番外 ~お嬢様と執事(1)~
―――シルフィール本部・最上階―――
長い金髪をした美しい女性が身体の幅の三倍はありそうな豪奢な椅子に座り、傍らに付き従っている執事と思しき短い銀髪の若い男とやり取りをしている。
「お嬢様。舞踏会への招待状が届いております」
「捨てなさい」
「帝国貴族の方々から縁談が……」
「燃やしなさい」
「我がギルドへの苦じょ……」
「埋めなさい」
「……最後までお聞きにならないで宜しいのですか?」
「私は、一度口にした事は覆さないの。私はラミエル。26代目、エスチュード家当主
ラミエル・エスチュードよ」
ラミエルは腰に手をあて、ポーズを取る。
「ご立派でございます、お嬢様。お父上も、草葉の陰からお喜びでいらっしゃいましょう」
「まだ死んでない」
「これは私とした事が。ああ、ちなみに私は執事のビリー、でございますよ」
「……知っているわ」
「光栄にございます。では、明日からと言う事で」
「何がかしら?」
「お父上が草葉の陰で……」
「そもそも、何故草葉の陰なの?」
ラミエルは顎に人差し指を当て、考える。
「と、申しますと」
「死んだ人に使うでしょ」
「人が土葬されて草葉がほくほく、でございます」
「もう少し、具体的に話せないかしら」
「失礼いたしました」
「で、何なの?」
「人は、栄養豊富でございます」
「なるほど」
「草葉は、栄養を必要としております」
「確かに」
「これぞ、理想的な関係かと」
ビリーは顔を赤らめた。
「それで、死んだ人か」
「流石はお嬢様。ご明察でございます」
「で、何故、父が草葉の陰なの?」
「先程、埋めなさい、と」
「誰が」
「お嬢様でございます」
「言ってないわ」
「それは不可思議でございますね」
「気になるわ、確かめる方法はないかしら」
「一つだけございます」
「何かしら」
「先程やった事を、もう一回やるのでございます」
「名案ね」
「では参ります」
「いつでもいいわ」
「コホン。―――アイウエオイウエオアウエオアイ……」
「早くなさい」
「畏まりました。―――お嬢様、舞踏会への招待状が届いております」
「捨てなさい」
「帝国貴族の方々から縁談が……」
「燃やしなさい」
「我がギルドへの苦じょ……」
「埋めな……くてもいいわ」
「……最後までお聞きにならないで宜しいのですか?」
「私は、一度口にした事は覆さないの。私はラミエル。26代目、エスチュード家当主
ラミエル・エスチュードよ」
ラミエルは腰に手をあて、ポーズを取る。
「ご立派でございます、お嬢様。お父上も、お喜びでいらっしゃいましょう」
「でも、報告はきちんと行うべきね」