僕の知らない我の目覚め
静寂に包まれる洞窟。人らしき影がありながら場所は変わらず、あるがままの状態を保つ。
そして少年の前には八つ首の獣が居座る。少女はただ呆然と立ち尽くすだけ。先程は興味本意の視線を向けていたようだが現状を理解することに頭を回転させてそれどころではない。
やがて少年は骸となる。怪物によって。
予定調和に合わされても、歯車には噛み合わない。
言うなれば現状 ー 砂時計をひっくり返された。
日常に非日常を持ち込むと誰もが驚きを露わにするものだ。実際少女の表情もそうであるように。
・・・・・しかし少年は気絶している。もう現実に目を背け、自らの防衛本能に身を委ねた。
静寂の時は獣の呻きで破られ、合わされた結末に向かって巨大な口を開けた。彼の頭に鼻息ぐ当たる。それくらい迫ってきている。
獣は久しぶりであったのだろうか。生肉が食べられる瞬間を待ちわびてこの時を楽しんでる。
・・・・・・じゃあ大人しく死ねと。このまま食べられていろと。
「冗談じゃない!!!???」
ここは仮想空間。ビルド・アザーワールドの中。
死ぬことなんか万の一つもありえないこと。だからモンスターに襲われても恐れずに戦い続ける。
ー死期が見えた人間以外は。
体を動かす為に体を起こそうと頭の中で叫ぶ。
だが、無情にも叫びは叫び。体は動くことはない。
真っ暗な闇に全身が引きずり込まれる。意識を覚醒させようとして抗った僕をも呑み込んで。
意識は宇宙の彼方にまで遠のいた。
「 ・・・・・・ようやく。ようやく!永きに渡る眠りから目覚めたぞ」
その時、洞窟内が激しく光り出した。それも人工灯の光じゃない。何か神々しく辺りを照らしていた。
「人間、違うな。観衆どもよ。その愚かな存在の前にもう一度見せてやろうぞ!」
彼?彼女? 威厳ある方がその手を天に伸ばす。すると声に反応しどこからか剣が降り立った。
道のりにはくっきり剣の切れ込みが入り、武器の性能を見せつけられる。
誰に対して?
剣を手にし勇猛果敢に目の前の八つ首獣に剣を振り下ろした。
・・・・・・第三者からなら。
しかしながら当人は居合の達人の如く剣を構えてるだけ。それがもし動いてるように錯覚してるのであればきっとその方の気が思わせたのだろう。
ただ幻覚と現実の時間に差など無かった。
気づいたら獣の頭が全て斬り刻まれていたのだ。
一同は自分の目を疑うものの一人眩い光を受けてる方は笑っている。
そうしてかの御方は気絶した。
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