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ノンフィクションインフィクション

『街を襲う巨獣』

『未確認生命体?駅で何が。』

『死者159名 行方不明者720名』

『突如現れた英雄?』


「全く、ふざけた見出しだな。」


 男が机から足を下す。


「一番ふざけているのはそれが現実ってことですよ。はい、コーヒーです。」

「ああ、ありがとう。日頃の業務でも大変だってのに、一々面倒ごとを増やさないでほしいものだな。」

「警察ってそういう仕事なんじゃないですか?」

「否定はできん。」

「そこはちゃんと肯定してくださいよ…。」

「俺は飯食うためにやってんだよ。つれぇな。」


 若いほうが新聞の見出しをちらりと見る。


「それにしても。こんなこと前代未聞どころじゃないですよ。あんなやつ特撮映画以外で見たことなんてないですし。」

「ああ、俺もだ。()()が何か、皆目見当がつかねぇ。」

「世間では合成画像を疑われてますし、政府は声明をまだ出してませんからメディアのでっちあげだって批判が上がってますし。」

「だが…俺たちは、見た。」

「ええ。あれが見間違いなんて言えませんよ。ちびりかけましたもん。」

「俺もだ。でもあの巨獣だけが問題じゃない。」

「あの少女は何だったんでしょうか…。」


 顔に皺が浮かび始めた男は、目の縁を親指でなぞりながら天井を見上げる。

 あの化け物の両目がこちらを向いた瞬間、黒い影があれの体を貫いた。

 化け物が光と化し消え去った後、そこに残っていたのは大きな剣を持った少女だった。

 彼女の姿はすぐに見えなくなったが、今でもあの光景は脳裏に鮮明に残っている。


「あれが英雄ってやつですかね。」

「法律上は銃刀法違反の犯罪者だがな。」


 だがしかし、あの少女に見覚えがある気がすると男は思った。フードを被っており顔こそよく見えなかったが。


「調べるか。」

「調べるって…。」

「あの少女と、()()()()()()()()についてだ。防犯カメラの映像を確認しよう。」

「え、無断でってことですか?それってまずくないですか?!上に怒られるどころじゃすまないですよ!」

「この混乱状態で調査の申請が通るとも思えんがな。今はあの化け物の調査で手一杯なんだから。」

「ええ…。」

「何か問題があれば俺が責任を負う。君は俺に脅迫させられたとでも言っておけばいい。それでも嫌ならば、俺一人で調べるから無理に俺に従わなくても大丈夫だ。」

「警部補…。私も調査に付き合いますから、無茶は止めてくださいね。」

「それと。あまり声を大にして言えることではないのだが、君は不自然に思うことはないか?」

「不自然…ですか?いやぁ、こんなSFじみた話が現実になるとはなぁ、ってくらいですよ。」

「そっちじゃない。今の俺の仕事についてだ。」

「警部補の仕事…ですか?」


 若い男が部屋を見渡す。


「みなさんは現地調査に…あ、警部補は今回の事件の調査の担当じゃないってことですか?」

「ああ。この部署の中で()()に目の前で遭遇したのは俺たちだけだ。」

「本来ならば私たちが調査に派遣されるはずですよね。」

「そうだ。名目上は、あの事件に遭遇したことによる精神的負担の緩和、みたいなことを言っていたが。あの警部がそんな慈愛に満ち溢れた休暇を俺たちに渡すと思うか?」

「…いやしませんね。つまり…。」

「俺たちが残されたのは、俺たちが調べたいことを勝手に調べさせるためだろう。」

「まじすか。なんで警部補はそんな変な信頼を置かれてるんですか?ていうかこれそもそも信頼なのかって…。」

「…いろいろやってきたからな。」


 男は目をつむる。彼はきっといろいろやってきた光景を思い浮かべているのだろう。


「警部補…ちなみにそのいろいろっていうの…」

「さ、決まったなら早速行動に移ろう。」

「あ、逃げられた。」




「夕方の新聞。」


 カレンさんが新聞紙の山を机に放りだす。


「あら、ありがとう。」


 チトセさんが一番上の新聞を手に取る。


「やっぱり、大騒ぎになってるわよね…。」

「どれどれ。」


 ロゴスさんも新聞を開く。


「みなさんが大英雄になってますね。」

「いやどう見ても敵ではない不審者みたいな書かれ方でしょ…。」


 カレンさんが呆れたような声を上げる。


「まぁでも、いつまでもこのままの状態というわけにはいかないだろう。いずれは警察に捕まることになるだろうしな。」

「あああ、お先真っ暗だ…。」

「そんなこと言わないの、カレン。」

「まぁまぁ、とりあえず話を元に戻しましょうか。」

「ええ、そうね。確か…。」

「未知のエネルギー?」

「はい、そうです。」

「僕らの使う攻撃やバフなどには共通のエネルギーが使用されている、か…。」


 試しに自身に筋力上昇のバフを掛ける。


「バフに関しては、身体における筋疲労の回復だとか、ATPの代用だとか、様々な可能性が考えられる。また、秘技に関してもそのエネルギーを利用した物質の状態変化であったり、力学的エネルギーの活用であったりとするのかもしれない。残念ながら俺は物理法則だの生物学だのには疎いから、その辺りは何もわからない。だがしかし、このエネルギーはほとんど確実に存在するといって問題ないだろう。これはRW内にしか存在しないものではあるが、先ほどの死神の出現からして奴らと一緒にOWにも流れ込んでいるだろう。」

「なるほど…つまり、このエネルギーをうまく使えれば職業に関係なく誰でもバフであったり秘技であったりが使えるということですか?」

「はっきりがわからないが、基本的には厳しいだろう。職業システムはある種そのエネルギーを使用できるようにするためのツールのようなものだ。俺の知る中でも、職業に関係のない用途でそのエネルギーを使えているのは一人しかいない。」

「一人…?」

「赤鮫くん、君だよ。君が先ほど見せてくれたあの速度は、通常の人間では少なくとも出すことはできない。おそらく、そのエネルギーを利用して身体能力を強化しているのだろう。」

「えっ…わ、私?」


 みんなの視線が凛に集まる。


「確かに、あの速度は普通は出せないわよね。」

「でも意識してない…。」

「おそらく、 "適正" があったんだろう。つまり、 "適正" を持った人間がOWにいるとRWと関わりのない人間でも我々の持つ能力を扱えるということだ。」

「なるほど…?」

「まぁ、ほとんど可能性はないといっても言っていいだろう。なにせ、彼女は()()だからな。」

「特別…?」

「さっきも言ったように生憎私は物理法則だのなんだのというややこしい専門分野には疎いのだが、ここにこの手の専門家はいるか?」

「そういえば、弦雷の…名前が…。」

「ああ、Physcね。彼はこの手の話は大好物だと思うよ。」

「そうそう、彼に一度聞いてみましょう。」

「ちなみに、この話には続きがあってだな。」

「続き…?」

「おそらく未知のエネルギーは二種類ある。様々なエネルギーに変換できるものと、様々な物質に変換できるものの二つだ。」

「なるほど…?」

「まあ、そこも含めて研究してくれたまえ。それと、そろそろ場所を移すか解散をしよう。」

「どうかしたんですか?」

「おそらく警察が我々の特定のために動いている。それとSouくん、君は面倒事を持ち歩くのが趣味かな?」

「何か、やらかしてますか、僕…?」


 僕は少し動揺していた。この時まで忘れていた、大事なことを。


「…いや、ほかの方々には後ほど話そう。それよりも急いでここを離れよう。Souくんは今すぐにRWに戻ってくれ。いや、そうだな。チトセさん以外は一旦RWに戻ってくれ。チトセさんを通じて君たちと連絡を取り合おう。とにかく、時間がない。帰るまでに面倒事は起こさないように。それと、できるだけマスクや帽子で顔を隠すように。」

「は、はぁ…。わかりました。」

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