暗黒聖女
若干会話がグロいです。異世界ファンタジー宗教物。主人公は現地人。
世界唯一の宗教国・アウテリオス神聖帝国。その首都にある神殿(この国では王宮と同義)の最深部に在る祭壇の間にて、今現在、歴代法皇(この国では皇帝と同義)の名の下に認められ、今もなお生存している“聖人”たちが一同に会していた。
“聖人”とは、別名を“神の愛し子”とも呼ばれる奇跡の体現者たちである。
その名を呼ぶことすら一般人には恐れ多く、たとえ皇帝や法皇であろうとも家名までしか呼ぶことを許されない特別な存在。現状で確認されているのは十人だけであり、“聖人”の間でだけ通用する位階で上下を定めあう。
「…さて、と。全員集まったみたいだね」
この世の誰も敵わぬ美しい微笑を浮かべた、男とも女とも、年齢さえあやふやな麗人が口を開く。
位階の七・レヴァリエリュ=エーランゼ。生きた芸術にして“偶像”と呼ばれる人物だ。
「今回はテメェが仕切るのかよ、ロクな話じゃなさそうだナァ」
「同意。“偶像”ノ話ガ良カッタコトハナイ」
片言の二人…ある程度違和感なく喋る大男・クザーファ=アルバルと、完全に発音のおかしなオッドアイの美少年…ナルネーヴィ=ゲルティアムが嫌そうな呟きを漏らす。クザーファは位階の五・“断罪”、ナルネーヴィは位階の六・“救済”であり、レヴァリエリュよりも高い位階にあるためにレヴァリエリュは鼻を鳴らすだけに留めた。
「ふん、私とて話したくて話しているわけではないんだけどね」
「まあまあ、お三方とも気を落ち着けてください」
喧嘩しに来た訳じゃないでしょう、と位階の十・紀央=征璃(キオウ=マサリ)が言い、無言で位階の九と八・メルル=シューセとマリリ=シューセの双子姉妹が頷く。それぞれ渾名は“迷路”、“退屈”“愉悦”。まだ“認められた”ばかりの新人だ。
そんな下位の人間に宥められたことが気に食わなかったのか、レヴァリエリュの眦がつり上がる。
「君たちに言われるまでもない、黙れよ」
吐き捨てるような声音に双子はびくりと震えるが、紀央はへらへらしたまま上位の人間に対する礼を取った。
「それは失礼をいたしました“偶像”殿」
「…黙れっていったんだけど、聞こえなかったかなぁ」
「お前たち、いちいち喧嘩するでないよ」
深い年輪を感じさせる声が二人を止める―――位階の三・ケーリング=アルレズイス、“賢者”にして法皇の育ての親。発言権の強さとしてはこの中で二番目である。法皇の育ての親であり、位階の二・玖蓮=雍(クレン=ヨウ)が“静寂”の名の通り意見を表すことがないこともあって位階より高い発言権になっているのだ。
「はいはーい、“賢者”殿の言うとおりにー」
「わかりました…」
二人はあっさりと引き下がり、ため息を吐きながらレヴァリエリュは本題に入った。