出戻りお姫様
離婚されたお姫様が出戻って頑張るお話
セレエナ・シューヴァイゼ・クレスト。誇り高きクレスト王家の第三王女にして、一ヶ月前にブレゼル王国の王である夫のハルヴァータ・ヴェルスト・ブレゼルに浮気されてさっくり離婚して(慰謝料で国庫の半分空になったらしい)出戻ってきた悲運の王女・・・と、巷で今一番人々の口の端に上る存在。それが私だ。
まあ正直そう言われるのも頷ける話だ。傍から見れば政略結婚の挙句浮気されて身一つ(慰謝料は貰ったけど国に帰ってくるときにお供の一人もいなかった)で放り出された王女だしね。
でも、実はそんなに可哀想でもなかったりするのだな。
むしろ今回は元夫に同情してしまいたいくらいだったりする。なにせ私は美形王家と名高いクレスト王家で数少ない平凡顔。しかも母親は平民出身の第四妃。おまけにお互い愛情もなく、あくまでも国のためだけの結婚ですることはしてたけど大して熱も入ってなかった。だから本当は、一応王妃の最低限の義務として言葉では諌めながらも多少は見逃す・・・というのもおこがましい話だが、元夫の浮気はクレストの人間には黙っているつもりだったのだ。実際、かなりの数を見逃しもした。
しかしながら、誰が密告したのかは知らないが見事に元夫と現在その寵愛を一身に受ける美女の逢瀬はすっぱ抜かれた。せっかく黙ってるのだから空気読んでよマスコミ!と思わないでもないが、油断してた元夫も悪いだろう、うん。
で、この報せが一番に入ったところが王でも私でもなく実家であるクレスト王国だったという、なんともきな臭いような力関係が伺えるような、そんな事実もあったりする。ま、さすがにレジェス帝国には及ばないものの、その同盟国内では上から十番以内には入っている実家(クレスト王国)と良く見ても五十番より上には入れない婚家(ブレゼル王国)では比べるほうが酷な気もするけれどね。
とにかく、私はみそっかすとはいえ元夫とブレゼル王国にとっては賓客(?)でもあったので、この浮気騒ぎを証拠写真と共に持ち込んできたクレストからの使者に完全にパニックに陥っていたようだった。ちなみに伝聞形なのは私はその時使者と共に来た姉上の接待をしていたから。アルジェ異母姉さまというのだけれど、立派な軍人で将官でもいらっしゃるすごい方だ。第二妃のお産みになった方で(他の異母兄弟姉妹もそうだけれど)私と母上にも優しくしてくださる良い方だ。
・・・話が逸れた。ええと、ブレゼル王国がパニックになったのだけれど、その結果元夫の寵愛を受けていた方も呼び出されて大変な愁嘆場になっていたところに私がのこのこと顔を出してしまったので更にその場が混乱してしまって。
もう面倒になってしまったので、じゃあ離婚しましょうといったときの周りの顔と言ったら!
もう唖然とした様子の周りを置いて、寵愛されていた方だけがありがとうございますと繰り返しながら泣いていたのだけれど、彼女、気づいていなかったんだろうね。
私は、あの国とクレスト王家との同盟の証であり、私と彼の婚姻には盟主である帝国の面目が少なからずかかっていたりもした。その結婚が潰れるとなったら最も困るのはあの国なのだ。
私とクレスト王国には一切傷はつかない。私は既に何度か床を共にしており、浮気についても苦言を呈した。国のことについてもよく勉強していたし、自国と違うからと当り散らしもしなかった。これで対外的に私は良い王妃となっていたのだから、今回のことは全面的に元夫に非があることになる。あちらで私の身の回りのことをしてくれていた子などは泣いて慰めてくれた。いや、私は微塵もダメージなかったのだけれど。
それで、そんなこんなで大パニックのうちに離婚は成立し、私は一人馬車に乗って帰ってきたというわけだ。
「・・・だから、私は私がそんなに可哀想でもないと思うのですよ」
そう言っても父様の眉間の皺は減らない。さてはてどうしたものか。
出戻ってきた一ヶ月前から何か慌しいと思っていたら、まさか戦争の準備をしていたとは。迂闊だな私。普通こういうのって戦争物だと知識では知っていたのに察知できなかった。
「しかしな、セレエナ。お前というものがありながら、断りもせずこそこそと一夜の遊びを繰り返すなど」
あ、お父様は報告していたそうだ。さすが夫婦というより盟友な第一王妃。そこに痺れる憧れる―――願わくば私もそんな夫婦になりたかったのだけど。
いえ、それはもう過ぎたこと。今はとにかく戦争を止めなければ。
「お父様、私、こんな形で名を残したくはありません」
「確かに、妾でも嫌だわねぇ」
アルジェ異母姉さまが私に優しく微笑むが、すぐにそのお美しいお顔は獲物を狩る猛獣に変った。ひぃ。
「でもね、セレエナ。姉さまは貴女や父様、ひいてはこの王国に関するものを侮辱するものなど滅べばいいと思うの」
きゃーあ、アルジェ異母姉さまが本気で怒ってる!
異母姉さま、家族愛の強い第二王妃の元で育っただけあって、ご自分に繋がりのあるものをすっっっごく大事になさる方なのだ。
以前、第三王妃(元メイド、王宮に勤めにこれるのでかなり裕福なお家の出)のご子息を召使の息子と蔑んだ貴族がいたのだけど、その結果筆舌に尽くしがたい惨状が生まれてしまった。・・・異母姉さまは、精神的なものは勿論のこと、肉体的にも相当、大変、異常に、お強いのだ・・・。
途中なのでまた続きを書くかもです