06
「これは嘘じゃない、僕は君の結末を知っているんだ。」
「それを変えに来たんだ」
ルドル・グレンドの告白。
それは俺が求めていたものだった。
「もしかして、あのゲームを知っているのか? ユリーが死なないならどうすればいい?」
俺はルドルに問う。
「どうすればユリーは殺されない、処刑されない? 悪役令嬢ではなく、幸せな人生を送れる?」
「分からない。けど君を、僕は殺したくない」
◇
俺たちは茶会を抜け出す。
そしてある橋の下、川の前に座り込む。
ルドルは石を投げると、その石はちゃぽんと沈む。
「んで、お前はあのゲーム知ってるんだろ?」
俺はユリーとしての振る舞いを捨て、優理として彼に、
「俺は死にたくない、ただユリーは悪役だ。例え悪役じゃなくても、死ぬ。それが彼女が悪かろうとそうでなくてもだ。ゲームの製作者が、必ず殺す為に作ったキャラだ」
「……死なせないよ、僕はユリーが好きなんだ」
彼はまた、石を投げ入れる。
「あのさ、なんでユリーが好きなんだ?」
「言わなきゃだめかい?」
また一つ投げ入れる。
「別に興味ないけどさ、ユリーは悪役だし、面はいいけど、いい性格してないんだぜ」
「君はユリーのことが嫌いなのかい?」
「好きも嫌いもあるか、俺だぜ。そういう問題じゃないだろ」
「そういう質問じゃなくて、好きか嫌いかを聞いてるんだ」
俺は立ち上がり、そこらの石を投げた。二、三度跳ね返り、それは沈む。
「嫌いじゃないよ、いいやつだとは思わないけどさ。でも救われない、救われる世界線がないっておかしいだろ。こんな可愛いのに、こんなにしっかりとしたキャラなのに」
「俺、優理っていうんだけどさ、俺と似た名前のやつがあんな結末しかないの、嫌だよ」
ルドルは、石の行く先を見るのをやめた。立ち上がった俺を、静かに、
「優理って言ったか?」
俺は「ああ」と、
「お前、千歳優理か? もしかして千歳か?」
即質だった。
俺はそれに「ああ、俺は千歳優理」と即答。
「僕だ。僕は浅川だよ。岡太郎だよ」
こいつ、あいつなのかよ。
俺にこれを貸した、浅川なのかよ。
「おい優理、なら余計に死なせるわけにはいかないな」
「その為にも、僕と結婚して守られるべきだ」
言いたいことは分かる。こいつは王族騎士団団長、この国でもトップクラスの力、特に武力的な権力を持っている。なら俺の答えは、
「お前の為なら僕はなんだってする」
「分かった。全て理解した」
「結婚しよう。俺の命のためにも」
こいつと結婚する。