02
僕は姉さんが結婚することは、一般的なことだと思う。
結婚をしてこの家を出ていく。それはこの時代、世界にとって魔法が存在するほどにありきたりなことだ。
女性が男性側の家庭に入り、いつの日か、過ごす、過ごした家族の時間が逆転する。
子が親のもとを巣立つように、僕も姉さんから離れないといけないと思う。
僕の知らぬところへ行ってしまうのだ。
それは耐えられないことだ。僕は姉さんが好きだから。
正直なところ、好意に似た想い、勘違いすらを持つほどに好きだ。
血が繋がっている弟に、こんな気持ちを持たれていたらきっと気味を悪がると思う。
姉さんと僕が、結ばれることはないし、誰も許してはくれない。
それは姉さんの幸せとは、真逆にあること。
僕しか望んでいないことだ。
いつからこんな感情を持ってしまったんだろう。
ただの姉好きですまなくなってしまったのは、いつからだろう。
生きれば生きるほどに、分からなくなることがある。
いつから憧れは、好意に変わったのか。
この気持ちをどうすればいいのか。
こんなんで僕は将来、この家を継ぐことができるのか。
そもそもこんな女々しい僕を好きになってくれる人なんているんだろうか。
仮に僕のことが好きな人ができて、僕もその人を好きになったとする。
そしたら僕の今までのこの悩みはどうなるんだろうか。
まるで悪い魔法・呪いが消えたように好意は消えて、普通になれるだろうか。
ならこのやり場のない気持ちは偽物だったってことになるのか。
それはそれで嫌だ。嫌なんだ。
そんなどうしようもない想いもあり、僕はあえて言った。
「姉さん、騎士団長の方とはどうだったの?」
と。
姉さんはそれに対し、嬉しそうに、恥ずかしそうにも、相手に対して肯定的なことを僕ら家族に告げる。好きなんだろう。きっとそうだ。
そこから父のどこか説教とも言えるような、優しい語りが始まり、それこそ姉さんが結婚する前提のように、話は進む。
僕も何か、弟として祝福の言葉を与えたい。与えるべきだ。
でもそんな本心ではない僕がそれを許さない。
「姉さんは、どうなの?」
「姉さんは、僕たちと離れるのは寂しくないの?」
優しい姉さんを止める言葉だったのかもしれない。
それに対して姉さんは、
「分からないわ。でもみんなには、みんなにも幸せになって欲しい」
と姉らしい言葉を返す。
認めたくない。
姉さんと離れたくない。
姉さんがあっちにいくんじゃなくて、そいつがこっちにせめてこいよ
とすらだ。
「姉さん、僕……」
歪んだ僕は、姉さんに
「そいつが姉さんに相応しいか見極める」
「だから会わしてよ」
そんなことを言っていた。
姉さんは、
「ええ、早いうちに一度みんなに紹介したかったから、それこそ今週末にはね」
とだ。
僕が望んで言ったのに、それはまるで姉さんが取られるのが早くなってしまうようだった。
「グレン。大丈夫、いい人だから安心して」
純粋無垢な微笑みを僕に向けてそう言った。
僕はどうすればいいか、どう返せばいいか分からず、
「……うん」
話は加速する。
それは僕が望んでいなかった方向にだ。




