第6話 王都で迷子からの出会い
うわー、やべぇな。
6歳とは言え、前世はそれなりに人生生きてたんだ。
迷子にはならない自信があったのに。
でもしかたねぇって!
初めて見る街並みに興奮してたのもあるけど、やっぱり獣人だよ!
こう、綺麗なお姉さんに獣のしっぽとか、耳がついてんだぞ?
追いかけるに決まってるじゃん。
まあ、結果として迷子になったわけなんだが…
でも、門は抜けてないし、ココが商業区なのは間違いない。
とりあえず周りを見渡してみると、あれだ…いわゆる娼館とかがある地区みたいだ。
まだ明るいから店は閉まってるみたいだけど、なんかトラブルの予感がする。
「よう、お譲ちゃん? どこから来たんだ」
と不意に肩を掴まれた。
俺はとっさにその手を掴んで投げ飛ばす。
俺は野蛮かい? 違うね!
美少女の肩に急に手をのせる、後ろから声をかける…そんなことする奴は投げ飛ばしていいってのが 師匠の教えだ。
て、ホントにトラブルかよ。
一応、投げ飛ばした奴を確認する。
起き上がってこっちを見ている。
うへぇ、キモ!
「投げ飛ばしておいてあれですが、なんの御用でしょう!」
「なに、お譲ちゃんをいいところに案内してやろうかとおもってなぁ」
「遠慮します」
話し合いでもないが、こんな奴について行きたくはないな。
再び前からやってくる変態。
掴まれそうになったところをもう一度投げる。
「いてて…嬢ちゃん。なめたことしてくれんじゃねぇの。おめぇら!!捕まえろ」
やばい、怒らせちまった。
でもしょうがねぇだろ? キモイんだから。
「へへへ、覚悟しろや、おい」
周りの浮浪者が俺を囲んでくる。
俺が投げたのはボスだったらしい。やっちまった。
周りの奴らガキだと思って舐めてるのか、どいつもこいつも怖そうな顔でにじり寄ってくる。
なかには気持ち悪い笑顔で近づいてくる変態もいる。
怖い顔は平気だが、変態の笑顔は鳥肌もんだ。
「かかれ!!」
その声を合図に一斉に俺に向かってくる。
父さんや師匠との特訓のおかげで動きは見えているんだけど、数が多い。
これは、逃げるが勝ちだな!!
決めたら即行動!
俺は一目散に逃げ出した。
「まてや、コラぁ!!」
地の利は相手にある。
体格も相手に有利。
なら俺はスピードで勝負だ。
人通りの多いところまで逃げたら俺の勝ち。
負けたら…想像したくないな~。
逃げつつ大通りに向かう道を探す。
時々曲がり角から出てくる雑魚キャラをかわしたり、あしらって逃げる。
「おめえら!このままじゃ逃げられる!魔法を使えぇええ!!」
「「「「へい!!」」」」
俺の後ろから熱い火の塊が飛んできて俺の左側を抜けていく
うおぉおお!あぶねぇえええ
やつら俺を殺す気か!?
サイズは野球ボールほどだが、当たったらどうなるかなんて考えるまでもない。
直線は不利だと思い曲がり角を曲がって俺は誰かとぶつかった。
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アタイは猫型獣人のミリア!
市民街のスラムに住んでるんだ。
父ちゃんや母ちゃんは随分前に死んじまってる。
でもさみしくないよ?
スラムには仲間がいっぱいいるもん。
でもそんなスラムに悪い大人が来るようになったんだ。
奴らは私たちみたいなスラムの孤児を連れて行って奴隷にしちゃうんだ。
スラムの大人たちは私たちを助けてくれない。
だから私たちが悪い奴らを倒さないと行けないんだ!
「なぁミリアー、ホントにやるのか?」
「当然じゃん! 皆が連れて行かれるの黙って見てるなんて出来ないよ!!」
友達のリックが弱気になってる。
なんて情けない!
人族だろうと男は男だろ!
「しっかりしなよ!アンタ男だろ」
牙をむき出しにして吠える
「ひいい、だってよ、俺お前みたいに強くねぇし」
「もういい、アタイ一人で追いかける」
そうだ、こんな処でじっとしてられないんだ。
仲良しだった友達が奴隷商人に連れて行かれたんだ。
直ぐ行かなきゃ!
「やっぱり憲兵に頼もうよ~」
「憲兵なんか当てにできないよ!あいつら…あいつらなにもしてくれなかったじゃないか!!」
そうだ憲兵は当てにできない。
奴ら金をもらってアタイ達の居場所を奴隷商人に伝えてるんだから。
「アタイは行くよ!」
そしてアタイは奴隷商人が去って行った方を追いかける。
後ろからリックの声がするけどもうしらない!
「まってよ、ミリアちゃーん!…あわわわ…大変だぁ! 誰かにこのことを伝えないと」
アタイは先回りして奴隷商人の馬車の前に飛び出している。
護衛は2人と奴隷商人が1人だ。
護衛がアタイに気付いてあわててよけようとする。
普段の奴らならアタイ達を引き殺そうとするけど、いきなり目の前に飛び出されてあいつ等よけようとした。
よけた馬車は大通りに突っ込む。
大通りを歩いていた人たちから悲鳴が上がる。
護衛が何とか馬車を止めたみたいだ。
しめた! こんだけ騒ぎになれば奴隷商人もめったなこと出来ないかもしれない。
馬車にのせられていた仲間達に合図をする。
馬車から仲間が逃げていくのを横目にアタイも逃げ出そうとする。
「この、クソガキ!よくも、よくもワシの邪魔をしてくれたなぁあ!」
大通りにまだ人もたくさんいるのに奴隷商人は護衛に命じてアタイを殺そうとする。
アタイは私に迫ってくる護衛ではなく、護衛に守られている奴隷商人に向かって走りだした。
護衛がアタイを迎え討とうと剣を抜く。
アタイは護衛の剣が届くギリギリで体をひねり護衛の剣をかわし、後ろにいた奴隷商人の首に向かって手刀を繰り出した。
「う、うわぁあああ!」
奴隷商人があわてるが、もうアタイの距離だ。
獣人の爪はそれだけで刃物程の切れ味を持つ。
刃物程の切れ味はないが、奴隷商人の喉を使い物にならなくするくらいは可能だろう。
「シィイイ!」
アタイの手刀が奴隷商人の首を少し切る。
丁度その時普段は仕事をしない憲兵がやってきた。
「そこの娘、止まれ!」
アタイはとっさに走り出した。
人の多いところ商業区に逃げ込むためだ。
あのまま留まっていては奴隷商人の護衛か憲兵に殺されるのが想像できたからだ。
逃げるたびに数を増す憲兵。
クソせっかく奴隷商人に一矢報いたと思ったのに!
「アンタら、普段仕事しない癖にしつこいんだよ!!」
「貴様、止まれ! 各員魔法用意。初級魔法で動けなくしろ」
あいつ等後ろから魔法で火の玉飛ばして来やがった。
畜生!このままじゃやられる。
どっか脇道に逃げ込まないと!
「きゃあ!」
脇道に入って少ししてアタイは少女にぶつかった