嫁ぎ先にブラコンの義姉がいた場合の対処法
「こんな所にほこりが残っているわ!グレイブがこの環境で過ごすのよ!体に何か悪影響があったらどうするのよ!」
「料理が全然だめ。美味しければ良いってもんじゃないの。栄養があれば良いってもんじゃないの。愛情が足りないわ。あなたそれでもグレイブを愛しているの?毎日こんな料理を食べさせられているグレイブが可哀想だわ――もちろん料理人に頼るのはもっとダメよ?グレイブに平民の作った料理なんて食べさせられないもの!」
「あなた、礼儀がなってないわ。――いえ、所作の話じゃないの。何かこう、にじみ出る相手を見下している感じというか。とにかく、心から相手を敬いなさい。いい?来客の人にとっては、あなたの態度がグレイブの態度に直結するのよ。あなたのせいでグレイブの評価が下がってしまうの。そんなの困っちゃうわ」
夫の姉、ライラさんは、一日三回私に苦情を言うノルマでも課せられているかと思わせるほど、頻繁に重箱の隅をつついてくる。
夫に相談しても「へ?理不尽な事言われる?――それ、アルーナが悪いのに真面目に反省してないだけだろ。ライラの方が優秀だからって妬まず、しっかり言うこと聞くべきだ」と相手にしてくれなかった。
だから私は黙って理不尽な命令を聞くより他なかった。
「あなた、グレイブの仕事に口を挟んでるんですって?なんてはしたない。女は夫の仕事に関わっちゃいけないのよ!」
ノックもせず、ライラが私の執務室に押しかけてきた。仕事中だから誰も通すなと侍女には伝えていたはずなのに……まぁ侍女を責めても仕方がないわね。ライラの方が、この家で力があるのですから。
「ですが、グレイブ様から食糧問題を解決する仕事を任されており、本日はその件で商人が訪れるので準備を……」
「それを優秀なグレイブが本当に望んでいると思うの!?どうせあなたが物欲しそうな目で見るから、情けをかけてグレイブが渡してきたのよ!」
「はぁそうですか」
早口でまくし立てるライラ。私はただ頷くことしか出来ない。
「分かったならさっさとそのペンを置きなさい!」
「かしこまりました――念のため、私が仕事を止める旨をグレイブ様にお伝えいただけないでしょうか?」
「いいわ。それぐらいやってあげるわよ――だけど、いい?二度と仕事なんて女がやっちゃいけないわ。肝に命じておきなさい!」
大きな音を立てて閉まるドア。
私は一つ大きなため息をつくと、侍女に中止伝令用の早馬を出す指示をした。これで商人の方が来られることはないだろう。
肯定的に考えればやることが一つ減ったのだ。むしろありがたい話かも知れない。私はそう思うようにした。
「アルーナ!これは一体どういうことだ!」
あれから数ヶ月経ったある日の事だった。気持ちよく昼寝をしていた私の部屋に、グレイブとライラが飛び込んできた。その後ろではアワアワしている私の侍女。――大丈夫、あなたのせいじゃない事は分かっているから。
私はベッドから上体を起こし、立ち上がる。
「どういうこと、とは?何の話でしょうか?」
「食糧問題の件だ!何も解決してないではないか!もう民の不満は限界に近い!お前の実家のレストルド男爵家が食料を供給しているからなんとかなっているものの――商人と話をつけて遠方から食料を運んでもらう約束はどうなっている!」
「え!?ライラ様から女性の仕事ではないからと、止めるよう言われたので――それにライラ様に伝言をお願いしていたはずですけど……」
私の発言に、グレイブは隣にいるライラに目をやる。すると、突然ライラは目元を抑え、グスングスンと鼻をすすり始めた。
「ひ、酷いですわアルーナ様!自分の責任を私に押しつけるだなんて!」
「え?でもライラ様」
「アルーナ!貴様ライラに罪をなすりつけようとしたのだな!ありえん!――離婚だ!離婚してやる!」
激怒するグレイブ。それを見たライラ様はさっきまでも泣き真似はどこへやら、勝ち誇った顔でにんまりと笑う。
「離婚は承知いたしました。――ですが、私ライラ様に責任を押しつけてなどおりません」
「なっ!まだ私に非があると主張するの!?あきれた女!証拠でもあるのかしら」
「――ええ、証拠ありますわよ」
私はそう言って、部屋の隅に置いてある机まで移動し、引き出しを開ける。
「ちょうどライラ様が執務室に来られたとき、私は商人の方とお話する準備をしておりまして――もちろん報酬額等、書類関係も準備していたのですが、誤解が生まれないよう部屋の会話の記録も残しておこうと録音石の準備もしていたのです」
私は引き出しから録音石を取り出すと、魔力をその石にすこし注いだ。
石は「あなた、グレイブの仕事に口を挟んでるんですって?なんてはしたない。女は夫の仕事に関わっちゃいけないのよ!」とライラの声で騒ぎ始めた。
ライラの方を見るグレイブ。目を見開き、録音石を親の敵かのように凝視するライラ。
「グレイブ様の指示どおり、ライラ様の言うことをしっかり聞いておきましたわ。全てはあなた方の指示どおりの結果です――あぁ、離婚先から支援は期待しないでくださいね?」
私はにっこりと笑ってそう言った。
ライラもグレイブも、言葉を発することはなかった。ただ、重たい沈黙を続けている。私は軽やかに彼らの間を通り、部屋の扉から外へ出た。もちろん録音石を持って。
扉の外から気持ちのよい風が流れ込んでくる。
あぁ、なんてすがすがしい気分なんでしょう!
最後まで読んでいただきありがとうございます!少しでも面白いと思ってくださったら、ブックマークと下の☆で評価をしてくださると嬉しいです!
応援宜しくお願いいたします!




