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角力狂時代 -埋もれかけた名物力士の再発掘-  作者: 滝 城太郎


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番外編 筑後の角祖  大関 御所ヶ浦 磯右衛門(1729-?)

今回番外編としたのは、御所ヶ浦は活躍期が江戸時代中期ということもあって、あまりにも資料が少なく、

記録も曖昧なところが多いため、走り書き程度の内容に過ぎないからである。福岡県民ですら100人に一人どころか1000人に一人くらいの知名度であり、おそらく相当な相撲好きでも御所ヶ浦を研究している人はいないのではないかと思われる。

 宝暦十年十月の江戸相撲番付に東大関として名を連ねた御所ヶ浦磯右衛門こそ、現在確認しうる福岡県出身の最古の大関である。

 御所ヶ浦の本名は倉吉平太夫といい、代々福岡県瀬高町真木の代官大庄屋を務める由緒正しい家系の出だった。十五、十六歳頃より呉服織右衛門という弟子を百人も抱える地元の相撲指導者に師事しており、師匠からは弟子の中からただ一人職業力士としても大成するだけの力量があると認められていたという。

 父九郎左衛門の晩年には、さしもの倉吉家も不作続きで多くの田畑が抵当に渡ってしまい、家計が苦しくなっていた。父が亡くなると、五男坊の平太夫は食い扶持を減らすためか、職業力士を志願して二十三歳で大阪の勧進相撲に参加した。

 宝暦二年四月場所に荒灘浜右衛門の名で初土俵を踏み、八日間の興行で五勝を挙げると、翌月は京都相撲にも参加し、以後八年間は関西で腕を磨いた。

 当時、大阪には筑後柳川藩邸があったことから、この時期に好角藩として知られる柳川藩のお抱えになったものと思われる。

 身長は一七三センチというから当時の力士としては平均的だったが、大変研究熱心で相撲巧者として一目置かれる存在だった。立ち合いを重要視し、力量が上の力士に対しては時に奇策を用いることもあったが、相手の胸に頭をつける取り口を確立してからは、大兵相手にも力負けせず、一気に押し込むことから、「御所殿の牛首」という異名を取った。

 大阪相撲では関脇まで昇進したが、宝暦十年十月から登場した江戸相撲では過去の実績が加味されたのか、いきなり大関に抜擢され、給金五十両を得ている。御所ヶ浦と四股名を改めたのはこの場所からである。

 御所ヶ浦は異例の高待遇を受けながらも質素倹約に励み、給金はそのまま故郷に持ち帰って抵当に入った田畑を取り戻した。

 江戸相撲の戦績が判明しているのは宝暦十一年十月場所からで、この場所は小結で五勝二敗、十二年三月場所が前頭筆頭で四勝三敗となっている。そこから二年間のブランクがあるのは、参勤交代に同伴して故郷に帰省していたからなのかもしれない。

 宝暦十四年三月場所で久々に土俵に上がった時は十両二枚目で二勝五敗だったが、明和元年十月場所で前頭筆頭に戻り、五勝三敗、明和三年十月場所は前頭四枚目で三勝二敗二分と上位で健闘したものの、以後は急速に衰え、明和六年十月場所、東幕尻での〇勝七敗を最後に江戸相撲を廃業した。

 御所ヶ浦はこれで相撲から足を洗ったわけではなく、そこから大阪に上って安永十年まで幕内で相撲を取り続けたというから、大した持久力である。この時すでに五十三歳であった。

 当時としては稀に見る技巧派で性格的にも謙虚で真面目だったことから、現役時代より教えを乞う力士が多かった。断片的に残る江戸相撲の戦績を見る限り、一場所限りだった番付上の大関は、あくまでも宣伝のための看板大関だったと思われる。それでも江戸、大阪と長きに渡って幕内を務めあげたのは、体力が衰えてもそれを補う技巧があったからに他ならない。


 力士が相手の腕を両上手から極めてしまうことを古くは「泉川」と称していたが、この語源となった出水川貞右衛門は御所ヶ浦の弟子で、明和二年から四年にかけて三度の優勝(相当成績)を誇る強豪だった。

 御所ヶ浦の晩年のことは彼を抱えていた柳川藩にも資料が残されておらず、昭和になって宮崎県に転居した倉吉本家の末裔にも、先祖が力士であったことが伝承されてきたに過ぎないため、いまだに不明なことが多いが、一代で家運を立て直し、立花家より銅鏡を拝領していることから察するに、藩主鑑通の寵愛を受けるだけの実績を残した人気力士だったことは間違いないだろう。

連載中の「角力狂時代」は相撲の決まり手四十八手にちなんで48話で一旦区切るつもりだったが、だらだらと52話+1まで来てしまった。また興味を持ち資料が揃った力士がいれば紹介してゆく所存だが、それまで

はお休みさせていただきたいと思います。

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