04
エルベス王国庭園、お茶会会場。
優理ことユリーは待っていた。
お茶会が始まるのを。
◇
お茶会。
それは、ユリークラッドにとって珍しくもないことだ。
お嬢様である彼女は、招くことも招かれることにも慣れていた。
だが、今回は違う。
俺・優理にとっても、悪役令嬢・ユリーにとっても、初めてのことなのだ。
緊張する。緊張する。
だいたいこういう時は、時間が極端に感じる。長いか短いか。
(あちぃから早く終わってくんねえかな、てか室内でやれよ)
天気は、憎たらしくも晴れており、この白く美しい肌にダメージを与える。
男だった時はどうでもよかったけど、こうも俺、ユリーって綺麗だと気にしちゃうよね。
こんなに綺麗で、優しくて、周りもいい人ばっかなのに、なんで処刑されるような人生を、主人公にだけああだったのか、分からんな。
そんな、幾度と考えたことを思っていると、暇な時間が終わった。
壮大な曲と共に、ある男が騎士たちとこちらに向かってくる。
エルべス王国、王子。エル・エルベス・マーク。
とその妹、エル・エルベス・エレナである
名目上は王女エレナ主催となっているが、この茶会は実は違う。
ここにいる貴族たちのどれくらが知ってるかは知らないが、ゲームをやっていた俺は、この茶会が王子マークが、ある女性を呼ぶために開いたおまけなことを知っている。
主人公、メルだ。ある事件で出会い、一目惚れした彼女を呼ぶためのお茶会。
マークが身分上、簡単に会えない、面識のないとされている彼女と会うための手段にすぎない。
庶民の彼女がここにいるのは場違い、周りから見ておかしくないかって?
場違いである。けど追い出されることはない。
この茶会は、最初の招待状の封を使いまわすことがルールとなっている。
王から王国貴族へ、王国貴族から一般的な貴族へ、貴族からさらに誰かへと流れていく。
招待されたものが、次の招待するものを決める。その流れを、もらった封によって違うが、数回行っていくのだ。この時、自分より下の身分の者しか招待はできない。それが作法。王国主催の会はだいたいこの決まりだ。必ず、招待するものは身分が自分より下の者。上の者、同列の者に招待状を送ることはとても失礼なことなのだ。
それ故、身分が極端に差があるものがいても、ある程度ならおかしくはないのだ。それでもメルほどの庶民が来るのは多少珍しくはあるがだ。
王子、王女のありがた~い挨拶が終わると、王国の使用人たちが、俺たちが並んでいたくそ長いテーブルに茶と菓子を並べるのだった。
さてと、俺も頃合いを見て、殿方たちが先に頂いたのを確認してから、コップに口をつける。
ほんと、いちいち決まり事があって面倒だ。
「やあユリー、はじめましてかな」
茶から口を離し振り返ると、そこには私に手紙、もといラブレターもどきを送ってきた騎士団長様が。実物は、ゲームよりさらにかっこいい……かもな。
「はじめましてユリーです。えっとルドル・グレンド様」
「はは、ルドルでいいよ、私と君の仲じゃないか」
「仲ですか? どこかで会いましたか? 私、ルドル様のこと騎士団長ってことしか知らなくて」
ルドルは鋭い目で俺を、まるで本物の宝石か見分ける職人のような目で見て、
「これからそういう仲になりたいってことさユリー」
俺は寒気がした。このイケメンな男、ルドル・グレンドに。
ほンんんんとうに、ゲーム以上にこいつ性格違くねぇえか?