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17話 信じられない景色

「なるほど」

 僕が口にすると

「クロムはたぶんこの目印に気づかず、真っ直ぐ頂上の方へ登って行ったんだろうね」

「うん、たぶんそうだと思う。」

「注意して見ていかないとね。」

「この石はアーバンが積んだのかい?」

「いや、違うよ。ずいぶん以前から誰かが目印に積んだのだと思うよ。」

「僕も教えてもらって初めて登った時には、もうこの石が積んであったんだ。」

「そうか。」

 だいぶ前からあの赤い実のことを知っていた誰かが、目印をつけていたんだ。

 僕たちはその目印のところを右に曲がり歩いていった。

「それにしてもこんな頂上付近に木や実がなっているなんて不思議だよね。」

「そうなんだ。僕も不思議なんだけど。」

 アーバンは僕を振り返りそう言った。


 この山は頂上の高さが3000M近くはある。

 僕たちが歩いているこの地点は、頂上を少し降りた所らしく、アーバンによれば、もう20分ほどで頂上に着くはずらしい。

 標高3000M付近ともなれば大小のガレ石が連なり、岩の間から高山植物が夏になれば顔を覗かせるくらいで、目立った木や植物などはありそうもない。

 しかも、秋も終わりのこの時期、もう木の実を収穫するにも少し遅い時期だ。

 僕たちはそれからどのくらい歩いただろう。

 大きな岩を避け、足場の悪い岩の重なる道を登ったり、下ったりしながら歩いた。気をつけないとあっという間に滑落してしまうだろう。下を見下ろすと赤や黄色に色づいた広葉樹の森が見えた。

「そろそろ見えてくるはずだよ。」

「ほら。」

 前を歩くアーバンの頭の向こうに不思議な景色が広がっていた。

(こんな山の上に?)

 僕は目を疑った。

 それは不思議な光景だった。


 道を登りきったところに、ぽっかりと空間があった。

 その先に、山の上とは思えないくらい広く開けたところがあって、そこには真っ青の水を湛えた湖があった。

 池と呼ぶには大きく、湖と呼ぶにはちょっと小さすぎるような気がするが、その大きさは村の学校にある運動場を、ふたつかみっつくっつけたくらいの大きさで、やはり池というよりは湖だろう。

 そしてその湖の脇には、真っ赤に色づいた僕たちの背丈ほどの木が何本か立っていた。

 数は30本、50本?

「こんなところに?」

 僕は思わず声を上げてしまった。

 それはあまりにもきれいな景色だった。

 見たこともない真っ青な湖、そしてその湖を囲むように木が何十本と立っていて、真っ赤に色づいた実が房になって木という木から垂れ下がっていて、圧巻としかいいようがない。真っ青な湖と赤い実の木々が対照的な色合いで、鮮やかでとても綺麗だった。

 まさしくこの世とは思えまい。


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