■ 北海の街レイネーレについて
さて、王都の暮らしぶりについてはこれくらいにして、次にサントクマルク王国内の、別の都市の暮らしについて紹介していきたい。
サントクマルク王国内には王都以外にも幾つか賑わう街というものがあり、その中でも代表的に扱われているのは、北海の街レイネーレであろう。
文字通り、国土北方からさらに北に広がる北海に面した都市であり、古くから北海を中心にした交易拠点の一つとして栄えていた。
ここから流れ込むシルスマリ川こそ、サントクマルク王国の血脈と言って良い程の川であり、物や人の流れを作り出している。
そう、北海からシルスマリ川へと水が流れ込み、南方へと続いているのだ。多少なりとも物を学んできた人々にとって、川の水とは海へ流れだすものであり、一方、このシルスマリ川はそうではない世にも珍しい川である事とて知っているだろう。
だが、それはどうしてかを語る場合、世界の不思議の一つであるとしか知らぬ者もいるはずだ。
この様な不思議が存在する場所に栄えた街があるというのも、サントクマルク王国の特色と言えるのかもしれないが、レイネーレ関しては、その不思議についての種も仕掛けも存在している。だが残念ながら、それへの認知は意外に少ないのである。
珍妙なる景色を目当てに観光に来る人間も多いが、その多くが、飾り立てられたカーテンだけを見て、この家は素晴らしいと言っているに過ぎないのだ。
遥かに広がる灰色の北海と、青きシルスマリ川の始まり、そうしてややオレンジがかった印象のある街並みは、一目見る者には美しいが、一方でそこに暮らし生きている者達にとっては毎日見続け、見飽きた光景でもある。街の景色を語る場合、その見飽きた視点で見る事も、重要では無いだろうか。
勿論、その様な景色が何故あるか、何故そういう風に至ったかについても、そこに住む人々の話を聞けば分かってくる事もあるだろう。
本項では、そのレイネーレで住み、働き、生活を送る人々の話をしていこうと思う。




