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素晴らしき貞操逆転世界  作者: エイシ
第一部:一学年目
30/55

030話:クリスマスパーティーのお誘い

「「ぎゃあああはあ!!!」」





 阿鼻叫喚がクラスに響く。


 季節も移ろい、学校はもう冬休み直前だった。

 そして、返ってくるテスト結果に一部の者達は戦々恐々としている。


 え?

 俺?


 もちろん、俺は叫ばない。

 この数ヶ月、文化祭とか浮かれ気味のイベントは関わろうとしなかったが、登校と勉強だけはそれなりにしたつもりだ。

 まだまだ失恋の痛みは消えないけれど、それでも俺は石橋と次のテストで赤点を取らないように頑張ったつもりだった。





「よ、よぉ宮代どうだった!?」


 噂をすれば石橋だ。

 彼女の髪はすっかり黒く染まっていた。

 目はキツいがそれでも元は可愛いのだから少し落ち着けと言ったら、プリンになりかけていた金髪を次の日には真っ黒に染め上げてきたのだ。


 そして、今、テストを持ってニヤリと笑うからには、彼女も赤点を免れたのだろう。

 俺もニヤリと笑い返しながらこう言う。



「五十二点取っちまったぜ……!」

「なっ!? 五十二点だと!? て、天才か……!?」

「因みに石橋はどうよ?」

「三十五だ……!」

「そ、そうか……」



 因みに三十点以下で赤点だ。赤点を取った者達には補習が待っている。

 石橋の点数はけっこうギリギリだが、赤点じゃないのでまぁ良いのだろう。

 夏休み前のテストでは俺達はそこにさえも手が届かなかったのだから、艱難辛苦を乗り越えて勉強した甲斐があったと言うものだ。



「わ、わわわ……私、が、こんなに良い点を取れたのも宮代のおかげだな!」

「そうかー? こっちこそ感謝してるぞ? なんたって冬休みを補習もないから安心して迎えられる!」



 石橋の自分を呼ぶときの『俺』と言うのも改めさせた。

 まだ慣れていないようだが、俺も石橋がこうやって女の子らしくなるのは嬉しいことだ。

 あとはその鋭い眼光さえなくなれば怖いイメージも俺の中から払拭出来ると言う物だ。

 実際あの日以来、あの、自暴自棄になっていた俺をぶっ叩いて目覚めさせてくれた時以来、ビンタも、それから殴られることもなかった。




「そ、そう言えば宮代は冬休み何してるんだ?」

「冬休みー? あー、正月はたぶんコタツでごろごろしてんなぁ。クリスマスは……皆、死ねば良いのに……!」



 おっといけない、ダーク祐樹君が表に出てしまった。

 唯がいればその日はきっと幸せだったんだろうな……

 でも、夏休みが終わってからというもの俺には唯からの連絡は一度もなく、もう俺も原木唯という名前や思い出には触れないように過ごしていた。

 それは自分から見ても失恋をただの記憶になるまで耐えて待っているかのようだった。



「じゃ、じゃあさ、遊ばないか? 二十五日とか彼氏彼女いない者……」

「おっ、いいね~! 彼氏彼女いない者達でクリスマスパーティーでもするか!」

「あ、あぁ……うん……」



 因みに鈴木も山田もクリスマスのためか突然彼女を作り出した。あいつらふざけやがってこれ見よがしにイチャイチャしている。

 クリスマスはこっちはこっちで楽しんでやろう……!




「うぉぉぉい! クリスマスパーティーやると聞いて、麗ちゃんが来ましたよ~!」


「……よし、誰誘おうか石橋!?」

「ん、え、えっと……」


「ちょっと! 無視しないでよ! 放置プレーってやつ!? それ全然興奮しない! もう一度言う、全然興奮しないからね!!」



 煩い神崎が来た。

 この騒がしい性格のせいで彼氏が出来な……あれ?

 そう言えばこいつ彼氏出来たとか言ってなかった?



「おい、神崎? お前彼氏出来たんじゃなかったの?」

「ん? あー、実は無理矢理押し倒したらビンタされて別れちゃったのよねー。流石に付き合って三日で押し倒すのは不味かったなぁ」



 あ、違う、騒がしいとかの前にこの猿のような性欲をどうにかせんとアカンなこれ。

 とりあえずなんか可哀想なのでクリスマスパーティーには誘ってやった。



「じゃあ、わ、わ、わ私は(あかね)を誘うかな!」

「あかね? それ誰だよ石橋」

「……はぁ?」



 石橋に怪訝な顔をされた。

 話を聞いていく内に(あかね)とはどうやら石橋にいつもひっついていた舎弟ちゃん(仮)のことのようだ。

 マジかよ、よく考えたら半年クラスメートしているのに初めて知ったよ!!

 林間学校で一緒の班だったのにスゲーな俺。





 その後、昼休みに俺は真一達にクリスマスパーティーの話をする。

 このままだと女の子だらけのパーティーになりかねない。

 いや、それはそれでいいんだけど、なんか悶々として終わりそうなのでバカ騒ぎ出来る男も必要と思い立った訳だ。



「と言う訳でクリスマスパーティーをしまーす! わぁーパチパチ!」


 拍手をしてくれたのは葵だけだった。

 ありがとう葵、俺の真の友達はお前だけかもしれない。


「裕ちゃんそれどこでやるのー?」

「あー、そうだな、俺の家とかでもいいんじゃね? 皆でお菓子とか飲み物もち寄って、あとはゲームかなんかすればいいでしょ!」

「へー、なら行こうかな! クリスマスは女の子とは遊べないんだよね、他の子に見られたら修羅場だから……でも裕ちゃんの家なら全然オッケー!」

「よし、じゃあ真一は参加ね。葵と雪人は?」

「ハイ! ハイ! 僕も行きたい!」

「あー、俺はその日は梓と……」

「葵も参加っと、雪人は……仕方ない。お前は梓ちゃん連れて参加でいいか」



 梓ちゃんは雪人の双子の妹だ。

 本人は恋人とか言っているが、俺は妹を恋人とは認めないのでこいつも独り身だ。

 つまりクリスマスパーティーには参加するべきなのだ。



 とりあえずこの昼休みに時計塔前のいつものメンバーは全員参加が決まった。

 場所が俺の家になったが、リビングを使えば良いと思う。

 たぶん両親は年末まで帰ってこないし、春香は……ケーキでも分けてやればそれで大丈夫だろう。








 ……放課後。


「み、宮代ぉ……すまない」


 泣きそうな顔で石橋がやって来た。

 何時にもなく弱気だ。

 あの百戦錬磨の石橋のこんな顔はなかなか見れない。


「ど、どうした!? とうとうケンカで負けたのか!?」

「ち、チゲーよ! 茜、あいついつの間にか彼氏出来てたんだよぉ……!」

「ボソボソ(チッ! ……爆発しろ)」

「え?」

「いや、なんでもないぞ! そうかぁ、まぁ男の方は四人で、女の子は雪人の妹含めて三人だし別にいいんじゃないか? ワイワイ出来ればそれで!」

「うぅすまない……」



 未だに友達が少ない石橋は、ようやく最近神崎と話せるようになったくらいで誘える友人は少ないようだった。

 まだ冬休みまで日にちもあるし急ぐ必要はないよと石橋には伝えておいた。






 後日。

 五十位までのテスト結果が張り出される。

 ワン・ツーはいつもながら我がクラスの秀才かつ秀麗な委員長と東條だ。

 昔はこの表の少し順位が下がった所に……


 俺はそれ以上思い出すのをやめておいた。

 今回俺は補習を免れたのだから、それで良いじゃないか。ポジティブに生きなければ。

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