第10話 エルフの少女、仲間になる
「……本当に倒したの?」
少女が震える声で聞いた。
「うん」
「ブラックドラゴンを?」
「うん」
「一人で?」
「うん」
「…………」
少女が頭を抱える。
「ありえない……」
「そう?」
「ありえないわよ!」
突然、大声を出した。
「ブラックドラゴンはSランク冒険者が何十人も集まって討伐する存在なのよ!」
「でも倒せたし」
「そういう問題じゃない!」
少女は立ち上がった。
「私はエリシア」
「エリシア?」
「ハイエルフよ」
やっぱり。
エルフだった。
「助けてくれてありがとう」
「気にしなくていいよ」
「……あなたの名前は?」
「レオン」
「レオン……」
エリシアが俺を見る。
そして突然。
俺の手を握った。
「え?」
「あなたについていく」
「……え?」
「あなたの力が必要」
「いや、俺はFランク冒険者だけど」
「それは嘘よ」
「本当なんだけど」
「Fランクがブラックドラゴンを一人で倒せるわけないでしょう!」
「…………」
正論だった。
俺は困った。
「でも、エリシアはどうして襲われてたの?」
エリシアの表情が曇る。
「……魔王軍」
「!」
「森の奥に、魔王軍の拠点があるの」
「魔王軍が?」
「ええ」
エリシアは俺を見る。
「あなたが倒したドラゴンも、魔王軍によって操られていた」
「……なるほど」
俺は森の奥を見る。
黒い魔力。
確かに感じる。
「行ってみる?」
「え?」
「魔王軍の拠点」
エリシアが驚く。
「危険よ」
「大丈夫」
俺は笑った。
「俺、強いから」
「……ふふっ」
エリシアが初めて笑った。
「本当に変な人ね」
「よく言われる」
「じゃあ――」
エリシアは俺の隣に立つ。
「私も行く」
「いいの?」
「あなた一人では心配だから」
「ありがとう」
こうして。
俺に初めての仲間ができた。
だが――
森のさらに奥。
そこには巨大な地下施設が存在していた。
魔王軍の研究施設。
そして、その最深部。
一人の男が水晶を見つめていた。
「……ブラックドラゴンが敗れた?」
「はい」
「誰に?」
「十歳ほどの少年です」
男の目が細くなる。
「名前は?」
「レオン・アークライト」
「…………」
男はしばらく黙っていた。
そして――
「ついに見つけた」
口元に笑みを浮かべる。
「勇者の器を」
その言葉と同時に。
地下施設の奥で――
何か巨大なものが目を開けた。
赤い瞳。
漆黒の身体。
そして――
魔王軍の紋章。
「第六魔将を呼べ」
「承知しました」
「少年を――」
男は笑った。
「必ず生け捕りにしろ」
こうして。
レオンの知らないところで――
世界最初の戦いの幕が上




