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鬼ぼっこ  作者: 秋桜


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新しい朝


用意していただいた夕飯を食べながら、潔は話し出した。


「この話をするのも3年ぶり、沖が来た時移行話す機会もなかったな」

そういって箸を動かせながら言う潔は、何処か楽しそうにも見えるところを見ると、人と話をするのが好きなのだろう

おずおずと緊張気味に話を聞く姿勢を見せる春をみて「ゆっくり食べながら話をしようじゃないか」と言いながら、味噌汁をすすった



まず、この世界には鬼という存在がいる。

鬼はどういうわけか、”人間”のみを対象とした生き物にしか興味を示さず、家畜や鳥には全くと言って良いほどに関心がなく、もちろん襲うこともない。

鬼は人間を食べるわけでもなく、連れ去るわけでもない。


ただ”殺す”ことにのみ執着する。


「執着と言っても異常でね。前に木蓮は、鬼を殺した後その鬼が宙に投げた刀が降ってきたと話していた。ここも使えると見える」

トントン、とこめかみ部分を軽く指でたたく仕草を見せた。


「沖も頭を狙ってやられたことがある」と言って隣にいる沖に視線を送るが、だんまりを決め込むかのように無視して食事を続けていた。


「軽く鬼の知識を教えたよ。話はここまで、さぁ食事を頂こう」






布団の中、天井をぼうっと見つめながら、年が近そうな沖のことを考えていた。

彼はあの年でしんがりを務めているのだという


『お前さ__』


「!」


突然、記憶の中で誰かが何かを言ってきた。春に言っている。

なんだと考えているうちに、記憶は奥へ奥へと逃げて行ってしまう。


「あぁもう…っ、俺は誰で、何なんだ」


気づけば、夜はすっかり明けていた。


薄い光が障子を透かして、部屋をやさしく染めていく。

鳥の声。湯の沸く音。誰かの笑い声。



起きなければ、起きて潔のもとへ行かなければと思い、布団から体を起こす。

その時だった、障子がスス…と音もなく開き、廊下から男が声をかけてきた


「起きてたか、飯に行くぞ」


既に服を整えている沖が、春を見下ろしている。

なぜだろう、沖はなぜか異質というか、不思議な雰囲気があり気になってしまう。と春は思った。


「お、おはよう」


ぎこちなくだが徐に春は口を開いた。

挨拶すれば帰ってくるだろうと考えたが、そんな常識は沖には伝わらないらしく、沖は春をまるで無視するかのように歩いて行ってしまった。


慌てて布団を片づけて追いかける「ま、待って…っ」と春は言いながら寝巻のまま追いかけた。

髪をなでながら後を追うその姿を、沖は振り返ってじっと見つめる。


「なんだそのだらしない姿は、朝食は木蓮さんも出席する場で身なりは気を遣わなくちゃならない。

覚えておけ薄鈍」

「う、うすのろ…?」


謎の悪口に困惑していると沖は再び続けた。


「お前のように平和ボケしてる鈍いやつのことだ薄鈍うすのろ。お前には、木蓮さんのような威厳も、潔のような聡明さも、みこの様なずる賢さも感じない」

「そ、そんなこと言われても…」


頭をなでながらさらに困惑した。

自分は突然記憶もなく、石階段の上に居て…そこへ木蓮や潔がたまたま通りかかってくれただけなんだけどなぁ、と春はここへ来た経緯をなんとなく思い返した。


「反応も鈍ければ会話もできないのか」

「自分だってさっき”おはよう”って返してくれなかったじゃんか」


ぼそりと呟いたつもりだった春の耳をかいつまんで、沖は耳の中に直接声を落とすかのように

「おはよう!!!」


キーンと頭の中が鳴り響いた。

なんとなくだが、プライドが高いのだろうと春は沖を洞察したのであった。



結局、春の身支度を待ってくれむしろ手伝ってくれることになった。

「お前、袴の着方もままならないのか?適当でいいんだよ」

「そんなこと言われたって、俺平民だったかもしれないし、袴とか上等なもん着方も記憶にないよ」


なんだかんだとあって、着物を着せるのも袴も手伝ってくれた。

「なんか、着たことないような感じする」

「ならお前はただの平民だったかもな。俺も、ここに来た時、袴も井戸の使い方もわからなかった」


袴を整えてくれる沖を見ながら春は、悪いやつではないのだろうと考える。

今日はいい天気だ。青空が澄んでいて、一切の雲も無い。


ぼぅっとそんな青空を眺めながら着せてもらっていると、頭をぼかっと殴られた。

いたた…。と頭をなでている春に、目の前に何かを差し出してくる沖の顔を見た。


「櫛だ、そのみっともない寝癖を直せ薄ノロ」


櫛を受け取り髪をなでる様にとかしていく


「今日はお前を訓練する日だ。潔が監督兼教育係だが、俺も潔の補佐に回る。

潔は忙しいやつだから基本は俺と行動を共にすることが多いだろう」


「そうなんだ」


間抜けな返事をしていると、頭をまたぼかっと殴られる

痛みに耐えながら頭を抑えてると、首根っこを掴まれて食堂へ引きずられていくのであった

目覚めた石階段の場所のように、まだ何も知らない世界がここにある____。

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