表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

4/13

04

 エルベス王国庭園、お茶会会場。


 優理ことユリーは待っていた。

 お茶会が始まるのを。


 ◇


 お茶会。

 それは、ユリークラッドにとって珍しくもないことだ。

 お嬢様である彼女は、招くことも招かれることにも慣れていた。


 だが、今回は違う。

 俺・優理にとっても、悪役令嬢・ユリーにとっても、初めてのことなのだ。

 緊張する。緊張する。

 だいたいこういう時は、時間が極端に感じる。長いか短いか。 


(あちぃから早く終わってくんねえかな、てか室内でやれよ)


 天気は、憎たらしくも晴れており、この白く美しい肌にダメージを与える。

 男だった時はどうでもよかったけど、こうも俺、ユリーって綺麗だと気にしちゃうよね。

 こんなに綺麗で、優しくて、周りもいい人ばっかなのに、なんで処刑されるような人生を、主人公にだけああだったのか、分からんな。


 そんな、幾度と考えたことを思っていると、暇な時間が終わった。


 壮大な曲と共に、ある男が騎士たちとこちらに向かってくる。

 エルべス王国、王子。エル・エルベス・マーク。

 とその妹、エル・エルベス・エレナである


 名目上は王女エレナ主催となっているが、この茶会は実は違う。

 ここにいる貴族たちのどれくらが知ってるかは知らないが、ゲームをやっていた俺は、この茶会が王子マークが、ある女性を呼ぶために開いたおまけなことを知っている。


 主人公、メルだ。ある事件で出会い、一目惚れした彼女を呼ぶためのお茶会。

 マークが身分上、簡単に会えない、面識のないとされている彼女と会うための手段にすぎない。


 庶民の彼女がここにいるのは場違い、周りから見ておかしくないかって?

 場違いである。けど追い出されることはない。


 この茶会は、最初の招待状の封を使いまわすことがルールとなっている。

 王から王国貴族へ、王国貴族から一般的な貴族へ、貴族からさらに誰かへと流れていく。


 招待されたものが、次の招待するものを決める。その流れを、もらった封によって違うが、数回行っていくのだ。この時、自分より下の身分の者しか招待はできない。それが作法。王国主催の会はだいたいこの決まりだ。必ず、招待するものは身分が自分より下の者。上の者、同列の者に招待状を送ることはとても失礼なことなのだ。

 それ故、身分が極端に差があるものがいても、ある程度ならおかしくはないのだ。それでもメルほどの庶民が来るのは多少珍しくはあるがだ。


 王子、王女のありがた~い挨拶が終わると、王国の使用人たちが、俺たちが並んでいたくそ長いテーブルに茶と菓子を並べるのだった。


 さてと、俺も頃合いを見て、殿方たちが先に頂いたのを確認してから、コップに口をつける。

 ほんと、いちいち決まり事があって面倒だ。


「やあユリー、はじめましてかな」


 茶から口を離し振り返ると、そこには私に手紙、もといラブレターもどきを送ってきた騎士団長様が。実物は、ゲームよりさらにかっこいい……かもな。


「はじめましてユリーです。えっとルドル・グレンド様」

「はは、ルドルでいいよ、私と君の仲じゃないか」

「仲ですか? どこかで会いましたか? 私、ルドル様のこと騎士団長ってことしか知らなくて」


 ルドルは鋭い目で俺を、まるで本物の宝石か見分ける職人のような目で見て、


「これからそういう仲になりたいってことさユリー」


 俺は寒気がした。このイケメンな男、ルドル・グレンドに。

 ほンんんんとうに、ゲーム以上にこいつ性格違くねぇえか?


 



  

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ