白の女神
今回は早く投稿できました!
次回は……、早めに頑張ります!
この世界に異常が発生したあの日──
俺はレベルを上げようと、あるエリアにソロで行っていた。そのときの俺はまだ17レベルと今より弱く、まだ〔ブレイク・ザ・ワールド〕を初めたばかりだった。
なんとかレベルを上げようといろいろなエリアを巡り、効率のいい狩り場を探していた。
「まあ、こんなものか……。一人じゃ限界があるし、いい狩り場なかなかないな」
俺は〔忘者の迷宮〕という神殿エリアの最奥にいた。目の前にあった宝箱を開け、アイテムボックス内を見ながらこれからどうしようか考えていた。
「装備品か………〔ブラックコート〕、ちょっと装備してみよ!」
装備すると黒いコートだった。
「名前のまんまだな………、まぁいっか!」
そのまま装備して、ひとまずエリアを転送装置を使わず逆戻りすることにした。
「次どこ行こう。もう結構行ったしな。あと行ってないところって………ん!?」
神殿の壁が少し壊れていて、僅かにノイズがはしってしているところがある。
「行ってみるか」
なんとなく危なそうだと思いながらも、何かに誘われいる気がしていた。
ノイズに触れると俺の体にノイズがはしり、気づいた時には別のエリアに飛ばされていた。
「綺麗な所だなー……。けど、どこだろここ?」
周りは青空が広がり奥に神殿が建っていた。端の方に行って下を見下ろすとずっと下の方に、時の街〔ノージュ〕が見えて他の都市や街も見えた。
「空の神殿か……凄いな、こんな所があったのか」
神殿の扉を開けると中央に何かあったのだろう。石像の台のようなものがあった。
なんか凄い所を見つけてしまったような気がする。
中央の台に近づいてちょっと調べてみることにした。
「何だろう、この傷?………というか紋章?」
台に刻まれた紋章をよく見ようと手で埃を払おうとした。
──そう、確かに俺は埃を払おうと手を伸ばした。が、俺は気づいた時にはノージュの転送装置前にいた。
「夢だったのか?………んなはずないと思うけど」
ひとまずいらないアイテム売りに行こう。
そう思って時計塔近くにある知り合いの雑貨屋に行くことにした。
「よう、イズナ!今日はなんだ?」
彼はハーズ、外見は気のいいおっさんだ。彼はものを買ってくれたり、それを売ったりしている。
「このアイテム売りに来たんだけど、どれくらいで買ってくれる?」
俺はアイテムをハーズの前の机に出していく。
ハーズはアイテムを確認して値段を決めている。
「これだとこんなもんだけどいいか?」
安いなー。まぁいっか。
「うんそれでいい」
「交渉成立だな!なぁ、さっきから気になっていたんだがそのコートなんだ?」
ハーズが俺が着ている黒いコートを凝視する。
「ああこれ。さっき行って来たエリアにあったんだ」
「そんな装備品初めて見たぞ。情報屋の掲示板にも載って無いみたいだし……新アイテムか?」
「かもな、それじゃあ。」
「じゃあな!」
俺はハーズの店を出て、時計塔近くを歩いていた。
「そろそろログアウトしよっかな」
空は夕暮れで赤く染まっていた。
このオンラインゲームと現実は同じ時間になっている。つまり現実も夕暮れ。
えっと、メニュー、オプション、ログアウト……あれ?
ログアウトが無い、何回見ても無いのだ。
俺があれこれしていたとき、時計塔に画面が表示された。
『管理者より緊急情報
このゲーム〔ブレイク・ザ・ワールド〕に異常が発生しました。
しばらくログアウトが出来ません。また、サテラコアを無理に外すと死に至る危険性があるのでお気をつけ下さい。
なお、ただ今このゲーム内で死ぬと実際に死んでしまいます。
現在、異常の解明に最善を尽くして行っていますので、暫しご辛抱ください』
周りから『どういうことだよ!』『管理者は何やってんだよ!』『実際に死ぬってなんなの?!!』など、叫び声が響いて来た。座り込んだり、微動だにせず驚愕の表情を浮かべている人もいた。
俺も微動だにせず驚愕の表情を浮かべていた人の一人だ。
俺は混乱状態の脳を整理するために深呼吸をして考えた。
そして決めた。
とにかく今日はどこかの宿舎に泊まって寝ようと。
翌日、俺はひとまずいつも通り、どこかのエリアでレベル上げをすることにした。
混乱していて何も思い浮かばなかったから、いつも通りの行動をした。一応死なないためにっていうのもある。
俺は少しずつだったが順調にレベルを上げていたとき、レベルをもっと上げるためにあるパーティーに入った。一人の時よりレベルは上がりやすかったがアイテムなどは微妙だった。
それで俺が一人でエリアを回っていたとき一人の青年が蹲っていた。
「こんな所にいたらモンスターに襲われるぞ」
青年に近づき、俺はしゃがんで言った。
「良いんだよ別に、どうせここから出られないんだしさ………」
このとき、ほとんどの人がもうこの世界から出られないという情報を信じていた。
「それなら、この世界を楽しもう!やること無いんだったら俺のレベル上げ手伝ってくれないか?」
「楽しむたってこんな状況だぜ……どうやって?それにレベル上げたって意味なんて」
俯く青年は弱く消え入るような小さな声で言う。
俺は手を引っ張り、無理やりに立たせた。
「有るか無いかは、やってから決めればいいさ!それに、どうせこの世界から出られないなら今を楽しむしかないだろ?」
掴んだ手を引っ張り、青年を連れて回った。
最初はただ遠くで見ていた青年も次第に、モンスターに挑んだり笑うようになった。
「どうだ、じっとしているよりは楽しいだろ?」
「確かにな、じっとしているよりは楽しいぜ!ログアウトできないからって、まだ諦めるには早いよな」
「そういえば、まだ名前を言ってなかったな。俺はイズナだ!」
「俺はサカマだ!」
「じゃあサカマ、次行こうぜ!」
これが俺とサカマの出会いだった。
それから、レベルの低い人とかを手助けする仕事を始めたんだっけ。
………もうあれからどれだけ経っただろう。
「何ぼーっとしてるの!」
あぁ、面倒な奴が来た。毎度毎度、なんで話しかけてくるんだ?………はぁ、今日はどうやって逃げようか。
時計塔イベント攻略開始から約二週間が過ぎた。二週間も経つのに、まだ攻略出来たのは九階まで。
そして今回、十階にボスの部屋が見つかったらしい。攻略は明日からだそうだ。
「久しぶりだねえ♪……ねえってば!」
「いて!何すんだよ」
いきなり人の頭叩くか、普通?結構痛いんだけど。振り向いて睨むが、よけいに微笑んだだけ。
「全然こっちを向いてくれないんだから!今までどこに行ってたの?」
「着いてくるな!面倒くさい……」
「ねえ、イズナはギルドに入る気はない?」
「ないよ、そんな気。俺はソロで行く」
「時計塔の時のあれが──」
「そのせいじゃないんだ。けど、あんなもの見て最前線組を抜けた後、信頼できる仲間を作れてよかった。皮肉じゃないぞ、お前が変わらなくてよかったと……」
「わかってるよ♪」
さっきから追いかけ回しやがって……。さて、どうやって逃げるか。なんて考えてもこいつには無駄だった………。
「──と、話している間に着いたよ。ここが私のギルド、〔白の女神〕よ!」
いつの間にか誘導してやがった……。
「なぁにが、私のギルドだ!無理やり引っ張ってきといて!俺は一人、ソロでいい!」
「いいじゃん!細かいことは♪」
「細かいことって………あのな──」
「私のギルドはレベルの低い人を手助けするためのギルド」
人の話し聞いてねぇ……。
「メンバーは私を入れて五人。今日はまだ二人しか来てないから二人だけ紹介するね!」
勝手に話しが進んでる……。今だったらこっそり逃げられるか。って考えてる間に後ろにいる!?
これじゃ逃げられない。
「はいっはぁい!ワタシはタキでーす!タヌキのヌを抜いてタキです!よろしくです!」
「ボクはレイネ、よろしく!アナタがイズナさんですよねっ?メリサさんから話しは耳鳴りがするほど聞かされてます!」
元気に手を振り上げて自分の名前を高らかと言ったタキは頭に木の葉が乗っている。
一方、尊敬の眼差しを俺に向けて挨拶をしたレイネは緑色の瞳が特徴的だ。
「よ、よろしく………。お前どんだけ話したんだ?」
「だってイズナが面白いから!それじゃ、これからよろしく♪」
「はっ?」
突然目の前に『ギルド〔白の女神〕に勧誘されています』と、表示される。
もちろんキャンセルを押してギルドから出て行こうとした。すると目の前に現れる『ギルド〔白の女神〕に勧誘されています』の表示とメリサ。キャンセルすると、また勧誘のメッセージが。
入るまで帰さない気か。
「俺は入らない。何やっても無駄だ」
「知ってる」
「なら──」
「イズナが、前は私達のギルドと同じようなことをやってたこと。かなりのお人好しって、結構PNで有名だったんだから!」
そのことか。まあ自分でも覚えていないくらい大勢の人の依頼をこなしたからな。主に低いレベルの人を優先して手伝ったから、俺のレベルはさほど上がらなかったが。
「もうやってないし、やらない。お人好しはやめたんだ。関係ないから帰る」
「本当に?イズナ、こっそりアイテム混ぜてるよね!」
「っ!?そ、そんなわけねぇだろ」
「出てくるはずのないモンスターのアイテムがあったら気づくよ、ヘタクソ!相変わらずのお人好しがっ!」
「………なんなのお前、本気で帰るっ!?」
「お!?なんだ?」
一歩進んだ瞬間、顔面にドアが叩き込まれた。仰向けに倒れ、あまりの痛みに悶える。
「なんだ?じゃねぇ、何しやがる!」
「ドア開けただけだけど。誰だコイツ?」
「誰だコイツじゃねぇ、謝れっ!?」
「メリサーただいまぁ~!あれ?」
上体を起こしたら今度は顔面を踏まれた。連続でなんでこんな目に合うんだ!?
やっぱりこんなところに来るんじゃなかった!
「何このゴミ?」
「………誰がゴミだ、このやろう!!またな、メリサ!」
「またね、イズナ!」
ドアを荒々しく閉めてギルドから離れる。
まったく、酷い奴らだ!無理矢理連れてきたくせに、あんな目に合わせやがって!二度とギルドになんて行くか。
「賑やかだったな………。今日は籠もるか」
いいギルドだと思う。昔なら入ってただろう。けど、今は一人で戦える力が欲しい。
誰も犠牲しない力があればいい。弱いままじゃいられない、レベルを上げてもっと強くなる。この壊れた世界を終わらせるためなら、必要なことはなんでもする。
「おいあんた、最前線組がかなり掃除しているとはいえ一人で行くのは危険だ!俺達と行かないか?」
「ありがとっ、けどただのレベル上げだから、低い階層にしか行かないし」
「そうか、気をつけてな!」
「お互いにな!」
時計塔の前で会ったパーティーと挨拶を交わして扉を開けた。
今度はどのくらいいられるか、なるべく長く深く潜っていたいけど。アイテムが少なくなってきたし、今度アイテム集めに行くか。
今頃、十階でボス戦だな、今度は何人が犠牲になるのか。
アギリさんは最前線組で戦っている人物の中でも有名で、かなりの信頼を得ている。が、あの戦闘方法は嫌いだ。
俺とメリサが抜けたのはそれが理由だ。