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第3話 5歳の朝に女の子

 そんでもって5歳の誕生日だ。


 朝の清々しい目覚め。

 前日の疲れなんて何もなく、朝から俺絶好調!!


 「おはようございます、ユウリ様」


 毎朝起こしに来てくれるメイドさんだ。

 銀髪メイドのリオ母さんは朝弱いから起しには来ない。


 前、朝になってこっそり母さん達の寝室を訪ねた時、アリス母さんに抱きしめられて眠るリオ母さんみて俺は涙を流したことがある。

 このどうしようもない地上に、二人の天使が舞い降りていたのだ!


 楽園はここにあったんだね!


 って心から叫びそうになったのは秘密だ。

 目覚めたアリス母さんに誘われて、二人の間に包まれて二度寝した時はつるぺた幼女に転生を感謝したもんだ。



 「お召し物を用意しております。どうぞこちらへ」

 「ありがとう」


 メイドさんが持ってきた服を着せてもらって、食堂でご飯が毎朝の流れなんだが…


 「あの、これって女物じゃないですか?」

 「左様です」


 そう、女物なのだ。

 嫌な予感が全身を伝い汗となって流れる。

 まさか…。


 3歳の時に両親に聞いた。

 リオ母さんの性別が7年周期で変わるなら、もしかして俺も?


 結論からいえば俺は5歳の誕生日に女の子になっていた。


 「よくお似合いですよ、ユウリお嬢様」

 「あ、ありがとう…」


 慣れ親しんだ男の体から女の子になってしまっていた俺は食堂へと案内するメイドの後ろをとぼとぼ歩いていた。

 食堂までの道すがら【信託】によってぺったんメイルから連絡が入る。


 【信託】は神様の声を聞くのに必要なギフトってことで転生時にもらっており、時々連絡が入る。


 「(えっと、元気にしてる?こっちは神様の仕事がひと段落したところなんだ)」


 ああ、普段は鬱陶(うっとう)しいロリ神メイルからの連絡だが、今回ばかりは助かった。


 「(実は困っている。助けが必要だ!この世界の神様であるメイルの力が必要なんだ!)」


 と、ロリメイルのちっぽけなプライドを満足させるように言う。

 これでたぶん幼女は釣れる…にやり


 「(ど、どうしたんだい?私でよければ力になるよ)」

 「(実は、今日5歳の誕生日なんだけど)」

 「(え、おめでとぅ!お祝い贈るよ!)」


 お祝いを神様自らくれるらしい。

 ありがたいが、今は話を聞け。


 「(なんだけど、俺今女の子になってるんだ。どうにかもとに戻せないか?)」

 「(あ、そうなの?ちょっと確認してみる。また連絡するね)」


 とりあえず、問題はなさそうだ。

 幼女は楽勝だなぁ。

 もはや俺に何の憂いもない!


 一時的に女になっているだけだ。

 今日ぐらい乗りきってやるぜ!


 んでもって食堂到着。


 「奥様と旦那様がお待ちです」


 とドアを開ける。

 そこにはアリス母さんの他にもう一人銀髪のイケメンがいた。


 「ああ、おはよ~、ユウリ。どう?女の子になった感想は?」

 「アリス、あんまりユウリをいじめるものじゃない。ユウリ、この姿は初めてだったね。私の姿はどうかな?理想の父親だろうか」


 まあ、なんとなく想像出来てたけど、やっぱり父さんだったか。

 二人はなんていうか、かなりお似合いの夫婦だ。

 父さんもメイドをしていた時より生き生きしてる感じがするし、母さんも父さんにメロメロって感じか?

 こんな二人が両親って、正直自慢だぜ!


 「おはようございます。父さん、母さん。正直戸惑っています」

 「ふふ、そうだと思ったわ」


 とあくまでマイペースな母さんは楽しそうだ。

 たぶん父さんが女になった時も同じように楽しんだに違いない。

 と思って父さんをみると、「わかってくれるのか」って目で見つめられた。

 正直実の父親だというのにドキッとしてしまった。


 あれ?心まで女になってたりしないよな?


 「ユウリ、お前に言っておかないといけないのだが、お前は私の血を引いている上に、アリスと同じ人族の血も受け継いでいる。それがどういうことか分かるか?」

 「えっと、どういうことでしょう」


 よくわからんぞ?何が言いたいのだろうか。

 あ、今さらだけど、英才教育のおかげで俺の普段のしゃべり方は丁寧語だ!

 どうでもいいけど。

 「ユウリ、あなたはドラゴンが変身したわけではなく、最初から人間でしょ?」

 「ああ、そういうことですか。父さんの人型は変身した姿だけど、僕のはそうじゃないから一生付き合っていかなきゃならない…と?」


 言ってて愕然(がくぜん)とした。

 これ、ぺったん神がどうにかしてくれなかったら大変なことになるところだった。

 あぶねー

 今日くらいの辛抱で済むなんて俺ラッキーじゃん!


 「まぁ、なんだ。父さんとアリスの愛の結晶みたいなもんだ。強く生きろ。父さんも最初は戸惑ったが、がんばった」


 遠い目をして父さんが励ましてくる。

 たぶん子供と離れるのが辛いから、女になってメイドさせられて、それでも側にいてくれたんだな… ありがたいぜ!


 「女の子も欲しかったけど、ユウリが女の子になってくれるなんて私、嬉しいわ。」


 と抱きしめてくる母さん。

 俺は嬉しくないけどね。

 それを見守る父さんと、生温かい目で見てくるメイド達。

 たぶんメイドさんの今の話題は「美男美女の夫婦」と、二人の遺伝子でかわいらしく変身を遂げた「俺と母さん」なんだろうな。



 「今日から2年間女の子としての作法を学ばないと行けないんだから、頑張ってね?」

 「今後の武術の稽古だが私が担当する。娘がどれだけ出来るか楽しみだ」

 「さあ、食事を始めましょう?ユウリちゃん」


 楽しそうな母さん達には悪いけど、俺男に戻っちゃうぜ?



 食事の後、部屋に俺が戻った時【信託】が反応する。


 来たか!ガタッ

 俺はテーブルに手をついて立ち上がる。


 「(頼まれていた事なんだけど、ごめん。無理みたい!)」


 なん、だって?

 この物語はハーレムを目指す俺とロリのハチャメチャストーリーの予定だろ?

 それじゃ困るぜ!


 「な、なんで無理なんだ!?神様の力及ばずって感じか?」


 思わず思考じゃなくて口に出してしゃべっているが、どうせこの部屋には俺一人だ、誰に聞かれるわけじゃないし。


 「(すまぬ!出来るにはできるんだ。でもクレアが…)」


 あ、あのくそ天使――!!

 なんだ、また俺をいじって楽しむつもりか!

 邪魔しかしないのか!


 「(クレアが言うんだ。ドラゴンの力で体が壊れないようにするために必要なのですって。だから男に戻せるけど戻したらたぶん死んじゃうんじゃないかな?)」

 「…そう、か」


 嫌がらせじゃなかったんだな。

 ちょっと悪いことした気分になった。

 とクレアが通信してきた。


 「(それに、あなたが無様に戸惑う姿は見ていて楽しいです)」

 「やっぱり!お前の本音はそっちだろ!」

 「(まぁ、変身魔法でも覚えたら?神様な私としては何も出来ないけど、女の子になった記念日としてプレゼント贈るからさ、じゃあね)」


 通信終了。ふう…

 女の子になった記念日って…

 それにこの【信託】なんだが、地味に俺の体力を消耗する。

 まあ、最後にいい話聞けたな。


 変身魔法か…覚えたら、男で過ごせるってことだよな?

 それまで俺は、男5年に女2年を繰り返すのか。

 前途多難だなぁ。


 魔法の勉強も丁度始まるし、よし!頑張るか!


 んでもって魔法の勉強なんだが、普段の勉強に少し魔法の話が入っただけだった。


 「あの、先生。魔法を実際に使ったりしないんですか?」

 「ユウリお嬢様、魔法を使うのは危険を伴います。まずはじっくりと座学で学ぶのです」


 言われれば正論かもしれないが、俺には変身魔法が必要なんだ!


 「では、いつになったら魔法を使用するのでしょう」

 「そうですな、お嬢様は聡明(そうめい)でいらっしゃいます。来年には初期魔法の実践が出来るやもしれませんな」

 「では変身魔法はいつ頃習うのでしょう」

 「変身魔法? ああ、お嬢様は元の姿に戻りたいのですね」


 まあ、変身魔法をピンポイントで聞いたら、だれだって想像つくか。


 「残念ながら、変身魔法はありません」


 ん?ないの?

 父さんは変身魔法で人型になって暮らしてるわけじゃないの?


 「何を考えておられるか、当てて見せましょう。お父上の事ですな?ですが、残念ながらお父上の魔法をお嬢様が覚えることはできません」

 「なぜ、でしょう。同じ魔法ではないのですか?」


 変身魔法っていうんだ同じじゃないのか?


 「お父上のような上位3氏族のドラゴンの用いる魔法は種族固有魔法に分類されます。お嬢様のようにハーフでも使用できない場合がほとんどです」


 固有魔法ってなんだ?

 と思ったら頭に【信託】が響く


 「(種族ごとに選べる属性が違ったよね?その組み合わせで使用できる魔法と出来ない魔法があるんだけど、それを固有魔法って言ってるみたいだよ?)」


 と頭の中の幼女ぺったんが言う。


 「(それって、組み合わせ次第じゃ覚えられたってことか?)」

 「(そうだね、空のドラゴンなら[水・風・嵐・光]で陸のドラゴンなら[火・土・地・光]、海のドラゴンは[風・水・氷・闇]になるよ)」


 そして俺の属性は[火・風・土・炎・嵐・光]

 うまい具合にどのドラゴンの技も使えないのか…


 「(実に愚かですね。あなたらしいと言えます)」


 ツンデレ天使クレアちゃんに罵られても文句言えないぜ。

 肩を落として落ち込む俺。



 「変身魔法を覚えるには魔術大国であるマーク共和国のベルトリッジ魔法学院を目指すのが一番かと思われます」


 ここで先生が助け舟を出してくれた。


 「魔法学院…ですか」

 「ええ、そこにはかつての世界大戦で使用された数々の魔法を研究する部署があると聞きます。そこになら手がかりがあるかもしれません。」


 それはいい情報だ!

 ご都合っちゃご都合だが、俺には関係ないぜ。

 今すぐにでも入学手続きを頼まないと!


 「お嬢様、考えが顔に出ておりますよ。残念ですが入学が出来るのは14歳からです。」



 結局俺は女の子で生活することになるようです。


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