最強プレイヤー
「見つけた。」
「ひぎゃっ?!」
突然後ろから声をかけられ、驚いて変な声が出る。後ろをみると、矢鮫がいた。
「驚かないでよ。」
「あ、いや、ごめん…。ぼっーとしてた…。」
「まあ、そりゃそうか。新しい世界に入った途端襲撃されたもんね。」
「なんとか勝てたけどね…。」
「それにしてもさっきどうやって勝ったの?」
「ん?秘技の[鋭水]って言うのを使った。」
矢鮫が固まる。
「?どした?」
「秘技?」
矢鮫が不思議そうな顔で聞いてくる。
「うん。秘技。」
「…そんなものあるの?」
「へっ?ないの?」
「使ったことどころか聞いたことすら無い。」
「…。え?」
矢鮫が秘技を聞いたこともないって?
「矢鮫ってリアルタイムで2ヶ月くらいここに潜ってるんだよな?」
「えーっと、そうだね。ここだとすでに10年潜ってることになるね。」
「じゅ…。うん…。で、それだけ潜ってても秘技を知らない…。ステータス画面って見れる?」
「…ステータス画面?君ゲームか何かと勘違いしてない?」
「…え?体力ゲージは?」
「…ない。」
「マップは?」
「…ない。」
「…。」
まって、なにかがおかしくない?
「空に投影されてるスコアランクは?」
「ある。」
スコアランクは見えてるんだな。うーん。
「固有スキルは?」
「…なにそれ。」
矢鮫がジトッと疑うような目で僕を見る。
「ってことは…。」
すべてが繋がる。
[固有スキル:可視化]
可視化。
「可視化。」
「へ?」
「僕の固有スキルが [可視化] なんだよ。」
「何が言いたいの?」
「みんな実際には秘技とか固有スキルを持ってるんだけれども、普通は見れない。でも僕は固有スキルが [可視化] だから、見れないものも見ることができる。」
「そんなことが…?」
「でも実際僕が勝てたのは秘技を使ったからだし、秘技の存在を知れたのは固有スキルで見れたから…。」
矢鮫はしばらく僕をじっと見つめながら考えていた。
「想が嘘を吐く必要もないし、疑う余地もない。信じるよ。」
「ありがとう。」
「ちなみに私のステータスは見れたりするの?」
「うーん…。支援AI、僕の固有スキルってどこまで使えるの?」
「支援AI…?」
『アナタ自身ノ状態ノミ確認スルコトガデキマス。レベルガ上ガレバ固有スキルヲ使エル範囲モ広クナリマス。』
「今は見れないのか…。」
「一体何と喋ってるの?」
「支援AIみたいなやつ?そいつが僕にいろいろ教えてくれる。」
「…なんか君だけみんなと待遇違うね。」
「え?」
「まず、そもそもRWに入場したときにはすでにどこかのチームに所属してるんだよ。で、固有スキルを固有スキルで知ることになるし、支援AIみたいなのも同伴だし。」
「…。もしかしなくても僕だいぶ異色?」
「異色どころかほとんどチートだよ。」
「…。」
想像の斜め上、大変な事になってるみたいです。
「それにしても、さっきよく勝てたね。相手、スコアランク2位の弦雷だよ。あと43人いたみたいだね。」
「…え?」
スコアランク…2位?43人?
「もしかして、だいぶまずいことやっちゃった?」
「うん。これからいろんなチームに襲撃されるだろうね。」
「えぇ…。」
もう一度空のスコアランクを見る。
「そういえば、矢鮫ってどこのチームに所属してるの?」
「ん?私はどこにも所属してないよ。」
「え?」
「もともと ”時計屋” ってとこに所属してたけど、脱退して今は個人で動いてる。」
「んーと、そういう人っていっぱいいるの?」
「私以外はいないね。つまり、個人プレイヤーは私と想だけだよ。」
あー…。うん。
「もしかしなくてもさ。スコアランクトップのPlayer unknownって矢鮫だったりする…?」
「うん。」
最強のプレイヤーは矢鮫でした。
「まぁ、でも想も5位だし。」
「とんでもないことやらかしちゃったな…。」
「まあ、まあ。」
矢鮫が急に真面目な顔になる。
「あ、で。忠告しておくと、固有スキルだったり秘技だったり支援AIだったりの話は私以外にはしないようにね。余計狙われることになるから。」
「うん。」
「あと、主催チームは注意して。あいつらは知識チートをしてくる。地形とかを使った協力プレーはうざいくらいに強いから。」
「わかった。」
「それじゃあ。」
「矢鮫、もう行くのか?」
「うん。同じ場所にとどまり続けてたら敵に見つかるからね。」
「あ、ああ。」
「あと、想が個人で戦い続けても、チームに入っても、これからどう動くかは想に任せる。ただ。」
矢鮫が突然大きな剣を取り出し、僕の首元に当てる。
「…!」
「次会うときは、敵だから。容赦はしないよ。」
「…。」
「じゃあね。」
矢鮫が剣を持ったまま窓から外へとでていった。黒いコートに赤い大剣を持つ姿が見えなくなる。
「矢鮫…。」
しばらくボーっとしていたが、矢鮫の「容赦はしない」という言葉を思い出し我に返る。
「…ステータス確認するか。」
ステータス画面が開く。
◯プレイヤー情報
プレイヤー:Sou
タイプ:アタッカー
スキル:速度上昇、筋力上昇
言語:日本語
所持武器:初級剣(Lv.1)
◯ステータス/残数
筋力:256
体力:25/128
速度:256
スキル(残):64/128
撃破ダメージ:256
◯特殊ステータス
特殊タイプ:水属性
特殊秘技:0/128
◯特殊スキル
固有スキル:可視化(Lv.1)
〜経験値が溜まっています。ステータスに割り振りましょう。〜
経験値:4300
変動する系統のステータスは更新されないみたい。経験値の割り振りはそれ系統にするべきかな。あと、秘技と体力が回復しないみたい。秘技はいいとしても体力が殆ど残っていないのは危険だな…。スキルもおそらく一回使用するごとに32持っていかれる。重たいな。
「とりあえず、回復ができるかはわからないけど体力は増やしておくべきかな。…そういえば防御力がないのか。装備系で防御力は増やされるのかな。ミサイルの攻撃は痛かったし。防御力の概念は存在する…はず…。」
とりあえず体力に経験値2000をつぎ込む。
体力:25/128→2560/2560
「…ん?」
経験値ってこんなにステータス増えるの…?!