召喚・MMOネタ導入
召喚師もしくはテイマーのいるMMOがもっと増えればいいのに。
--------------------------------------------------------------------------------
Hello,player:a-ra
You must download new system for playing this game.
May I download it?
→ok no
thank you! I am downloading. please wait for 5 minutes.
downloading...downloading...downloading...
I compleate! Please enjoy this game!
今考えると、あの新しくダウンロードされたシステムが曲者だった気がする。そんなアップデートの話は公式に載っていなかったし緊急メンテこそあったもののそれはどこかからハッキングを受けたから、という理由だったはずだ。というかせっかく最新ダンジョンの裏ボステイムしたところだったのに意識を失うとか、なんてタイミングで発動するんだ畜生。
そう、今気づいても意味のないことをつらつらと思い浮かべつつアーラは一体の馬に腰掛けていた。
騎乗ではなく、座って―――というよりはむしろ椅子になれるよう体を横たえている馬に腰掛けている。馬は八本の足があり、真っ黒な体に白銀の毛並みをしている。本来なら眼にすることなどない奇形の馬で・・・その名もスレイプニル。現代に存在しているはずのない伝説の生き物であるが、アーラはもはやなにもかもを理解するのを諦めた顔でそのつややかな鬣に顔を埋め、思う存分堪能している。
そもそもアーラだって本来なら存在するはずのない人間である。なぜなら彼女は、倉雪 凛架というちょっと(?)オタクな両親の元に生まれた女子高生が”グロリア・グロリア”通称”栄光”というオンラインゲームで作成したメインキャラであり、スレイプニルはそこに出てくるモンスターだった・・・はずなのだが。いまや凛架の意識はアーラの中でスレイプニルは隣で気遣わしげにアーラに顔をすり寄せる。そして倒れたときの様子からしてネット小説を読み漁っていた彼女にはひとつしか予想が立てられない。
(異世界トリップ・・・ってやつだよねえ・・・)
自分で思っておいてなんだけどうさんくさい上にドリーマー・・・とげんなりしつつ、アーラ(以降、回想以外はこちらの名前で固定)は頭の中に叩き込むまでもなく好きすぎて覚え切れてしまった大量の召喚モンスターとテイムしたモンスターを思い浮かべる。ふむ、と一度頷いて両手を空中に差し出した。
「まあ奇襲対策は基本かなあ・・・死にたくないし・・・ほんと、どうしよ・・・とりあえず、おいで。ティミー」
ぽむ、と間抜けな音と共にアーラの両手に収まった兎のようなモンスター。ティミーがそのまま種族名でありその能力は策敵特化。敵で出てくる場合は常に他のモンスターとセットで現れアイテムおよび下位スキルによる奇襲や潜行を無効にする一部職にとっては非常に嫌なモンスターである。ただそのスキルの性能からテイマーには人気だった。
小さくため息を吐いてアーラは思い出す。最初はまだ実装予定だったサマナーに惹かれ、入念に下調べをしてキャラメイクをした。初期のマジシャンではサマナーの必要条件を満たすためにステータスは魔に極振りで次のテイマーではそれまでに出てきた敵を全種類捕獲。加護神に信仰値を捧げ能力値を上げスキルを取る。ギルメンに支えられつつ無課金でサマナーまでたどりついた時の感慨は言い表すことなどできないだろう。あえて言うならばなぜ運営はサマナーにこんな無茶な条件付けをしたのか、せっかく普通のMMOとは違い捕まえがいのある美貌のモンスターまみれだからと誘った友人はみな別の道に行き、結局サマナー布教はならなかった・・・まあ、そのおかげでマイナー神となった加護神の第一の信者兼女教皇の位、そしてそれに付随するとんでもない恩恵を手に入れられたのだけれど。
まあ過ぎたことを言っても仕方がない、そう再度ため息を吐いてアーラは立ち上がった。肩にはティミー。長い耳をひるひると震わせてあたりの気配を探知する可愛い相棒を指先で一撫でして自分と同時に立ち上がったスレイプニルの背に跨る。鞍?信頼しあうテイマーとモンスターの間にはいかなる道具も無用である。まあ実際はアーラの体が頑丈であるため平気なだけだが。
頭の中に住み込んでいるモンスターリストとアイテムボックス、そしてゲームマップを思い浮かべながらアーラは指示を出す。
「とりあえず、北へ行こう。もしココがゲームの中なら領地がそっちにあるはず」
なかったらなかった時のこと、と小さく呟いてアーラはスレイプニルを走らせた。
果たして、町はあった。それもきっちりしっかりアーラの記憶と寸分違わぬ形で。
喜んでいいのか悲しんでいいのか、とりあえず自身の領地に入るべく町―――ではなく、町へと続く道を途中で逸れた先にある洞窟へと入っていった。中に入れるわけにはいかないのでスレイプニルを戻し、ゲーム内では一応非戦区域だったはずだが万が一のためにティミーだけを肩に乗せて暗いが画面越しに通いなれた洞窟をさくさくと進んでいく。
着いたのは、最奥にある注連縄の締められた巨岩を祀っている台座だ。アーラは巨岩の前に立つと頭の中でスイッチをカチンと切り替える。
途端にざわり、とアーラの黒髪が蠢いた。
そして数瞬もしないうちに優しく波打っていた美しい黒髪が一本残さず絡み合う無数の赤い目の蛇へ、瞳は煌煌と光る金色、肌は人とはかけ離れた硬いものへと変化。そう、アーラはプレイヤーはプレイヤーでも種:魔種、族:魔眼族の立派な魔族プレイヤーだった。
”栄光”の最大の特徴にして最大の売りがこれである。プレイヤーは最初の種族選択において強制的に種族を割り振られ、それぞれの種によって視点を変えてワールドクエストに挑むというのが一般的な楽しみ方だ。当然、ステータスの伸びや種族特有の固有スキルもあるのでお目当ての種族が出るまで作り直し間まくる人間もいる。アーラもその一人だった。とは言っても、アーラは魔族かつ魔力の伸びさえあれば良かったのだがその結果未発見であり今に至るまで最もテイマー向きとされるレア族が当たったのは幸運だった。
過去を振り返りつつ種族エフェクトをオンにして岩に触れる。と、いくつものウィンドウが頭の中に浮かび上がる。人に擬態することができる種族エフェクトのオンオフはクエストの時には便利だがオフにしていると領地に入れないのだ。そしてオンにしていたとしても本人認証が必要になる。領地に他プレイヤーが間違って、もしくはPK目的で入るのを防ぐためとはいえ面倒だとアーラは視界に入る蛇を軽く掻き上げて思う。そしていくつもの認証を簡単に終えてシステムメッセージに表示された時間を見て硬直した。
『前回領地に入ってから1024年150日経過しています。信仰値、信仰ポイントが上限値を超えています。発展が最大になっていますのでそれに伴って各施設も最大になっています。領地主の長期の不在により統治NPCが執務を代行していますので、ご確認ください』
「・・・いや、あの、ええと・・・ちょっと待ってほしい・・・」
崩れ落ちorzの形を取ったアーラをティミーが不思議そうに見ていた。