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第1話 土方、試衛館に怒る

 幕末を生きる若者、土方歳三は時代に合わないオーバーテクノロジー、超能力や魔法のようなファンタジー的な要素、世界観が壊れる一切合財が大嫌いであった。そんな土方を苛つかせるように、試衛館の面々は当たり前のように色んなものを持ち込んでくる。


「お前ら、世界観を壊すなよ!!」


 今日も今日とて土方の怒号が響き渡る。


 そんな中、待ちに待った浪士組結成の吉報が試衛館にもたらされる。上洛に舞い上がる面々に、土方が取った行動は?

 徳川家康公が江戸の地に幕府を開いてちょうど二百五十年が経った嘉永六年(1853)、浦賀沖に突如として現れたアメリカの黒船四隻に、江戸の町民は肝を冷やした。

 永らく続いた太平に胡坐を掻いていた幕府に、この難局を乗り切る手立てはなく、翌嘉永七年(1854)相手の要求を一方的に飲んだ日米和親条約を締結した。


 幕府の権威は失墜し、これからは幕府の独断でなく有力藩主を交えた合議で政を行うべきと考える者、朝廷を味方に付けその威光で幕府の影響力を再び強めようと考える者、更には力を失った幕府にとって代わる朝廷を中心とした新たな政治形態を考える者など、様々な思想や運動が起こってきた。

 外国に対する態度もそれぞれで、二百年続いた鎖国を守って外国勢力を追い払うべきだ、いやむしろこれからは広く門戸を開き海外の技術を取り入れて国力を増強し諸外国に対抗すべきだ、などの意見がぶつかり合っていた。

 黒船来航より混乱を極めた約十五年を、後に『幕末』と呼ぶようになる。


 これは幕末を駆け抜けた、或る青年達の物語である。


 幕末である。誰が何と言おうと『幕末』である。


 何故これ程くどくどと念押しをするように言うのか、と思うだろう。

 これは俺の一つの『決意表明』と思って頂きたい。

 つまりこの物語は、有象無象の超能力者が佐幕・反幕の二手に分かれて能力バトルをする訳でなく、タイムスリップしてきた未来人が有り得ない技術を使って無双する訳でなく、女体化した俺達が女だらけの新撰組を結成する訳でもない。


 これは幕末を舞台にした男達の物語である。

 言い換えよう。

 そうなるように俺が駆けずり回った、この俺の奮闘記である。


「いっそ流れに身を任せるのもありだったんじゃないですか?」


 ほら見ろ、俺の気も知らないで、こんな事を言いやがる奴がいる。


「だって、何だか土方さんだけバタバタと忙しなく走り回っては怒鳴り散らして、大変そうだったから」


 じゃあ、俺が流れに身を任せたらどうなったと思うんだよ。


「うーん、それはそれで楽しいんじゃないですか」


 無責任にも程がある。

 残念な事に、俺の周りにはこんな無責任な奴がわんさといるのだ。


 頼むから、世界観を壊さないでくれ。


 もう一度言い換える事にする。

 これは俺の周りの無責任な奴らが持ち込んだ厄介なものを、俺が千切っては投げ千切っては投げた、戦いの記録である。


「そんな事をいいつつ、トシもちょっとは楽しんでたんじゃないのか?」


 うるせえ、黙ってろ。ぶった切るぞ。




 黒船来航から十年。

 寒さの中にも春の匂いが近付いてくる、文久三年(1863)二月の初めのこと、俺は大きな知らせを持って、試衛館への帰り道を足早に歩いていた。


 知らせとは、予てから噂のあった『浪士組の正式招集』である。

 攘夷断行の為、江戸から上洛する将軍・家茂公に先んじ、将軍警護の任に京へ赴く為に此度結成される、浪士組。

 身分を問わず、腕に自信のあるものを集めているとの話を聞いた時、試衛館の面々は狂喜した。

 特に農民の家に生まれ育ち、『お上の為に剣を振るいたい』と、いつ叶うやも解らない大志に腕を磨いていた近藤さんは、涙を流して喜んだ。

 同じ多摩の百姓の出の俺にも、近藤さんの気持ちが痛いほど伝わっていたし、浪士組の参加は目出度い事であると、一緒になって喜んだ。


 この時試衛館にいたのは四代目宗家近藤勇、子供の頃から内弟子をしていた沖田総司、昔からの門下生の井上源三郎、そして俺土方歳三。

 残りの原田左之助、永倉新八、山南敬助、藤堂平助、斎藤一の五人は試衛館に来る前に別の流派、別の道場で剣を修めた男達だ。

 斎藤一以外は浪士組の参加を決めていた。


 俺は浪士組に参加しない事になっていた。


 近藤さんも「一緒に京で一旗揚げよう」と声を掛けてくれた。

 俺だって自分が己の才覚でどれだけの事が出来るか、試してみたい気持ちがない訳ではない。

 しかも、此度の浪士組には、試衛館の主要な面々が挙って参加するという話だった。

 総司、左之助、新八、源さん、山南さん、平助と、試衛館が空っぽになるような、天然理心流総出といっていい面子での参加である。


 じゃあ何故、俺は行かないつもりなのか。

 それは試衛館に出入りしながら、俺はみんなとの間に一線を引いていたから、と思う。


 俺は籍こそ天然理心流に置いてはいるが、正式な手順を踏んだ鍛錬をした訳じゃなく、薬の行商の傍ら、色んな道場に飛び込んでは、名も知らぬ相手と竹刀を交わすという事をして、自分の剣を作ってきた。

 だから俺の剣は『天然理心流』というより『土方歳三流』といっていいほど、近藤さんや総司の剣とは違いがある。


 それに、試衛館のにぎやかさに心地よさを感じる事もあるが、常日頃から群れる事を良しとしなかった自分が、いきなりそんな集団に入ってやっていけるのか、という不安もあった。

 一人が気楽な性質だ、というのは自分でも自覚していたし、今までの生活を投げ捨ててそこに飛び込む、という踏ん切りが付けられなかった。


 さりとて、今日寄った道場で聞いた、『浪士組参加希望者は五日に伝通院に集合』という話は、俺にとっても嬉しい話に違いなかった。

 奴らの喜ぶ顔が目に浮かび、自然と自分の頬も緩む。

 …こんな話聞いたら、今晩は大騒ぎだな。


 角を曲がり、試衛館の前の生垣まで来ると、門前に斎藤一が居た。彼は最近試衛館に出入りするようになった者で、まだ浪士組に入るかどうかは分からない。


「よお、斎藤。今しがた、みんなにいい知らせを聞いてきたんだ」


「そうですか、それは良かった」


 斎藤はニコリともせずにそう言った。

 あまり感情を表に出さない奴だ。

 こいつに言っても、あまり喜ばないかもしれない。

 急ぎの用がある、と言って立ち去ろうとする斎藤を、無理に引き止めずに送り出した。いずれ知る事になるだろう。


「あ、土方さん。今入らない方がいいかもしれません」


 斎藤は去り際に何か意味深な事を残していったが、意に介さずに玄関の戸を開けた。


「只今戻ったぞ。おい、みんな聞いてくれ、先だっての浪士組の話、とうとう…」


「おお、歳さんか。すまんが、ちょっと手伝ってくれ」


 廊下の端で源さんが脚立に上って電球を取り換えていた。


「最新のLEDっていうのか、これが巧い事付けられねえんだ、ちょっと見てくれ」


 源さんは天井に付いた器具に何かゴソゴソとやっている。

 …LEDってなんだ、聞いたことねえぞ。


 俺は源さんを無視して、茶の間の方へ向かい、障子を開けた。


「おい、聞いてくれ、浪士組が…」


「おお、トシか。おかえり」


 そこには隠居した先代の道場主・近藤周斎先生が孫娘を抱いて座っていた。

 どうやら教育テレビを見ているらしい。


「この番組を録画してえんだが、最近のリモコンってボタンが多くってよ。どこを押したらいいのか分かんねえんだ。トシ、ちょっと見てくんねえ」


 …ほお、テレビ。録画。リモコン。


「先生、みんなはどこですか」


 周斎先生の問い掛けには答えず、みんなの居場所を聞いた。


「お?ああ、道場じゃねえか」


「失礼します」


 茶の間に一歩も踏み入れる事無く、俺は道場へ足を延ばした。

 実のところ、かなり突っ込みたい気持ちを抑えている。

 それもこれも浪士組の招集という慶事を、一刻も早く近藤さんに、みんなに伝えたかったからだ。

 二度も機先を制されふがふがした心持ちと、根拠のない嫌な予感が少しずつ増えるのをグッと堪えて、道場の前まで来た。


 道場内では、稽古をしているのかドタドタと喧しい音が外まで響いていた。

 俺は思い切って引き戸を開け、大声で言った。


「お前ら、いよいよ浪士組が招集されるぞ!」


 道場には総司と左之助と新八がいた。

 何故か皆防具を付けず、ハアハアと息を切らしながら、左之助と新八は総司を挟むように対峙していた。


「ハアッ!!」


 左之助と新八が二人がかりで飛びかかるが、総司はそれをバンと右足を一踏みして弾き飛ばした。

 …なんか総司の周りに球状の光の玉みたいのが出なかったか?


「こうなったら…」


「ああ…」


 左之助と新八は目を見合わせ、頷き合った。

 次の瞬間、左之助は十六人に分身し、総司に飛びかかった。

 それに呼応するように新八は両手を臍の前で三角形に組み、「オンキリキリバサラウンハッタ、オンキリキリ…」と唱えると手の間から梵字の文字列が流れ出し、総司を取り囲んだ。

 総司は十六人の左之助を一人ひとり薙ぎ倒していったが、分身を囮に使った左之助の本体が総司の後ろから隙を突いて斬りかかった。


 ギャイーンッと竹刀同士では有り得ない衝撃音が道場に響き、一本取られたと思った総司は左之助の一撃を見切り、振り返って竹刀の腰で防御していた。

 鍔迫り合いの中、激しい火花が飛び散る。


「クッ、流石だな総司!」


「原田さんこそ!」


 伯仲したせめぎ合いの中、二人は笑顔を見せた。

 次に離れた時、お互いに決着を付けにいくのだろう。


 緊迫した空気を裂くように庭側の戸が勢いよく開いた。

 血相を変えて平助が飛び込んできた。


「大変だ、宇宙人がこの星を侵略しにきた!」


「「何だってー!!」」


 庭の方がパーッと眩しいばかりに輝きだし、広くはない庭一杯いっぱいに円盤が着陸、中から銀色の発光体が現れた。


「「う、宇宙人だー!!」」


「ワレワレハ、コノホシヲシンリャクシニ、ハルカ168000コウネンノキョリヲヤッテキタ。テイコウスレバ、オマエタチハメツボウスルコトニナルダロウ」


「そんな、そんな事はさせないぞ!」


 平助はライト○イバーを手に、宇宙人に向かっていった。

 しかし宇宙人が片手を振るっただけで凄まじい衝撃波が起こり、平助は道場の反対側まで吹き飛ばされた。


「チクショウ、このままでは、このままでは地球がっ!!」


「ハハハ、ナンジャクダナ、コノホシノセイブツハ」


 あざ笑う宇宙人。

 このままこの星は侵略されてしまうのかというその時、あの男が現れた。


「待てぃ!!」


 天然理心流四代目宗家、近藤勇だった。

 彼は圧倒的な戦闘力で地球人を蹂躙する宇宙人相手に、なんと木刀一本で立ち向かったのだった。


「お前達なんかに、この星はやらない!みんなの、みんなの力を俺に分けてくれーっ!!ウォーッ!!」


 近藤さんがそう言うと、道場にいたみんなの胸が白く光り出した。

 そしてその光は上段に構えた近藤さんの木刀の切っ先に集まり、どんどんと大きくなっていく。


「近藤さん!」


「行け、近藤さん!」


「ヤ、ヤメロ…」


 蓄積されたパワーの大きさにたじろぐ宇宙人に向かって、近藤さんは飛びかかった。


「これが、これがみんなの力だーッ!!」


「テメエら、いい加減にしろーッ!!」


 俺の怒声が全てを貫き、道場の雰囲気は元に戻った。




「お前ら、何考えてんだっ!こういうの、俺が大っ嫌いだって、知ってんだろ?あ?」


 俺は全員を道場に並べ、正座させた。

 無論、周斎先生も、銀色の発光体もだ。


「源さん、アンタ一体何やってたんだ?あ?」


 俺は木刀を肩に担ぎ、トントンと肩を叩きながら歩き回る。

 正座してる奴らは子犬のようにビクビクと怯え、下を向いたままである。


「あ、いや、電球が切れたから、さ。新しいLEDってのが売ってたから、ほら、電気代が安いって言うし…」


「そんなもの、どこに売ってんだよっ!!」


 バシィッと壁を叩くと、全員の背筋が伸びた。


「ハ、ハンズ!ハンズで買ったの!」


「ハンズだぁ?どこにそんなモンあんだよ!?おい平助、今年は一体何年だ?」


「へ?えと、宇宙世紀0083…」


「文久三年だッ!LEDなんてあるわけねえだろっ!」


 バシィッと木刀の音が響く。平助は「ヒッ!」と情けない声を出した。


「という訳で周斎先生。文久三年にテレビはある訳ないですね。あのテレビは没収します。いいですね」


「そ、そんなぁ。なあトシ、たまはアレが無いと泣き止まんのだ…」


「この時代にあるもので何とかしろ!あれは捨てる!」


 ウゥッとうめき声を出して泣き出す周斎先生。

 同情なんか絶対しねえぞ。


「土方君、もういいんじゃないかな。彼らも反省しているようだし…」


 買い物から帰ってきた山南さんが奴らを庇ったが「山南さんは黙ってろ」と怒鳴ると、シュンとなって俺の後ろで様子を見ているだけになった。


「…でだ。総司、左之助、新八」


 三人は声を掛けるとまたビクンと背筋が伸びた。


「お前らの、アレは何だ?」


 あらぬ方向に視線を向けながら、左之助が答えた。


「あーっと、超時空剣術バトル?」


 何故疑問形なのか。

 俺にそんな事が分かる訳がなかろうが。


「お前、さっき分身してたな。…あれ、今も出来んのか?」


「あーはぁ、お望みとあらば」


 左之助は人差し指を立てて口に付け、何かモゴモゴと呪文らしきものを唱えた。

 すると先程と同じく分身が十人以上出てきたので、片っ端から木刀でボコボコにぶん殴って、山積みにしてやった。

 左之助(本体)は腰を抜かして「ひえぇ…」と情けない声を出した。


「左之助、おめえは分身なんか出来ない、いいな?」


 恐怖心をそのまま形にしたような顔で、左之助は「はい」と即答した。

 新八と総司の方に顔を向けると、同じようにコクコクと頷いた。


「お前ら、世界観を壊すなよ。いつも言ってんだろ。この時代に無い物は無しだ。魔法や超能力の類も無しだって。何十遍説教垂れれば分かるんだ?あ?…で、テメェは何だ」


 俺の視線は謎の銀色の発光体に向いた。

 奴は俺の視線を感じると、ドデカい眼を左右に動かし、明らかに動揺し出した。


「アノ、ウチュウジンデス…」


「宇宙人が自分から『宇宙人』っていう訳ねえだろ!で?何でここにいるんだ」


「エート、コノホシノシンリャクニ…」


「だから何でこの時代にのこのこ来てんだよ!世界観考えろって言ってるだろ?もっと未来の地球人達とよろしくやってろ!」


 自分で考えても暴論だと思ったが、どうせ平助が連れてきたんだろう、それならば容赦は無用だった。


「土方さん、この子をどうするの?」


 平助が宇宙人とやらの前に出て通せんぼをした。

 実はこのやり取りはこれで四回目である。


「お願い土方さん。ちゃんと面倒見るから!毎日散歩にも連れてくから!」


 宇宙人をまるで飼い犬か何かと勘違いしているのか。

 泣きそうな顔で宇宙人を庇う平助の手から、ライトセイ○ーを取り上げた。

 「あっ」と声を漏らし、宇宙人の事など忘れてしまったかのように、俺から取り戻そうと必死になった。


「土方さん、それダメ!それはダメです、高かったんだから!」


「こんなモンが売ってる所がある訳ねえだろ!」


「ハンズ!ハンズで買ったの!」


「未来のハンズとやらにも売ってねえよっ!!」


 しょんぼりする平助を尻目に、俺は近藤さんの方に向き直った。


「俺の言いたい事、分かるよな?」


「はい、調子に乗りました。済みませんでした」


 近藤さんは素直に頭を下げて謝った。

 何度この光景を繰り返すのか。俺だって、当主たる近藤さんにこんな真似をさせたくはないのだ。

 本当にこいつらは俺が姿を見せないと、とんでもなく勝手をしやがる。


「お前ら適当な事ばっかしてたら、知らねえぞ!こんなんじゃ済まないのを相手にしなきゃならなくなるんだからなッ!」


 銀色の何かを無感情に蹴飛ばしながら叫んだ。

 宇宙人は「ギャッ!」と悲鳴を上げて転がったが、俺に怯えた連中は言葉一つ発しない。

 この空気を変えようと思ったか、わざとらしく近藤さんが思い出したように言った。


「そうだ!トシ、さっき何か言ってたな?浪士組がどうとか」


「そうだよそうだよ、ほら、何か俺達に伝えたかったんだろ?」


 こんな空気になってうんざりだったが、伝えない訳にはいかない。


「…浪士組が正式に招集される事になったらしい。今日行った道場で聞いた。五日に小石川伝通院に集合するように、との事だ」


 正式に試衛館にも連絡が届くはずだったが、いち早く伝えてやりたいと思って、予定を切り上げて試衛館へ急いだのだ。

 どれだけ喜ぶか、と思っていたが、もうどうでもいい気がしてきた。


 俺の報告を聞いた瞬間、大騒ぎするかと思ったが、互いに目を合わせて時が止まったように少しの間黙っていた。

 すると「ウゥ…」という唸り声と共に近藤さんの目から涙が零れだし、一人、また一人と近藤さんに泣きながら抱きついた。


「よかった、よかったよ近藤さんッ!」


「ようやく念願が叶いますねッ!」


 近藤さんは「やった、やった」と呟きながら、流れる涙を止められずにいた。

 山南さんも俺の横で嬉しそうに笑いながら、抱き合う輪を見てウンウンと頷いている。

 その光景を見て、やっぱりここで言って良かった、なんだかんだこいつらと一緒で良かった、と俺も感動して泣きそうになった。


 …良かったな、近藤さん。

 これで夢が叶うな。

 良かったな、お前ら。

 近藤さんの事をよろしく頼むぜ。


 涙を堪えるように目を閉じると、喜びの声に混じって、聞き捨てならない文言がちらほらと。

「今日はカラオケ行こうぜ」

「充電器忘れずに持ってかないと」

「京に行ったらやりたい放題だな」

 …。

 俺は本当にこいつらを信用していいのだろうか?


「…やっぱり、お前らと京へ行く」


「「え?」」


「俺も行くって、言ってんだよッ!!」


 俺がそう叫ぶと、一同ポカンとした目でこちらを見た。

 何だよ、俺が京に行っちゃあいけないとでも言うのか。


「え、だって土方さん『柄じゃねえ』とか言って、いくら誘っても乗ってこなかったじゃん」


「お前ら、俺が居ないと、知らない所で滅茶苦茶な事をしそうだからだ!」


 まさか自分でもこんな事を言い出すとは思わなかった。

 後から考えれば、どんなふざけた理由でも、踏ん切りを付けるだけの理由が欲しかったのかも知れない。


 普段から怒鳴り散らしている連中の事、嫌な顔をされるかと思ったが、「ヨッシャア!」の声と共に、目の前にあった近藤さんを中心にした塊が、こちらにそのまま飛んできた。


「うわっ、お前ら痛てえよ、はしゃぎ過ぎだッ!」


「何だよ土方さん、あーだこーだ言ってたけど、ホントは俺達と一緒に行きたかったんじゃねえか」


「そうだよトシ、水くせえよ!」


 普段一番俺の怒りを買っている左之助が、なんだか一番喜んでくれているような気がした。

 俺に抱きついて、ジョリジョリと無精ひげを俺の顔になすりつけてきた。

 分かった分かった、分かったって。

 近藤さんも同じく俺の顔にスリスリと顔をなすりつける。

 分かった分かった。

 そして新八、平助、総司、源さん…。


「もういいだろッ!しつけえよ!」


 いちいち馬鹿な奴らだ。

 だが、やはり俺はこの馬鹿な奴らが、どうにも嫌いになれないらしい。


「よーし、トシも加わって、試衛館オールスターで京へ乗り込むぞ!」


 オールスターという言い方は甚だ気に入らないが、近藤さんが声を掛けると、みんなの目にやる気が漲った。


「やってやろうぜ、トシ」


「当たり前よ」


「ワクワクしますね」


「この井上源三郎、近藤先生に一生付いていきます!」


「へまするんじゃねえぞ新八」


「こっちの台詞だ左之助」


「楽しみだね」


「それじゃあみんなで、京に行きましょう!」


 平助の一言に、みんなで声を揃えた。


「「新幹線で!!」」


「そんなモンねえッ!!徒歩だ徒歩ッ!!」


 全く持って前途多難であるが、この俺土方歳三を含む試衛館一派八名は、浪士組の一員として花の京へ上る事になったのである。

初投稿なので、勝手がわかりませんが、感想を頂けると幸いです。

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