン」
「おう」
虎男が名前を呼ぶ。サイ男が返事をする。
「行け」
「応!」
たった一言。ダガンはそれだけで走り出す。
走りながらダガンは背負っていた狼牙棒を抜き、開いていく扉に向かってタックルする。
その後ろから仲間達が付いていく。
開いている門の向こうに敵が見え始めた。
敵は突っ込んでくるダガンを見て硬直している。
仲間が開けたと思っていたのだ。
「【タックル・インパクト】!」
ダガンが肩から突撃し、敵集団を吹き飛ばす。
その後ろからダークエルフの女が飛び出す。手には棍棒を持っている。
「次手はもらうネ!ボス!」
「レイツォン。勝手に突っ込むなと何度もって聞いとらんか。はぁ」
ダガンがため息を吐く。
レイツォンは棍棒を振り回して敵を倒していく。その顔は笑っている。
彼女は戦闘狂である。棍棒で殴り、蹴りを放ち、殴り飛ばす。
その間、全く足を止めない。
「レイツォン。左のトロールをやれ。雑魚は他にくれてやれ」
「アイヤー!好きヨ!ボス!」
虎男に指示されたレイツォンはトロールを見据えて、棍棒を投擲する。その後、ダッシュする。
棍棒はトロールの鳩尾に命中し、トロールは悶える。
その隙にレイツォンは接近し、飛び膝蹴りを顎に叩き込み、そのまま無手で連撃する。
「ハイー!ホォアチィチィチィチィチィチィチィィ!!」
拳と脚による連撃をトロールに叩き込み、トロールは顔を数倍に腫らして倒れる。
棍棒を拾い、次の敵を探そうとしていると後ろから敵が襲い掛かる。
レイツォンは振り返りざまに攻撃をしようとすると、空から黒い影が飛んできて敵を切り裂いた。
「ジョア!アタシの獲物盗るのダメヨ!」
「お前が言うなっすよ。突貫女」
ジョアと呼ばれた影は鴉男だった。翼を広げて空を飛び、両手には子母鴛鴦鉞を持っている。彼は鴉のビーストマンだ。鳥タイプのビーストマンもレアであり、飛行はかなり訓練が必要であり不人気な種族だ。
飛行は上昇・下降・旋回は頭の中でコントローラーを使うようなもので、飛ぶだけならまだしも飛びながらの戦闘は頭の処理能力が高くなければ、墜落するか攻撃が全く当たらない。
βテストで鳥人を選んだプレイヤーがそれに挫折し、それを攻略サイトに書き込んで広まったため、翼がある種族は避けられているのが現状だ。
ジョアはそのことを知っていたが、根っからのゲーマーでもあり、その難しさに挑戦したかったのと飛びながら戦いたいと思っていたから鳥人を選んだ。「確かに飛ぶのは慣れるまで時間がかかったが、慣れれば後はそんなにつらくなかったっす」というのがジョアの言葉である。
その飛行戦闘力は、ジョアをクラン幹部にするほど高いものであった。
実際に同じ幹部であるダガンやレイツォンもジョアとの戦闘では負け越している。
「指揮官はあいつっすね~。デカいのは大将やレイツォンに任せるか」
ジョアは指揮官を見つけ、真上まで飛行し急降下する。
「頂きっす。【シャープ・アサルト】」
ジョアの攻撃は指揮官の首を簡単に斬り飛ばす。
魔法や矢が飛んでくるが、再び上昇して躱す。
次のターゲットを探そうとするが。
「ん?姐さんが動くっすか。じゃあ大将も暴れるっすね。俺は逃げ出す奴がいないか見とくっすよ~」
そう呟いてジョアは飛行を続ける。
「紅玻璃。お前もそろそろ働け。連中、俺が出る前に逃げ出しそうだ」
「あらら。これだけ張り切っといて今更?まぁ、お前様のお相手は小鼠程度やと務まらんか」
コロコロと紅玻璃は笑う。
それに虎男も軽く笑う。
「フン。ならば追い込めば何か起こるかもしれんな。窮鼠猫を噛むというのを試してみるか」
「どうやろなぁ。猫ならともかく、噛みつくのは虎やよって。噛みつかれても気づかんのと違う?バサラの御名は伊達やおまへんやろ?」
虎男、バサラはフンッと鼻で笑い、顎で「やれ」と命じる。
それにまた紅玻璃はコロコロと笑い、前に出る。
胸元から札を数枚取り出し、扇を広げる。
札を投げ捨て、歌うように言葉を紡ぐ。
「『迷えや迷え。歩けど歩けど着けはしない。始めと終わりは同じとこ』【閉方迷路】」
札が弾け散ると黒い幕のようなものが四方を囲む。
敵は驚き、幕の外に出ようとするも気づけば幕の中に向かって走っていた。
何度やっても外には出られない。
閉じ込められたことを悟った。
さらに声が聞こえる。
「『おいでませやおいでませ。遊べど遊べど飽きはしない。私の遊戯はお前の遊戯』【式鬼友戯】」
札が2枚光り、幕の向こうに消える。
ズシャ。ズシャ。
幕の向こうから足音が聞こえてくる。
現れたのは異形の鬼。片方は赤い鬼。頭と胴体が一つになっている。もう片方は緑色の鬼。こちらも頭と胴体がくっついている。両鬼とも大きな包丁のような刀を持っている。
「軽く遊んであげや。【朱離鬼】【翠合鬼】」
紅玻璃の言葉で両鬼が叫び、敵に攻撃を仕掛ける。
後ろに下がろうとすると。
「【虎剛拳】」
数人がまとめて吹き飛び消えていく。
バサラが拳を構えて歩いてきている。
敵は前門の鬼、後門の虎と理解し絶望する。
「少しは抗え。諦めた奴など命を持つ価値などないぞ」
バサラが敵に向かって言う。
この時点で、降伏も意味はないことを悟る。
「あぁぁあぁ。うわああぁぁぁ!!」
1人が泣きながら剣を振りまわしてバサラに向かう。
バサラはそれを見て、鼻で笑う。
「ふん。よく動いたと思うが、それではせっかくの機会を無駄にしただけだ。【爪技《破斬》】」
バサラは剣ごと敵を切り裂く。
それに慄き、バサラから離れると今度は鬼達が刀を振るう。
「あ~あ。あれはもう楽しめないネ」
「まぁ、所詮は数とトロールに頼っていた雑魚だからな」
「いやぁ、流石にこれをやられて前向きでいられる奴は少ないっしょ」
ダガン達はバサラ達を遠巻きで見ていた。
流石にこの状況では敵も錯乱状態で、紅玻璃が術を使った時点でほぼ自分達の周りの敵は殺し尽くした。
バサラも飽きたのか。一気に爪を振るい、敵を全滅させる。
それを確認して紅玻璃が術を解き、式鬼を還す。
「これでここは終わりだな。次はどこに行くか」
「ジョア坊。空飛んで、どこが遊べそうか探してくれへん?旦さんはまだ肉が欲しいみたいやわ」
「うっす」
バサラは次の戦場を考える。それを聞いた紅玻璃はジョアにバサラが満足しそうなところが残ってないか探すように伝える。
ジョアが飛び上がり、偵察に行く。
一行はとりあえず門の中に入る。
紅玻璃は衛兵に門を閉めても構わないことを伝える。
バサラは次の戦場を目指して彷徨う。
バサラの爪は血で赤く染まっており、戦いが終わるまでずっと血に濡れており、戦いが終わっても爪が赤く染まったままだった。
それを見た周りは彼のことを【血爪】と呼び始めた。
その呼び方に込められた感情は敬意か……または恐怖か。
北門付近。
様々な者が走り回る中に、その者達はいた。
「はぁ。この騒動なら裕南も分かりやすい行動に出るかと思ったが。それどころじゃねぇな」
「私たちも満足に動けなくなりましたね。敵が多すぎます」
「とりあえず、人が集まっているところに行くぞ。ここにいるよりは見つかる」
話しているのは3人の男女。裕南の親友達だ。
長身で明るめの茶髪な犬のビーストマン。中島 潤ことNJ。背中には剣と盾がある。
NJほどではないが、そこそこ長身で金髪ロングを後ろで縛っている目つきの悪いエルフ。杖を持ち、マントを羽織っている男性。福永 尚ことオアン。
白髪をツインテールにしているダークエルフの女性。スタイルはかなり良く、軽装のため胸の大きさが目立つ。コラムビという鎌状の両刃の短剣を腰に2本差している。中島 綾ことアヤナ。潤の妹だ。
3人はDTOを始めてから、クエストをこなしながらナナキを探していたが、手掛かりすらない状態である。
気になる者に声を掛けたりしているが、ことごとく外している。
どうしようかと悩んでいるときに、この騒動が起きた。
3人はナナキがこの騒動に何もしないわけがないと考え、チャンスと思い行動するも、敵が多くて捜すどころではなくなってしまった。
「で?どこに行く?オアン」
「そうだな。ギルドに向かうぞ。そこなら近いし、あいつもいる可能性が高い」
NJがオアンに尋ねて、方針を決める。
「では、行きましょう。先輩に早く会わなくては」
アヤナが動き始める。
2人も後ろに続く。
しかし、移動開始して早々敵と遭遇する。
「邪魔な奴らだな!【フォース・セイバー】!」
「文句言う前に働け、NJ。『水よ。刺し貫け』【アクア・ランス】」
「【クイック・ステップ】【シャドウ・ファング】」
3人は一点突破で進んでいく。
しかし、進んでも進んでも敵が前から現れる。
後ろにも敵がいるため、次第に囲まれていく。
「あぁ!もう!先輩との再会を邪魔しないでください!この屑共!」
アヤナは罵倒しながら敵を切り裂く。
「ダメだな。さすがにこれ以上は進めん。どうにか耐えるぞ」
「マジかよ。この数はつらいぞ」
オアンは抗戦を覚悟するも、NJはやや呆れている。
それでも、NJは真っ先に敵に突撃する。
オアンも詠唱を開始する。
「こっち来いよ!【ウェーブ・スラッシュ】!」
NJは剣を振り、衝撃波を飛ばす。
「『岩よ。押し貫け』【ロック・スパイク】」
オアンが魔法で地面から岩槍を大量に生み出して、敵を突き刺す。
3人はどんどん敵を倒していくが、増えていく数の方が多い。
魔力も切れてきて、体力も限界に近付いてきた。
「…どうすんだよ?もうきついってのも超えてんぞ」
「どうにもならん」
「はぁ、はぁ。先輩が大神殿にいてくれることを願いましょう。……は!?もしや、先輩は大神殿で神様をしているのでは!?」
「「ねーよ」」
疲れのせいか、アヤカが壊れてきているようだ。
敵がにやつきながら近づいてくる。
3人は壁に追い詰められていく。
ドォン!!
「「「「なぁ!?」」」」
突如、敵の後方から砂塵が舞い、地響きが轟く。
さらに、続けて敵数人が空を舞う。
「おらおらおらぁ!弱いものイジメは許さんぞ!」
猛攻しているのはドワーフの女性だった。最近流行りの少女のような姿のドワーフだ。
青色の髪をポニーテールにし、司祭服を着ている。しかし、振るっている武器がおかしい。
長柄の先端には両刃の穂先、穂先のすぐ下には四方に月牙、さらに月牙には鎖で繋がれた分銅がある。混天截という武器だ。
それを軽々と振り回している。
司祭服には絶対に合わない武器である。
その隣にはもう1人女ドワーフがいた。
オレンジ色のウルフカットで一本のおさげにしている。肌は褐色で、服装は和装。武器は薙刀を使っている。
「オクリ。暴れすぎ。」
「大丈夫だぞ!蘭羅!まだまだ元気だぞ!」
2人は敵をボコボコにしていく。
NJ達はそれを唖然と見ている。
敵はそれを見て逃げ出していく。5人は追撃しなかった。
「大丈夫だった?回復してあげるぞ!『手広く癒せ』【エリア・ヒール】」
オクリは広域回復魔法を使用する。
NJ達は8割ほど回復する。
「ありがとう。さすがに諦めてたとこだ」
「気にしない。たまたま」
NJは礼を言うが、蘭羅は淡々と答える。
オアンは2人に尋ねる。
「お前達はこれからどこに?」
「僕達は大神殿に行くところだぞ!」
オクリの答えにNJ達は残念そうにする。
それを見て蘭羅が付け加える。
「ギルドは、ほぼ防衛圏を構築。今なら問題なく行ける」
蘭羅の答えにオアン達は礼を言い、ギルドに向かうことにする。
「助かったな」
「ええ。運がいいですね」
「この運の良さで裕南が見つかればいいがな」
しかし、残念ながらナナキはギルドにおらず、3人は見つけることは出来なかった。
3人がナナキに会うのは、いつになるのだろうか。
オクリ達も移動を再開する。
「オクリ」
「何だ?蘭羅」
「大神殿はもういい」
「あや?じゃあどうする?」
「……農業部。あっちもそこに行く」
「じゃあ、決まりだぞ!」
2人は農業部に向かって方向転換する。
2人が通った後は、クレーターが多く見られた。
街のはずれに掘っ立て小屋が並んでいる地区がある。
スラムである。
「ここがスラム。ここが一番怪しいわよね。…どうやらスラムの住人も、敵側に参加しているみたいね。ここで確定かしらね」
「まぁ、自分達が成り上がれる可能性はあるからねぇ。今の行政に恨みもある奴は多いだろうし」
「だが、ほっとくわけにもいくまい。もはや、ここまでしたら遅いか早いかの差よな」
「胸糞悪いのは変わらへんけどな」
「…………」
そこにいたのは5人の冒険者だ。
スラムの様子を見に来たようだが、ならず者だけではなく、スラムの住人も武器を構えて冒険者を睨んでいる。
「さて、どう動きましょうか」
仲間に相談を始めたのは、狼のビーストウーマン。髪も耳も尻尾も銀色で、腰には2本の剣が差さっている。
「そうよな。どうにもあやつらを倒さんと探すに探せんだろう」
答えたのは蜥蜴頭の男。蜥蜴のライカンスロープでバルデッシュを持っている。
「でも、スラムの人達倒しちゃうと、ほんとに全面戦争だよ?」
疑問を呈すのは、黒髪サイドテールのエルフ。背中に弓を携えている。
「さすがにこのメンツでは無理やな。心中は嫌やで」
関西弁で話すのは、金髪でヒューマン姿の男性。杖を持ちローブを着ている。
「……」
ずっと黙っているのは、黒髪でヒューマン姿の男。こちらもローブを着ている。
「けど、もうバレてるからね。しかたない。ここで粘ってみようか。あの子が探しやすいように」
狼の女性がいうと全員が頷く。
全員が武器を構え、歩き始める。
敵はすぐさま突撃を仕掛ける。
「はっ!冒険者様ってのはこんな肥溜めまで、潰しに来るのかよ!ごくろーなこったなぁ!」
男が5人に対して吠える。
「あなた達がここに現れなかったら、何もしなかったわよ。【フラッシュエッジ・スラッシュ】」
狼女は切っ先両刃のサーベルを2本、巧みに操りスキルを使い、敵を切り裂く。
そして声を上げる。
「私の名はホーミ!冒険者として、この街を守るために、悪を匿うものは斬る!死にたくない者は今すぐ、武器を捨てて引きこもりなさい!」
ホーミの言葉に、スラムの住人が怯む。
それをならず者が威嚇して戦わせる。
「『水で押し流せ』【ウォーター・ウェーブ】」
「『迸れ』【サンダーボルト】」
後衛2人が魔法を使う。痺れさせて倒れさせる。
その隙をホーミが突き、ならず者のみを倒している。
「リエナ!敵を近づけないでね!」
ホーミがエルフの女性に指示を出す。
「簡単に言うなぁ!矢が足りないよ!そんなの!」
リエナは文句を言いながら、矢でけん制する。
「おぉ!ガリリガンがお相手致す!」
蜥蜴男のガリリガンが駆ける。
敵も斧で薙ぎ散らしながら、走る。
走っていると目の前に壁があり、行き止まりだった。
後ろの男達が笑う。
壁が迫って来るが、ガリリガンは速度を落とさない。
壁を破る気か?と全員が考えたとき。
ガリリガンが壁を垂直に上る。
「「は?」」
後ろにいた全員が固まる。
ガリリガンは飛び上がり、体を捻りながら斧を叩きつける。
「我は蜥蜴故、壁とて床なり。【クラッシュ・バスター】」
敵は衝撃で吹き飛ばされる。
ガリリガンは敵に突っ込みながら、壁走りをする。
「【スウィング・インパクト】」
壁を走りながら斧を薙ぎ、衝撃波を飛ばす。
縦に衝撃波が走り、地面を抉りながら敵を数人斬り飛ばす。
ガリリガンはホーミ達に合流する。
「なんとかいけそうですかな?む?ピカロ殿!上だ!」
「あん!?自分でなんとかせぇや!それぐらい!『吹き飛ばせ』【ゲイル・シュトローム】!」
関西弁の魔術師ことピカロは文句を言いながら、上から飛んでくる岩に向かって風魔法を当てる。
岩は風で押し戻され、敵陣に落ちる。
岩が飛んできた方向を見ると、トロールがいた。
「あいつかいな!ドド!お前も飛ばせや!」
「……『穿ち焼け』【フレイム・ランス】」
もう1人の魔術師のドドは、ピカロの文句に魔法で答える。
炎の槍がトロールに刺さって焼く。
トロールが倒れる。
「流石にトロールまで出てきたらキツイで」
ピカロがぼやく。
しかし、それは周りも同意見だった。
「まだかしらね」
ホーミはスラムの奥を見ながら呟く。
すると、スラムの中から黒い煙が見えてくる。
「か、火事だ!あの小屋が燃えてる!」
「なに!?早く消せ!まだ仲間がいるんだぞ!」
男達が慌て始める。
「どうやら成功したみたいやな」
「おまたせ」
「リヴィス。お疲れ」
ピカロが言うと、5人の近くに人影が近づく。
現れたのは、茶色の体毛をしている狐のライカンスロープの男。リヴィスである。
「とりあえず、確定したのは1か所。火をつけて催涙弾投げつけてきたから、しばらくは増えないと思う」
リヴィスの言葉に全員が頷く。
「どないする?いっぺん下がるか?」
ピカロが尋ねる。
「そうね。リヴィス、今の情報を掲示板に載せといて」
「了解」
「じゃ、撤退!弟を捜すわ!」
「だから。弟君の種族とか名前も分かんないじゃん」
ホーミ達は撤退を決め、ホーミが決意を述べる。
それをリエナが突っ込み、周りも呆れている。
「全く、弟君としゃべらなくなって寂しいなら素直に言えばいいのに。わざわざ私の家に泊まりに来てまで、黙っとく必要ある?明日、家に帰った時どうすんの?」
「どうやって伝えていいか、分かんないんだもん!」
リエナの言葉にホーミが拗ねる。
ホーミは移動を始め、周りはやれやれと付いていく。
「どこにいるのぉ…?裕南ぁ」
一方、ナナキ達は農業部を目指していた。
相変わらず、ナナキ達は白蓮の腕に抱えられていた。
しかも、途中ではリヴァランやラドンナ、アガタも交代で2人を抱えていた。
すると、ナティにコールが入る。
「ニニャから連絡ですにゃ。農業部にも敵が出て、人手が厳しいみたいですにゃ!」
「では、そこだな」
「急ぎましょうか」
全員が頷き、農業部を目指す。
「「ฅ(・Д・^)ฅ===ニャアァァァー!」」
「どうしたんだい!?」
「アピールしとくにゃ」
「あら♪では、また失礼しますわ♪」
「「にゃあぁ~」」
「はぁ」
ありがとうございました。




