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第9話 隊服と映画と糞便臭

 京の夏は暑い。暑いというか、熱い。


 三十年近く生きてきて、これだけの夏を経験した事はあったろうか。

 日野の夏は涼しく、江戸でも暑いと思ったが、海が近いからか、京ほどの逃げ場のない暑さではなかった。

 京の人達は毎年こんなのを耐えているというのか。

 拭いても拭いても汗が噴き出してくる。


 壬生浪士組も徐々に市中の取り締まりという役目に慣れ、また京という街にも慣れてきた。

 来た当初は完全に「おのぼりさん」であり、市中で声を掛けるのも気恥ずかしく、非番の時もどこへ行っていいのやら中々分からなかった。

 近頃はそれぞれに行動範囲も増え、少しずつこの都の雰囲気を掴めてきているところだ。


 巡察でも色々な所へ出回るようになって、京の街が随分おかしな事になっている事に気付いた。

 映画館やゲームセンター、アウトレットモールにスーパー銭湯…。

 どうなってやがるんだ、この街は。

 江戸ではこんな状況になった事がなく、俺一人の恫喝で解決出来る話ではなかった。

 会津藩に通報し、すぐに営業を止めさせて建物を叩き壊していたが、雨後の筍のように、気付くとまたどこかに時代にそぐわないものが出来ている。


 江戸っ子は流行りものが大好きで、どちらかというと京の人間は保守的な印象があったが、どうもそうじゃないようだ。

 どこからかもたらされた未知の技術や文化を、思いの外楽しんでいるように映る。

 だから、俺達が出張ってゲームセンターを潰したり、携帯電話を取り上げると、口には出さずとも露骨に嫌な顔をする。


「帝の御膝元だからね、幕府にはあまりいい印象のない土地柄なのかもしれないよ」


 山南さんはさらりとそう言う。

 それは俺も感じている事ではあった。


「だからと言って、あんな不埒な物が歴史ある都にボコボコと立ち上がるのを黙って見ている、というのもおかしいとは思わんか?」


「『敵の敵は味方』、どうも長州などの浪士達の方が、僕達よりも受け入れやすいようだ」


 こちとら敵になったつもりはさらさらないし、むしろ京市民の為に日夜動いているつもりなのだが、そんな俺達の心意気は伝わらないようだ。


 それどころか、最近は悪い意味で俺達壬生浪士組の名前が売れているようだ。

 一つには市民が持っていた物を問答無用で取り上げていくからだ。

 大枚を叩いて手に入れた物を力ずくで奪っていくのだ、いい顔をする奴がいないのは分かるが、こちらからすれば当然の事だ。


 もう一つは芹沢が作ってきた『隊服』だ。

 ある日「呉服問屋に仕立てさせた」と言って人数分の羽織を持ってきた。

 芹沢が持ってくるものだから、どんな代物が飛び出すかと思ったが、意外や意外、普通の羽織だった。

 ただ、色と柄が普通ではなかった。


「こ、これはッ!」


 その柄に興奮したのは、芝居好きの源さんだった。

 青よりも少し明るい浅葱色に染められて、袖の部分は鋸型に白く染まっている。


「この『ダンダラ』は、赤穂浪士じゃねえか!」


 この鋸型の袖は赤穂浪士が吉良邸討ち入りの時に揃えて着けていた、と言われ、芝居や歌舞伎好きからすれば垂涎の柄らしい。

 まあ討ち入りなんてする時に、こんな目立つ格好をしていたとは思えないのだが。


「せ、芹沢局長は、これをワシに着てもいいと?」


 今にも泣き出しそうな顔で源さんが聞くと、「当たり前だ、何の為に人数分揃えたと思ってんだ」と芹沢は鼻で笑い、源さんはその場で泣き崩れた。

 馬鹿か。


「中々派手な色ですな。これには意味が?」


「おうよ」


「切腹裃の色ですね」


 山南さんは自信ありげに答えた。

 「何それ」と首を傾げる左之助に「切腹裃というのは、赤穂浪士が切腹に際して身に付けていた裃で…」と説明をしていた。


「違げえよ」


 バッサリと切り捨てる芹沢に、山南さんは開いた口から言葉を飲み込んだ。


「これはな、スカイブルーだ。水戸天狗の新曲『SKY』に合わせた色だ。いいだろう。PVも取るぞ」


 はあ、さいですか。

 しかし、只で揃いの羽織がもらえるのは、特に異論はない。

 柄に関しては悪趣味だが、やはり揃いで何か身に付けておいた方が、分かりやすいし混戦となった時に判別しやすい。

 源さんは咽び泣き、山南さんも半べそを掻きながら左之助に「切腹裃」とやらの解説を続けていたが、俺は「有難く」と一言だけ声を掛けて、引き下がった。


 芹沢が持ってきた次の日からその隊服を着て活動する事になったが、まあこの隊服が目立つ目立つ。

 芹沢が「スカイブルー」と呼び、山南さんが「切腹裃」と言い張る浅葱色は、染料が安いからか『田舎侍・貧乏侍』の代名詞とされ、俺達が通りを歩くと街行く人達が避ける。囁く。指差す。

 そんな奴らが色んな物を没収していくもんだから、いい評判が立つはずがない。


 巷では壬生村から来た狼、という意味で『壬生狼』と渾名され始めたらしい。

 警察行動をするのに制服があると、ある程度抑止力になるとは思う。

 ただ、後ろ指を差されながら悪趣味な羽織を着続けるのも、なんだか嫌になってきた。


「好かれる為にやっている訳ではないからね。仕方ないけども、少し悲しいね」


 山南さんは壬生浪士組の中でも柔和な性格で、近所の人達にも親切に接していた。

 お蔭で「あの男だけは信用できる」と噂されるようになっていた。

 残念そうな表情を見ると、どうもただ親切にしているだけではなくて、山南さんなりに俺達の存在を認めてもらえるように心証を良くしようという気持ちからなのかもしれない。


「土方くん、ここはひとつ、敵情視察に行かないか」


「どういう事だ?」


「君が忌み嫌うオーバーテクノロジーを使って、浪士達は京の市民達の心を掴み、また倒幕活動の資金をせっせと稼いでいる」


「お、おうばぁ…?」


「しかし、何故これほどまでに京雀達は彼らの提供する新しい技術の虜になってしまうのか?ただ目新し

いから飛びついている、と断ずるのは如何なものかと思う。それは我々がまだ彼らの技術の本質を知らないからだ」


「つまり、どうするんだ?」


「孔子の言葉に『彼を知り己を知れば百戦殆からず』という言葉もある。ここは実際に彼らのテクノロジーの一端を体験しに行こうと思うのだが、どうだろう?」


 山南さんのこの提案に、俺は少し裏切られた気がした。

 あんたもか。馬鹿ばかりやらかす試衛館の連中の中にあって、俺は山南さんと斎藤だけはそんな事はしない、と全幅の信頼を置いていた。


「そんな事が出来る筈がない。普段からみんなに『そういう事は止めろ』『ぶった切るぞ』と豪語してる俺だ。ましてや法度も作って『破ったら切腹』とまで決めたんだ。だいいち、俺はああいうものは、虫が好かねえ」


「気持ちは分かるが、『知らない』という事は、これほど怖い事はないと思う。こないだの『フランダースの犬』の件だって、土方くんが知らないから判断を躊躇してしまったんじゃないか」


「グッ…!」


 それを言われると何も言い返せない。

 俺は山南さんに言われるがまま、しぶしぶ新しく出来た映画館に一緒に行く事になった。

 何だか山南さんに言い包められた感じがあったが、ままよ。

 理屈は間違ってない。


 隊服はもちろん脱いでいく。

 そして、他の隊士にばれないように気を付けながら道中歩いた。

 それにしても隊服を着ないで歩くだけで、痛い視線を感じない。

 あれを着て外を出歩く事がなにがしかの罰のように思えてきた。


「ここだ」


 島原の近くに建てられたその映画館は、何とも落ち着いた佇まいで、洋風な外装ではあったが、時代を間違った、という程の違和感も感じず、「こんなもんか」と思った。

 しかし中に入って唖然とした。

 キラキラと眩しい程の照明に、フワフワ柔らかい床、受付の上には大きな電光掲示板があり、映画の上映時間を知らせている。

 さらに受付の前には場内の座席を表示した操作盤があり、自分で好きな座席を選べるようになっていた。


「なんと破廉恥な…。ぶっ潰してやる」


「いけないよ土方くん。今日は偵察なんだから、後日しかるべき対応を取ろう」


 山南さんはそういって、映画館の中を見渡した。

 様子としては、おそらく初めて来たようだった。

 こういうものが好きというより、単なる好奇心みたいなものだろうか。

 それも一人で来る勇気がなかったから、俺に声をかけた、というところか。


「どれにしようか」


「え?見るのか?」


 俺は中の様子を見たら帰るものだと思っていたが、「中身を知らずに批判は出来まい」という山南さんの言葉に反論できず、結局一緒に映画を見る事になった。

 題名はちゃんと見なかったが、宇宙を旅するような内容だった。


「僕らが毎日見ている太陽は、実は数ある恒星の一つに過ぎない。宇宙には二千億もの恒星があると言われているんだ」


 席についてから映画が始まるまでの間、山南さんは宇宙についての雑学を色々と披露していた。

 俺は「ふーん」と適当な相槌を打ちながら、周りを見回した。

 続々と客が入って、満席に近い。

 俺達は目立たないように後ろの方の席にしたが、俺達の前後左右も席が埋まって、すし詰め状態と言っていい程であった。


 ブーッと音が鳴って、場内が暗くなり映画が始まった。

 七人の乗組員を乗せた宇宙貨物船は、小惑星に着陸。

 エンジンが故障し、修理の為に一日ほど滞在する。

 小惑星を探検する中で見つけた卵から謎の生物がヘルメットにベチャッと。


「ヒッ!」


 隣で山南さんが甲高い声を上げた。

 見ると青ざめた顔でガタガタと震えている。


「おい山南さん、大丈夫か?」


 宇宙の話、というよりこの映画は宇宙を題材にした怪談噺のようなものだろう。

 そういえば山南さんはその手の話が大の苦手で、左之助や新八が夜にそんな話を始めると、そそくさと立ち去って居た事を思い出す。


「いや、まだ大丈夫だ。大丈夫大丈夫…」


 何だか俺に言っているような、自分に言い聞かせているような、山南さんはブツブツと「大丈夫」と連呼している。

 これは大丈夫じゃないだろ。


「山南さん、帰ろう。もう大体分かったろ」


「しかし、ここでおめおめ逃げてしまっては武士の名折れだ、僕は最後まで見るつもりだ」


「いやいや、こんなところで法度は適用しないから。うわっ、汗やべえ」


 山南さんは顔から湧水よろしく大量の汗を流している。

 足元には水たまりが出来る程だ。

 何故こんなに頑張って見続けようとするのか全く分からない。


 映画は貨物船に舞台が戻り、謎の生物が死んでしまい、展開は小康状態といったところで、山南さんだけでなく周りの客も一息ついた感じになっていた。


「ほら、今のうちだって。帰ろう、山南さん」


「どうやら山場は乗り越えたようだよ。これなら最後まで見られそうだ」


「最後までいる気かよ。てか山南さん、こんな話だって最初っから分かってたのか?」


「分かっていたら、選びはしなかったよ。しかし、『据え膳食わぬは男の恥』と言うし、ここは引き下がれないよ」


 どの辺りが据え膳なのか教えて頂きたいのだが。


 場面は進んで、登場人物達は談笑しながら食事をしていた。

 しかし、一人の男が急に苦しみ出し、喉が破れて中から血まみれの生物が飛び出してきた。


「ぎゃああああああああああっ!!」


 登場人物よりも数段大きな声で山南さんは叫び、場内の注目が俺達に集まった。


「おい、うるせえよ!集中して見れないだろうが…あれ、土方さん!?」


 この騒ぎに難癖を付けに、最前列にいた二人組がこちらを向いたのだが、声を聴くに新八と平助だった。

 こいつら、新撰組の隊服に泥棒被りをしただけの恰好で入場してやがる。

 それでばれないと思ったこいつらもこいつらだが、映画館の方も何も思わなかったのか。


「…てめえら、何でここにいるんだ?」


 俺は二人に凄んだが、何の効果も与える事が出来なかった。

 それもそうだ、俺の問いは俺自身にも返ってくるのだから。


「て、偵察ですよ。大体、土方さんこそ何やってるんですか、こんなとこで」


「て、偵察だよ」


 二人と顔を見合わせて黙り込んだ。

 掛ける言葉が見当たらない。

 そのうち「あれ、壬生浪士組じゃねえか」「何で浪士組がいるんだよ」とざわつき出した。


「何だよてめえらのその恰好は。それで変装でもしてるつもりか?」


「いやいや土方さん、今はそれどころじゃなくて、早くここから出ないと。山南さんもどうにかしないと」


「は?山南さんがなんだって…うわっ、くっせえ!!」


 急に漂い出した異臭に驚いて横を見ると、山南さんは失神して失禁して脱糞していた。

 怖いものが苦手とはいえ、ここまで酷い反応を示すとは。

 耐えられない匂いが辺りに充満し、場内の混乱は一層高まった。


「話は後だ、ここから離れるぞ!」


 俺はうんこ臭い山南さんをおぶって、新八と平助を連れて、混乱する人ごみをかき分けてその場を後にした。


「偵察って、映画館にですか?土方さんああいうの、嫌いだったんじゃないですか?」


 映画館の用心棒らしい浪士達に追われながら、平助は俺に尋ねた。

 後ろの浪士達は「まてー」「にがすかー」とお決まりの台詞を吐きながら追いかけてくる。


「…山南さんが『敵情視察だ』って言うから、仕方なく」


「じゃあ、僕らが今回映画館に行ったって事も、敵情視察って事でいいんですよね?」


 俺は不承不承と頷いた。

 本来はこんな事を認めたくはない。

 内容はともあれ、宇宙関連の映画という事は、完全に平助の趣味じゃねえか。

 しかし、同じ事をしていた現場を押さえられた今、強く出る事は出来なくなった。

 くそが。


「それにしても山南さん、泡吹いて失神してますね。カニみたいだ」


「こんなうんこ臭いカニがいてたまるか。あーくせえ」


 京の入り組んだ路地を、追手を撒くように走った。

 ただでさえ京の地理に疎い俺達だ、まして追手を撒きながら逃げる事は容易ではなく、更にガタガタ震えながら糞便臭を定期的にお届けする山南さんを背負いながら、俺はこんな真似は二度と御免だ、と強く思った。


 この一件以来、山南さんは『敵情視察』なる事を言い出す事は二度となくなった。

 余りの恐怖に身体中の水分が出てしまったようで、数日の間は干物のような肌をして、遠くをぼんやり眺めるだけだった。

 そしてあの日の事は口にすることはなかった。


 俺にとって痛恨だったのは、あのような場所に行っていた事を新八と平助に見られてしまった事だ。

 二人は「口外しない」とは言っていたが、いかなる理由でも法度を破れば切腹、と豪語していた手前、非常にバツが悪かった。

 本来なら俺や山南さん含め、処断の対象であるところだったが、お咎めなし、他言無用、という事になった。


 こんな前例が出来てしまったから、自然他の隊士への対応も緩く、温くなった。

 法度に抵触した者に関しては、幹部による詮議の上で、処遇を判断する、という事になった。


 そして今回の事を教訓に、浪士組内に監察方という役職を設けた。

 以後、敵情視察などの仕事はこの監察方に任せ、俺達がわざわざへんちくりんな物に関わらなくていい事にした。


 …はじめからこうすればよかった。


 ちなみに、俺達が騒ぎを起こした映画館は「壬生浪士組に目を付けられた」といって、どうやったのかは知らないが、次の日には更地になって跡形もなくなっていた。

 二度とする気はないが、ある意味で山南さんの『おもらし』は効果的だったようだ。

 山南さんの面目を守る為、金輪際その話題は出さないが。


 山南さんをおぶった時に付いた匂いがなかなか取れず、何度も袴を洗う羽目になった。

 袴を中庭の物干しに掛けていると、遠くから下卑た笑い声が聞こえた。

 見ると芹沢一派がこちらを見てニヤニヤしながら歩いていった。

 この野郎。

 俺は未だうんこ臭い袴を握りしめ、歯噛みした。


 芹沢一派の増長は止まらず、もはや俺達の内々の話で済まない程になっている。

 いずれ決着をつけねばならぬと思っていたが、その時は近いだろう。

 じりと焼き付く京の陽射しが、俺の苛立ちを高まらせていた。




 永倉新八は神道無念流の達人で、剣の腕で言えば近藤さんや総司にも匹敵する実力を持っている。


 はずなのだが、稽古の時にはいつもどこか真剣味がない。

 というか何かしょうもない事を企んでいるように見えた。


 新八のそのくだらない企みが陽の目を見たのは、まだ江戸にいる頃、俺との立会いの時だった。

 この時新八は上段にしても大げさな程に竹刀を上に振り上げ、「キエエエエッ!!」とわざとらしく切りかかってきた。

 俺は新八が何をするつもりなのか分からなかったが、大振りな面打ちを流して左に回り込み、胴を薙いだ。


 「一本」と検分役の総司が手をあげるのが聞こえないくらい、「ギャー!!」とこれまた大袈裟に吹き飛んだ新八はそのまま転げて道場から飛び出し、いきなりドカーンと爆発した。


「し、新八―ッ!?」


 訳が分からないながら、道場にいた全員が新八の下へ駆け寄った。

 新八の面や胴着は焦げ、プスプスと燻り、面を外すと顔は煤けて、髪の毛はチリチリになっていた。


「新八、普段お前が言ってたのはこういう事なのか?」


 新八は事あるごとに『花は桜木、人は武士』という言葉を好んで使っていた。

 意味を問うと「桜の花も武士も、散り際が鮮やかだ、って事さ。俺も死ぬ時には、桜のようにパッと鮮やかに散りたいもんだ」と腕組みしながらウンウンと頷いていた。


 …これがお前の言う鮮やかな散り方なのか?

 鮮やかというよりただただ派手だし、そもそもどうして爆発するのか分からない。


 新八がケホッと咳をすると、口から黒い煙が出てきた。


「土方さん、これが、これが武士だ」


 新八はそう言い残すと、ガクッと項垂れた。


「新八ーッ!!」


 左之助が新八を抱き抱え、わざとらしく叫んだ。

 なんだこの茶番は。

 俺は連中をほっといて、道具を片付けて部屋に戻った。


 夕餉の時間にはしれっと新八が戻ってきた。…そんな事だろうと思ったよ。


「新八、なんなんだ昼間のアレは」


 新八は俺の方を見ずに、飯をかっ込みながら答えた。


「いやいや、びっくりしたでしょう?退屈な毎日に、ちょっとした刺激をね」


「だからって、なんで爆発するんだよ。お前、俺が普段から言ってる事、忘れた訳じゃねえだろうな」


 すると新八はこれ以上ない程のキメ顔で、こちらを向いて言った。


「大丈夫、土方さんの言いつけは破ってねえから」


 じゃあなんで爆発するんだよ。

 どうゆう原理だ。

 突っ込みそうになったが、至極面倒なので放っておく事にした。


 そんな出来事を忘れかけてたある日、新八が今度は総司と立ち合った。

 総司が「ヤアッ」と気合を入れて構えただけで、何故か新八は竹刀を合わせる事なく外へと吹っ飛んでいった。


ドカーン。


「し、新八―ッ!?」


 …またかよ。

 前と同じ光景を頭に思い浮かべながら外へ出ると、新八の側に謎の女が立っていた。

 この女、俺をキッと睨んだかと思うとそそくさと出ていった。

 …このくだらない茶番劇に協力者がいるのか?

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