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  作者: 啼キ 落兎
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第一話 月の光

本能に生きた者は獣になった

 本能に抗った者は神となった

 本能に生き、愛を知った者は龍となった

 本能に抗い、欲を知った者は悪魔になった

――――――

「かんぬきさん、かんぬきさん、この門を開けてください。そしてお顔を見せてください」

今日も私を訪ねてきたのだろう。いとおしい声で。だが、私は何も答えない。それが彼女のためになると私は知っている。

 「今日もかんぬきさんはここを開けてはくださらないのですね。」

 沈黙で返す。

 それが、覚えてもいない魔女との記憶に残る日課だ。その考えは当たりのようで、魔女は沈黙を聞くと城門の内側、私と向かい合わせの場所まで来て腰を下ろし、何も語らぬとわかりきっている私に色々と話しかけてくる。その度、沈黙にうなずき一人で話を進めていく。

 これもいつものことなのだろうか。

 この城門さえなければ親子の様に見えるだろう。寡黙な父と無邪気な娘然といった感じの。

 魔女は私に聞かせてくる。城内での食事の話。南門での話。読んだ本の話。

 つい返事をしようと口を開くこともあるがその度に思い出す。

 ここは大陸の中央に引き裂くクラークト谷。その東に位置する魔女の城、北の城門。

 私は『(かんぬき)』。城内の魔女と世界を分かつ者。そして、彼女が悲しまぬよう、ここを守る守護者。

 閂は人ならず。人ならざる者にものを話す舌はない。人となるのは守護者のとき、月が光る真月のときのみ。そう、私は閂なのだ。ここに立ち、とうに二千年はすぎた。始めは毎夜、城門に印をつけていた。数が増え、数えるのも面倒になったころには前の日の記憶すら思い出せなくなった。

 絶望。すべてを忘れてしまうのだと。その時に印をつけるのもやめてしまった。

 結果的には閂となる以前。そして、以降から少しの間の記憶は今なお覚えている。前の日の記憶はなくとも、私が私であるとは自覚できる。


 少し離れた場所からフクロウの声が聞こえる。

 いつの間にか夜が更けていた。魔女は話しくたびれたのか既に城の中に戻ったようで気配は感じられない。

 昼間は肌を焼く夏の光が今は涼しい夏の夜風。それと、眩いほどにまぶしく夜闇の中で自身の存在を見せつけるように輝く月。

 今日は空気に湿り気がなく、周辺の木々が開けているのでよくわかる。

 月の光が強くなっている。

 明日は真月。

 1日違い、たった数刻。数刻で彼女と…。


 夜風の旋律にフクロウが唄い始めた。久しぶりにお客が来たようだ。できれば、今日の暗い夜でなく、明日明朝の幸運な私に会いに行ってほしい。今日の不幸な私は今日死ぬのだ。

 足音はそんな私の思いを受け入れなかった。

 だから役割は果たす。

 「魔女は不滅。我が屍を越えようと無意味。願わくば国へ帰れ。」

 この言葉のみは閂の仕事として許されている。この言葉は紛れもなく事実だ。帰って欲しいがどうせそうはならない。北の城門橋上で各々魔女を殺す方法や殺さねばならぬ理由などを招いてもいない客人が語っているのが決定的だ。

 そんなものは存在しない。きっと王族・貴族に騙されでもしたのだろう。もはや害をなさない魔女を殺して何になる。無駄を無駄だとわからない客であっても人。『もう人殺しをしたくはない』


嘘つき

嘘つき

嘘つき


蛇と獅子と狼が混ざったような声が頭の中をつつき、そこに内蔵をかき回す不快さが加わる。昔はそうだった。しかし、この瞬間はまともに動くことも少ないこの体が確かに生きていると感じるのだ。

「心地よい」

1人と風景描写のみでもの語りを進めようとしたけど無理でした。辛い…。

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