表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

11/13

01

「姉さん、騎士団長の方とはどうだったの?」


 弟の助け舟とも言える、その一声。俺の切り出しにくい話は食卓を囲みながら進む。

 父、母、弟、そして一緒に食事を許されているナーラを含んだ三人の使用人は、飲食を一旦やめて俺を見る。ここでその期待から逃れる選択はない。何より俺としてもちょうどいい。


「ええ、いい人でしたわ」

「もしお父様が許してくださるなら」


「許すも何も好きなら愛せばいい。ユリー、式はいつにするんだ?」


「あなた、まだそれは早いですよ。まだ出会って日も浅いでしょう?」


 この父親は軟派というか、世間とは合っていない価値観。普通、娘がそのような話をしたら多少は、頑なになるもんじゃないだろうか。でも助かると言えば、助かる。昔ながらの親父のように結婚に面倒がつくより、話が早い方がいい。俺は今月までに結婚する予定なのだから。


「そうかそうだな。私としたことが気が早かったよ」

「そうですよ、ゆっくりでも逃げるものではないんですから」


「……」

「お父様は私がいなくなっても寂しくないんですか?」


 俺は父にその余裕さは何かを訪ねていた。

 父はそれに対し、


「分からないな。寂しいかもしれない、でも娘が、ユリーが幸せになるなら嬉しいこと。喜ぶことだろう?」

「ここを離れたからとて、会えなくなる訳でもない。仮に会えなくなったとしても死ぬわけでもない」

「ユリーがここで一生孤独になるくらいなら、どこかで私の知らないどこかにいったとしても、幸せになってて欲しい」


「ユリー、愛とはそういうものだと私は思うんだ。愛されたいとか、見返りを求めるものではなく、愛したいってことなんだよ。生まれて、ここまで育ってくれただけで充分にもらったんだから、老後を見て欲しいとか、子供をみたいとか、離れないで欲しいとか、そう言った考えは」


「愛されすぎだろう?」


 父の人生観に俺は絶句した。

 既にもらっているという考え。与えられているのだから見返りは、求めすぎという思考は、俺にはなかったものだ。


「私はあなたと違って子供くらいは見たいですけどね。あとたまには、顔を見たいし、一緒にお話しくらいはしたいわよ」


 母は父を茶化しながら、温かみのある微笑みを俺に向けた。


「どう思うグレンは?」


 我が息子に問う。


「どうって姉さんが結婚して、ここを出て行ってしまうことだよね?」


 父はああと返答。


「……」


「ナーラはどう思う? 執事としてユリーと一番仲がよかっただろう?」


「私はユリー様がいなくなるのは少し寂しいです。ですがそれが喜ばしいことなら、執事、メイドとしては祝福したいです」


 他、二人の使用人たちも受け入れの言葉を俺に与えた。

 本当にユリー・クラッドは愛されているんだと感じた。


 でも一人、弟グレン・クラッドだけは言葉がない。

 だがそれも分かる。弟としてはそれが分かっていても受け入れられない、そういう年齢だということが理解できる。


「姉さんは、どうなの?」


 グレンは再びはっきりと言い直す。


「姉さんは、僕たちと離れるのは寂しくないの?」


 俺にとって難しい質問。

 ここに来て日がそれほど長くない俺にとって、この家族に情があるのか。


 寂しいと答えるのは容易。

 例え短い期間でも、それなりに過ごせばそれ相応の情はある。

 

 だがここで求められているのはそれではない。


 千歳優理が彼らに抱いた感情ではなく、ユリー・クラッドが抱いていた愛情ではないのかと思う。

 だから俺は答えられる想いを告げた。



「分からないわ。でもみんなには、みんなにも幸せになって欲しい」



  

 

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ