■ サントクマルク王都について
まず諸君らにとっては当たり前の知識かもしれないが、我等が王国の中心たる王都についてをここに記していく。
そもそもサントクマルクという名も、かつてはこの王都がある地域を指しているものだった。
国土北方から流れるシルスマリ川が丁度国土の中央を通る地点。そこが流通の拠点として……いや、そこの利便性がもっとも高く、またそこを中心として、同一の文化を広めていく事が可能であった地域が、後のサントクマルク王国となったと呼ぶべきか。
何にせよ、そこが王都になる以前もまた、他国の都市と比しても栄えた街であったろうし、さらにその以前とて、人がごく自然に集まる場所であったろう。
その場所の今の名こそ、サントクマルク王都である。
王都を訪れた者が目にするのは、正門より見えるアデリ調の、古めかしくも質実剛健な石造りの街並み。
進む大通りには数多くの酒場、宿、日用品店等々が並び、出店だけでも日々、移り変わりながら、飽きの来させない品々を揃えている。
さらに大通りを奥へと進むと、そこには王族や貴族、行政官が国を左右する決定を行う宮殿と、神事を主に取り扱う教会が並ぶ区画へ……などと語り続ければ内容が尽きる事も無いが、その手の美しき街並みを語る者は多いだろう。
我が輩がここに長々と書き綴らなくとも、どこかのだれかが既に、もしくは明日にでも、それを本として残す可能性が高い。
だが、最初に宣言した通り、我が輩が書き残す事を望むのは、この国に生きた人々の暮らし、生活である。
故に語り尽くせぬ事柄の多くは、凡百の者に任せる事として、我が輩はここよりまず、王都の暮らしというものについて、我が輩が独自に人々から聞き回った内容を、書き進めさせて貰おう。




