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15話 山に入る

 早朝、僕とアーバンはリュックにお弁当のライ麦サンドイッチと(ハムとサーモンをはさんだものでアーバンの大好物だ)プルーンやレーズンなどのドライフルーツに、水を持って出発した。

 ちなみにお弁当は僕が作った。

 僕はなんとなく遠足気分で楽しくなり、前日からわくわくしてあまり眠れなかった。それは木の実を採りにいける嬉しさか、又、あの美しい紅葉の山を眺められる嬉しさか、はたまた、もしかしてひょっとして、おおかみに会えるかもしれないという期待なのか、アーバンとひさしぶりに行動を共に出来るという楽しさなのか、まあ、それらすべてだろうけど。


 僕とアーバンは、麓から登山口までの道のりをゆっくりと歩いた。

 早朝で人の気配はなく、山の遥か向こうにはまだ白い靄がかかっていた。

 薄っすらと靄が晴れていくにつれ、東の方から朝陽が登ってきた

 朝陽の向こうから、荷馬車の軋むような車輪の音が聞こえてきた。耳を澄ませていると、朝靄の中からやってくる樵のタマルおじさんに会った。おじさんは木を切りに山に入るところだったので頼んでみると、彼は後ろの幌に乗るようにと、笑顔で顎をしゃくった。

 それで、登山口まで乗せてもらい、おじさんに礼を言った後、僕たちその先のうっそうと茂る森の中に入っていった。それはぐるぐると山を回りながら頂上のほうへと続く道で、緩やかなカーブが続いていた。その道を僕たちは、いろんな話をしながら歩いた。


 やがて広葉樹の密集した森を抜け、眼下に村を見下ろしながら歩いていると、段々勾配がきつくなり、眼前に急登が続く登山道が見えてきた。僕たちは熊笹を追い払うようにして、その急登を登り始めた。だんだん熊笹の背丈が高くなり、僕たちは熊笹の海に飲み込まれないようにして必死に登った。

 その道をどのくらい登っただろう。僕たちは休憩したくても休憩するにもかなわず、とにかく熊笹の海を抜ける事に必死だった。

 やっと、熊笹の海を抜けるとしばらく尾根伝いに歩く道があって、その先には細い登り道があって、その脇には大小のガレ石が積み上げられていた。

 僕とアーバンはそのガレ石が連なる登山道を見て、ため息をついた。

 きついのはこれからだ。


 僕たちはまずは休憩をとることにした。

 眼前にガレ石の道をみながら、大小の石に別れて腰掛けた。

 リュックから水筒を出し、水をひとくち口に含むと、その甘い感触が体の芯まで染み渡る。

「いや、ひさしぶりの山はきついね。」

 同じようにして水を口にしながらアーバンが言った。


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