018話:大変なことに気が付いた②
大変なことに気が付いた。
この世界……なんと、女性がそこら辺で用を足すのは普通で、逆に男性が外で立ちションでもしようとするとすぐに大事件になるらしい!!!
それに気が付いたのは俺が妹と一緒に買い物のためにスーパーに向かっている時だった……
「なんかお兄ちゃんと買い物行くの久しぶりかも……」
「あぁ、俺も春香といることが久しぶりな気がする。てか、林間学校で二日ほど離れていただけなのに、すっげー久々な気がするんだよな、なんか……」
今日は林間学校から帰って来てから初めての日曜日。
原木……じゃなかった、唯とデートしたかったけど用事があったみたいでまた今度だ。
今日は春香とのデートで我慢しておくか。
家の近くの道は人通りも少なく、車もほとんど通らない。
俺達は道の真ん中に横並びになって堂々と歩いていた。
すると、道の端にウンコ座りでしゃがむおばさんが見えてくるではないか……
どうしたんだ、気分悪いのかな……?
俺は若干心配になったのでそれとなく様子を見ながら近づいてみた。
しかし、春香が肘でどついてくる。
「ちょっと! お兄ちゃん何見てんの!? あんまジロジロ見ないでよね! 変態!!」
はっ?
なぜ怒る? てか、なぜ変態?
しかし、それはすぐにわかった。
おばさんはスカートを捲し上げていたのだ。
しかもキラキラと光る液体が流れている……
うええええ!?
そう、この世界ではなんと女が外で用を済ますのは結構普通らしい……
ポケットティッシュを取り出して後処理をすると、そのおばさんは何事もなかったかのように立ち去って行った。
しかも、怒れる我が妹に聞いたところ、一応いけないことらしい。
警察に捕まることもあるとのことだ。
しかし、特に酔っ払いとか、おばさんとか、子供とか、ヤンキーなんかはよくしていると言う。
もしかして、うちのクラスが誇るヤンキー・石橋もしているんだろうか?
もし外で見かけることがあったらひたすら飲み物を奢ったあと、ストーキングしてみようと思う。
いや、違う! 別に変態的な理由じゃない! ただ、この世界のことをよく知ろうと思ったからだ! 決して卑しい考えではない。
もう一度言う、決して卑しい考えではない!!
それにしても、なんて世界なんだ……
おばさんの野ションには全く興奮しないな。しないどころか、おえっぷと吐き気さえ覚えるところだ。
あれ……唯もするのだろうか?
俺の彼女が外でしているところを想像すると……興奮し……いや、ダメだろ外でしちゃ。捕まるしな、そんなことするようなら怒らないと。
あーいや、でも唯はしないな、なんか真面目そうだし。
うん。神崎はしそうだけど。
……
「お兄ちゃんってさー……本当、変態だよね」
その後も春香に、野ションについて根掘り歯掘り聞いていたら変態と言われてしまった。
妹のくせに兄に失礼だな!!
「お兄ちゃんは紳士なんだ! 一人の変態とい名の紳士。なっ? だからいいんだよ!」
「何がいいのかわからないけど、ビッチにはならないでよね」
「やれやれ、ビッチビッチチャプチャプと煩いやつだ。毎晩俺の風呂を覗きに来る妹には言われたくないね」
「えっ!? は、はぁ!? 誰それ、私じゃないし、別にお兄ちゃんのお風呂なんて覗いてないし!! 私はお兄ちゃんの脱ぎ捨てた服とかちゃんと洗濯機に入れてるだけだし!!」
「はいはい、毎日脱衣所でゴソゴソごくろう。ワロスワロス」
「ぐぬぬ~!! お兄ちゃんのほうがエロじゃん! 私なんかよりずっとエロ! 男のくせに!!」
男だからなんだけどね……
てか、この世界では女だけでなく男もガッツリ貞操が逆転してる。
葵によると、男はエッチな動画も見ないし普通は右手が恋人なあれもしないと言っていた。
確かに俺がベッドの下に隠していたお宝達のレーベルに写っていた可愛い女優さんが全て裸の男優に変わっていた。
俺はあまりのショックに吐いた。そして、その日の内に全てのDVDを叩き割った。粉々に。
まぁ、葵は可愛い系でなよなよっとしているからかもしれないが、絶対に雪人あたりは夜な夜なエロい動画は見ていると思う。
兎に角、性欲がない男って俺には想像つかないし。
えっ真一? あいつは特別だろう。もうあれこそがビッチってやつだ。金もらってるあたりはけっこう危ない臭いもしてくる。
……
そうこうしてると俺達はやっとスーパーに到着した。
「さーて何を買おうかなーっと……」
夕食について考えながら物色していると、女子高生がいた。
休みなのに、そこにいたのは制服を着ている三人の女の子だった。
とりあえず可愛かったのでひっそりと眺めることにする。
春香はお菓子を見に行ったので、今なら眺め放題だった。
「やっぱりナスだよナス!!」
「いや、キュウリだから! これだけは絶対に譲れない!」
なんだろう、何か言い合っている。
サラダか何かの話だろうか?
「この形のほうが似てるって絶対に! これだから処女は全く……」
「なに言ってるの? 私が知ってるのはそんなのよりもっとゴツゴツなの! やっぱこのくらいゴツゴツだよ!!」
「えぇーあんた彼氏できたらちゃんと見てみなよ? 絶対にそんなん妄想の産物、エロいDVDの見すぎ!!」
「いいもん妄想でも! ゴツゴツ系の男の子ゲットするから私!!」
「はぁ? もう勝手に股間がゴツゴツしてる彼氏作ってくださいー!」
あぁ、なんの話か分かったわ、これ。
男の股間の話だわ多分。
食べ物で表現って……やめなさい。
てか、ゴツゴツ系彼氏ってなんだよ……?
股間がキュウリのようにゴツゴツしてる男ってことだろうか?
そんなやついねーよ、誰だよそんなアホなエロDVD作ったやつ。
いや、もしかして、あそこがゴツゴツになっているモンスターのようなやつもいるのかこの世界……!?
ただ、一番驚いたのは三人中二人はナスとキュウリで言い合ってる中、残った一人がでかいダイコンを真顔で持っていたことだ。
お、おい……おまっ、まさか……!?
「お兄ちゃん、何してるの……?」
「えっ、いや、違くて、ダイコンは流石にないわぁって……」
「はっ? まぁいいや、私今日パスタ食べたい。明太子パスタ!」
「あ、あぁ、じゃそうしよっか」
……
買い物を済ませた帰り道。
さっきおばさんがいた所を見てふと思い出す。
「なぁ、そう言えば昔はここで立ちションしてたよな。どこまで飛ばせるかやってって春佳がうるさかったよな……」
「は?」
「いや、だから昔は……」
「何言ってるの変態?」
なにコイツ。
目が怖いんだけど。
キモい虫でも見るかのような視線にお兄ちゃんの体は震えが止まらないんだけど。
「いや、はは……だからさ、昔はこうやって小便小僧のように……」
俺はのけ反るようなポーズを取る。
有名なかの銅像のごとく、片手を腰にあててのあのポーズだ。
「キャッ!! ちょっ、やめ、やめて! ご近所に見られたらどうすんのバカ!!」
「へ?」
「もお!! 何考えてるの!? 小便小僧ってあの変態銅像でしょ!?」
オ、オイ、やめろ春香!!
ベルギーから抗議が来るぞ!? 国際問題だぞ!?
「あんなこと本当にしたら即逮捕かレイプされるからね!? もう絶対にしないでね!?」
「は、はぁ~い……」
立ちションについてこんなに妹に怒られるとは……
立ちションで怒られるとか誰だよそいつ。俺だよ。
すぐにポーズはやめたが、人が通らなくて良かったみたいだな。
少年心が抜けない俺はいつか逮捕されてしまわないか不安になった。