043話:ボランティア部と風紀委員
本日三話目ですご注意ください
「ボランティア部ー?」
「そうボランティア部だ!」
「えぇ、嫌だよ面倒臭そうだし……」
「石橋、面倒でも偽善でも、とりあえずお前はもっと良いイメージを持たなきゃいけない!! 行事で目立つだけじゃダメだと言うことに気がついた!」
新学期、新しいクラスで五日ほど経ったが石橋は女子達のグループのどこにも属せないでいた。
「まぁ確かに石橋さんは黒髪になったけどやっぱり怖いイメージ残ってるよね、僕もその目で睨まれたらきっとブルッとしちゃうよ!」
「あ、葵……石橋はこう見えてナイーブなんだ、目のことを言うのはやめてあげてくれ。後でシクシク泣いているんだぞ?」
「な、泣かねぇよっ!!」
「まぁ、でも石ちゃんがボランティア部を立ち上げて率先して学校に尽くすのに僕も賛成かなぁ、祐ちゃんが言うとおり本当に生徒会長になりたいならこのままじゃダメだと思うよ? 学園長の期待の星なんだからさ! ハハッ」
「ヌググ……わ、わかった……」
「な、なぁ、所で石橋さん連れてくるのって本人のためにならないからやめたほうがいいぞ? 俺だって梓連れてくるの控えてるくらいなんだから」
ふと周りを見渡すと、何時もとは少しばかり様子の違う視線が俺達に注がれていた。
昼休みの食事を俺達四人の男子はいつも時計棟前の広場で取っている。
時計棟の近くで、広場の一番良い所を陣取っているのだがここには俺達の……いや、恐らく真一の効果が強いんだけど、女子が集まってくるのだ。
三年生が卒業して新一年生が入学し、この広場の昼食のための陣取りは様々な女子達が覇を競う戦国時代に突入していた。
恐らくこれからは学園に慣れ始めた新入生達も参入し下克上の壮大な争いが巻き起こるだろう。
そんな渦中の中心に突然現れた石橋 薫。
なるべく中央に近づこうと必死な女子達の戦いを無視して、俺達と一緒に昼食を取るのはある意味タブーであった。
血に餓えた目が石橋を睨んでいる……
ただ恐らく、恐怖心によって石橋が何かされることは今のところ起きていない。
まぁその内、真一の熱狂的な信者にナイフで刺されたりしそうだ。確かに雪人の言うとおり石橋のためにも明日からはやめさせよう。
……
結論。
ボランティア部は簡単に成立した。
部員は石橋を部長に俺と陸の三人。
真一達には断られてしまったので、今のところ正規の石橋の派閥と言えるのはこれだけだろう。
俺と陸の野郎は仲良くないけどなっ!!
「えー、お前が副部長かよー」
「お前言うな! せめて先輩だろうが」
「お前先輩」
「……」
やはりこいつ頭が軽い。
とりあえず、簡単に作れたのはボランティア部という学校奉仕の側面もあるのだが、実は石橋が風紀委員になるという条件を飲んだためだった。
うちのクラスの担任の佐藤先生が、石橋の言うことなら皆守るだろうと思ったのか「風紀委員に入れば顧問になってあげる、やってくれないか?」と頼まれたそうだ。
変に男らしい(?)石橋はこれを受諾、すんなり風紀委員に加わった。
若干、若い男性教諭にお願いされると弱い所があるのでそっちが理由かもしれない。
「それより石橋、お前本当に風紀なんて守れんのかよ?」
「はぁ!? お前先輩は黙っててくんないっすかねぇ? 石橋さんがやるっつったらやるんすよ!!」
「なんでお前がマジギレしてんだよ……」
「まぁまぁ、とりあえず言うこと聞かせれば良いんだろ? だったら慣れてる」
嫌な慣れだなオイ。
「いや、そうなのかもしれないけどよ……なんか、こうもっとさ、不純異性交遊とか取り締まるんだぞ……」
「なっ!?」
その場には陸もいたためか驚いただけで終わりだったが、帰り道になり俺と二人きりになると頭を抱えていた。
「ど、どうしよう……」
「ミイラ取りが既にミイラだったパターンか?」
「俺達不純異性交遊してるよな? しまくってるよな?」
「オイ、口調戻ってるぞ? それとその言い方なんか嫌だなオイ」
石橋は焦るといまだに自分のことをオレと言う。
まぁたま出すくらいなら石橋らしくて良いかと思う。
「とりあえず、一応付き合ってはいないって皆には言ってるんだからこのまま秘密で良いだろ。俺はいつまで失恋引きずってんだって言われちまうけどな」
「だ、だよな! 秘密で行こう! そうしよう!」
そんなことより不純異性交遊だ。
俺達は確かにそれなりに……
いや、けっこう……
いや、かなり不純異性交遊なのだと思う。
一応、俺がまだまだ若くて思春期だからというのもあるが、一応言い訳させてもらうとオレより石橋の方が思春期だと思う。
まぁあれだ。
色々と……あれだ。
簡単に言うと石橋は猿だった。
頭の中の半分は俺のことで、もう半分はなんかエロいことが占めている感じだった。
え?
学校や勉強?
一応、石橋は俺といるために一緒に勉強してくれたりするが、基本的にどちらかの家でやるとか二人きりになるような場所では勉強出来ない。
何故なら石橋が猿だからだ。勉強は石橋の中ではついでくらいの優先順位なようだ。
まぁそんなやつが風紀委員やって生徒会長も目指すらしいから面白い。
正直言って今の石橋は売り言葉に買い言葉で『やる』と言っている感じで、あまり本気になっているようには見えない。
だけどこの子はやれば出来る子だから、きっと何かしらの答えは見つけてくれると思う。
俺は石橋が本当に好きみたいだ。
コイツのことを信じたい自分がいる。
何かやってくれると信じてしまう自分がいる。
あまり、重く思われることのないようにしよう。
チラッと横を歩く石橋を見るとこちらをジッと見ていた。
この視線……と言うか目付きにも慣れたものだ。
みるみる石橋の顔が赤くなっていく。
おっと見つめ合っていたようだ。
「な、なぁ、祐樹、今日うちの親遅くまで帰らないんだけど家来ないか? ほ、ほらあれだ! これからのボランティア部の活動についてじっくり、ゆっくり、しっぽりと話し合わないといけないだろ!?」
……俺は、何かやってくれると信じている。
信じているからな石橋。
溜め息一つで頷くと、興奮しすぎて鼻血を垂らす石橋は俺の手をとり、かなり早いペースで歩き出す。
手がちぎれそうなんですが。
あぁ、親に遅くなるって言っておかないと。
そして俺達はこのあと、むちゃくちゃセッ……