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形勢逆転

 加速3倍。

 剣を正面に置き、左手で保持する。


「かかれっ!」


 敵のリーダーらしき人物の掛け声とともに周囲の敵が僕に襲いかかる。

 でも、その剣は地面に打ち付けられただけだった。


「逃がすなぁぁぁあ!」

「捕まってたまるもんですか!」


 包囲陣のほんの少しの隙間から逃げる。


『スキル:加速は残り30秒です。』


 さて、どこまで持つかな?


『左に敵!』

「えっ?」


 横を見た瞬間、剣の反射光が眩しく映った。


 激しい金属音。なんとかパリィを成功させられた。

 そのまま止まることなく走る。


『後方から狙撃!回避!』

「いやいやいや殺しに来てるじゃん!」


 ビルの裏手に逃げ込む。


『スキル切れました。』

「早すぎる…。」

『上!』

「情報量多いって!!」


 飛び込み前転でなんとか上からの攻撃を躱し、次の振り下ろしの攻撃を剣を掲げて防ぐ。さらにバックステップで間合いをとる。


『剣の耐久が残り少ないです!』

「クソが…。」

『後方注意!』


 マップを見ると、ありとあらゆる路地に赤い点がうごめいている。さらに自分を挟むように赤い点が集中している。


「君に逃げ道はない。降参を提案する。」


 合流地点までは残り半分程度。


「なあ、AI、秘技で目くらましってできる?」

『計算中…疑似的に大雨を降らせる秘技の生成が可能。命名:バケツをひっくり返したような豪雨。』

「…名前、もうちょっと何とかならなかった?まあいいや、それ使う。」

『了解。秘技の発動いつでも可能。』

「…よし。」


 剣の切っ先を一番近い敵に向ける。


「抵抗を確認。」


 敵全体に緊張が走る。彼らの剣の切っ先が示すのは僕。一か八か、博打でもやるしか無い。


「無力化する!」


 波のように押し寄せてくる光に向かって、あるいはそれらから逃げるように、僕はただ一方に走りだす。

 眼の前の敵が突きのモーションを始める。防ぐのは確実に無理な角度。避けるにもすでに後ろに敵が待機している。


「でも、残念だったね。」

「なっ…!」


 敵よりも速く、剣を地面に突きたて柄を踏み台としてジャンプする。突きの空を切る音と、崩れる剣の音が聞こえる。


「残念だな、そっちにも俺達の味方がいるんだ。逃げられねぇ…」

「秘技発動」


 突然降り出す激しい雨。視界が悪くなるのはコンマ数秒もかからなかった。


「な、ど、どこだ?!」


 とりあえず足元の敵の頭に着地し、またジャンプする。


「イテッ。」

「うわー!」

「おい、倒れてくるな!」

「何が起こって…うわぁぁぁぁぁあ!」


 ドミノ倒しみたいになってるんだが。まあ、いいや。

 敵の集団を彼らの頭上を通って脱出し、合流ポイントまで走る。武器を受け取るまでは回避して逃げるしか無い。目眩ましで相手は僕の立ち位置を把握できていないが、見つかるまで数分とかからないだろうしなぁ。


「本当は矢鮫を連れ戻すためにここに来たんだなけどな。」


 なんでだろう、連れ戻すどころか僕も脱出できなくなってるんだけど。




 敵の攻撃を避けつつ、合流ポイントに近づいてきた。ただ、先回りされていたらしくポイントに近づくにつれ敵が増えてきている。攻撃を避けることで手一杯だ。


「止まれ!」


 敵の集団に道を塞がれる。

 気づけばまたも敵に包囲されている。


「言っただろう。君に逃げ道はないと。」

「ふ、ふーん。一対多で勝負仕掛けて、そんなこと言うんだぁ。それも初心者に対して。」

「君がどう思っているのかは分からないが、平和ボケは良くないな。ここは現実であって楽しいゲームの世界じゃないんだよ。」


 リーダーっぽい人が剣を鞘から抜きながら僕に近づいてくる。


「悪いが、危険分子の君は私達の管理下に置かせてもらう。もちろんRWからは逃げられないぞ。」

「危険分子、ねぇ…。」


 僕の手持ちの武器はもうない。スキルも、秘技も使えなくなった。経験値を割り振れば間に合わなくもないが、どれくらい残っているか、必要数回復できるかもわからない。使っても今度こそ逃げる前にキルされるはず。


「何をしたくてここに来たのかは知らないが、ここは戦場だ。」


 諦めよう。


「君のようなゲームで育った子供が立ち入る場所じゃないんだよ。」


 敵が剣を振り上げる。その切っ先は揺らぐことなく僕の足を狙っている。


『何かを忘れちゃあいないかい、君?』


 突然インカムから声が聞こえる。


『全く、遅かったな。受け取れ!』


 ビーコンの光がかすかに見えるビルから、光るものが飛んでくる。

 僕は咄嗟にそれを掴み、敵の剣を防いだ。


「なっ…?!」

「これは…。」

『そいつの名前は “白兎” 。』


 それは、二本で束になっていた刀だった。


『お前のための、お前の専用武器だ。』

「僕の…専用武器…。」

「また武装されるとは…。面倒ですね、まあ私達の作戦において大して問題とはなりませんが。」


 相手が僕と間合いを取る。


「所詮、平和ボケした初心者です。さっさと捕まえましょう。」


 相手が再び僕との距離を詰めてくる。周囲の敵もいつでも戦闘できる体制になっている。


「大した問題じゃない、か。」


 2本の刀を束ねていた紐がはらりと解ける。ほんの少しの重さを感じる僕の両手。これくらいが丁度いい。


「それは、今の僕の台詞かもね。」

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