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会敵

「もう帰るのかい。」

「うん、高校になってから宿題が多くて終わらないんだ。」

「そうかい、今の学生って大変なんだな。」

「じいちゃんの時と変わらないと思うけど。」

「儂のときは夏休みなんて遊ぶだけで良かったぞ。」

「…時代によって変わるもんなんだね。」

「まあ、頑張れとしか儂からは言えないが。宿題が終わったとか、疲れたとかってときはいつでもうちに来てくれて構わんからな。大歓迎じゃ。」

「ありがとう。頑張るよ。」

「ああ。無理だけはしないようにな。」

「うん。」


 じいちゃん家を離れる。じいちゃんはあまり連絡をしないし、両親への帰宅の連絡は僕から入れるって言ったから両親は僕がじいちゃん家を離れたことを知らない。

 つまり、今からRW引き篭もりの始まりだ。


 昨日と同じように駅に入り、例の改札へ向かう。


「入場券を提示してください。」

「はい。」

「…問題ありません。では、お楽しみください。」


 改札を抜け、闇の中に入る。気づけばそこは木でできた小屋だった。


「敵は…やっぱりいない。安全地帯だな。」


 自分にも特に変化はない。窓から外を見ると、空にはスコアランクとは別にタイマーが投影されていた。


「大戦まではあと1時間…。」


 もう一度大戦のルール確認をする。



◯RW大戦

・RW大戦に参加しなかった場合、ペナルティが課される。

・RW大戦はRWにおける半年に一回行われる。

・RW大戦では各チーム陣地に半径50mごとにビーコンが配置される。

・各チームは自陣のビーコンの破壊を阻止し、敵チームのビーコンを破壊する。

・敵チームのビーコンを破壊した時は、そのビーコンの支配エリアを破壊したチームのものとする。なお、ビーコンが破壊された時にそのビーコンの支配エリアにいた元ビーコン所持チームメンバーは死亡する。

・上記は全チームに適応される。

・RW大戦にて戦闘で死亡した場合はペナルティは課されない。

・基本的に裏切りは不可能。



 ざっくりとはこんな感じか。本当はもっと細々としたルールがあるけど基本はこれさえ抑えておけば問題ないはずだ。そして僕は個人プレイヤーになるからビーコンの配置はないはず。


「って考えたら僕隠居生活だけしてたら無敵じゃね?」


 思わずニヤニヤしてしまう。ここがバレさえしなければ無敵…!



 そう思っていた時期が僕にもありました。


「いたぞ!」


 まさかの大戦開始1時間でバレました。


「手持ちの剣じゃふつーに負ける。でも秘技は使いたくない…。」


 とりあえずこっそり速度上昇だけ僕にかけて逃げる。


「おい、逃がすな…って速い…!」


 急に上から敵が落ちてきたけど気にせず避けてそのまま逃げる。


「待てー!」

「待つわけ無いじゃん。」


 後ろからグレネードランチャーが飛んで来たけどサイドステップで避ける。そこに銃弾が雨のように撃ち込まれてきたけどビルの影に入って凌ぐ。そのまま狭い路地を走り抜ける。

 敵はおそらく弦雷。また殺られたらペナルティが課されるからこの大戦のタイミングを狙ったんだろうね。


「いたぞ!」


 路地の前からも敵が出てきた。後ろにも敵がいる。さて、道は塞がれたか…?


「隙あり!」


 突然後ろの敵が消える。そしてその後ろから数人の人が出てきた。


「十六夜…!」


 前の敵が歯ぎしりする。


「あら、弦雷がこんなところに…。それと、見かけない顔ね。」

「あ、僕?」

「よそ見してちゃだめだよ。」


 耳元で金属の擦れる音が聞こえた。右を見たら弦雷の一人が僕に剣を振るい、それを十六夜のメンバーの一人がいつの間にか防いでいた。


「早く後退して〜。ここはあっしらに任せな。」

「は、はい!」


 言われた通り十六夜側に身を引く。


「あんなやつ十六夜にいたか…?」

「いや、十六夜のメンバーじゃないよ。」

「じゃあなぜ匿う…?!」

「あんたら、観察力無いね。」

「は?」

「チームバッジをつけてないことにも気づかなかったの?」

「え、あ、…!」


 弦雷に衝撃が走る。

 そう言えばみんな左の首元にバッジつけてるな。あれがチームバッジか。


「てことは…あれが赤鮫?」


 あの人たち昨日の人達と違うのかな。


「馬鹿なの?」

「は?」

「赤鮫の見た目くらいあんたら知ってるでしょ?それに最近ランクに新しく不明プレイヤー入ってたじゃん。」

「まさか…!あいつ、無所属?!」

「まあ、なんで無所属なのかもわからないけど、あの見た目だと新人さんかな?」

「なるほどな…。おいお前、俺達のチームに来ないか?俺達の実力ならお前を一人前まで育ててやれるぞ。」

「…俺達の実力って、十六夜の人たちにボコされてたじゃん。」

「い、いや、俺達の本気はここからだ!」

「どうしようかな〜。」


 まあ、実際のところはどこのチームにも入る気はないんだけれども。なんか、遊びたい気分。


「君、無理に話をすることはないよ。」


 十六夜の優しそうなおじさんが声をかけてくれる。

 チームに入るなら十六夜一択かも。


「うーん。こうしましょう。僕と弦雷の誰かとタイマン勝負して、弦雷の方が勝ったら弦雷に所属しましょう。でも、僕が勝ったら…分かってますよね?」


 十六夜の人にも目を合わせる。


「大丈夫…なのか?」

「まあ、自信ありそうだし、好きにさせてあげましょ。まあ、貴方が勝ったときの掃討は手伝わせてね。」

「…そちらの下心ちょっと見えてますけど。」

「あの数を一人で相手するのは少し厳しいと思うし、別にあなた個人ならスコアを稼ぐ必要はないじゃない。」

「確かに。交渉成立です。」

「ありがとう。」

「お前ら…勝手に話してるが、俺等に勝てるとでも?」

「やってみないとわからないじゃない。」

「意外と僕も自分に自信あるよ〜。」


 まあ、武器があればだけどね。


「ほう。そこまで自信があるのか。なら俺が相手になってやろう。」


 弦雷側で一番ごっつい体格の人が出てくる。手には巨大なハンマーが握られている。

 僕も剣(初級(Lv.1))を取り出す。


「ぶっははははは!なんだその弱そうな剣は!初級剣じゃねぇか!しかもほんの一部しか支給されない超劣悪品!型落ち!それで挑んでくるか!はっはははは!話にならねぇ!さっさとかかってこいよ!俺達がかあいがってやるよ!」

「き、君!正気か?!」

「それは無茶よ!弦雷の中でも最強格よ、あいつは!」

「いくらなんでも勝ち目ないよ。」


 めっちゃ十六夜の人にも止められる。やっぱり無茶かな。まあ、なんとかなるか。

 自身に速度上昇と筋力上昇をこっそり付与する。

 秘技は使わないほうが良いよね。うーん。


 相手の武器はハンマー。それも巨大。両手持ちをしているところから見てまず片手を空けることは不可能。そしてリーチの問題から懐に入り込めば決着は一瞬で着く。防御力が高くても、僕の筋力上昇では耐えられないんじゃないかな。

 一番の問題は相手の武器の速度。あれをトンデモ速度で振り回されたら近づけない。うーん。難しいな。


「怖気付いたか?あぁ?」


 よし、できるかわからないけど速度上昇を二重掛け!

 右上の例のアイコンにⅡのマークが追加される。よし、二重掛けはできるみたい。あとはあいつが反応してハンマーを振り回す前に…!


「なっ…!」

「は?」

「え?」

「ん?」


 全員が唖然としているうちに相手は光の束となった。


「なにが起こって…?」


 弦雷のメンバーが唖然としているうちに十六夜の人が残りの弦雷メンバーも片付けた。

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