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20話 罪悪感

 アーバンは続けた。

「そう、この突起がないものは山に入って採ってくるしかない。でも、この突起があるものは平地でも栽培が可能だから、上手にやればわざわざ危険を犯してまで山に入る必要がない。毎年収穫が出来れば、楽に冬を越せる。」

「フォレストの一家だって。」

 あ、そうか。僕は俯いた。


 隣のフォレスト一家。フォレストは僕たちよりかなり年上の兄貴だけれど、よく子供の頃遊んでもらった。奥さんと小学校に通う息子と3人で暮らしている。

 だけど、ここ最近フォレストの体の具合が悪いという噂を聞いた。

 農作物も前ほどの量が作れず、奥さんが市場のカフェに出て働いていると聞いた。

「フォレストや、他にも生活が大変なところは一杯ある。そんな家でこの実を栽培することが出来れば、この実はかなりの値段になる。少しは楽になるだろうけど。」

 僕はそれを聞きながら、アーバンは凄いと思った。アーバンはいつも他の人のことを考えている。自分のことだけじゃなく、他の人たちのことをも気遣える優しさがある。

 僕はちょっと恥ずかしくなり、さらに罪悪感が悪い予感のように胸の中に湧き上がってきた。

 僕はその実をポケットにしまった。


 僕の顔色を見て、アーバンは心配そうに尋ねた。

「クロム。顔色が悪いよ。どうしたの。疲れたのかな。」

 アーバンは木の下にマットレスを引いて、僕に座るように勧めた。

 僕は彼の隣に腰を下ろし、

「アーバン。僕は市場で見た実と、ここになっている実は同じものだとばかり思っていた。」

「ああ、そうか。がっかりしたのかい。だけど、ここになっている実も本当に極上品だよ。少しでも多く採っていこう。フォレストの家にもおすそ分けしようよ。」

アーバンは気を悪くしたふうでもなく、にっこりと笑った。

「いや、そうじゃないんだ。がっかりしたんじゃないんだよ。この実さ、あるおおかみが市場に持ってきたのを、バーガンディおじさんにもらったんだ。この実を採りに山に入るってことは、ひょっとしたらそのおおかみに、この場で出くわす可能性もあるってことだろう。」

「なるほど。そういやあそうか。」

 彼は頷いた。

「だからさ、僕はそれを知っていて、君を連れてきたんだよ。」

「って、どういうこと?」

 アーバンは僕が言おうとしている事があまりよくわからないみたいだ。人を疑わない素直な彼らしい。

「君を危険な目に合わせるかもしれないのに、僕は君を誘ったんだよ。」

 彼は黙ってそれを聞き、天を見上げた。


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