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結束

「剣士、騎士、双剣士、闘士、斧戦士、鎌撃士、盾師、狙撃手、速射手、転輪射手、爆撃師、術師、罠師、縄師、獣師、付与術士、回復術士、盗賊、戦略家、鋳造師、鍛冶師…。職業、思ったよりも多いですね。」

「でしょ?いろーな人たちを合った配置にしなきゃいけんや。職業もそだし個々人の特性をしかっと抑えてで戦略組まんと、ほんの少しのミスで戦線が崩壊してまう。ずーっと随一の戦略家ってもてはやされてきた人生やけど、楽やないよ。」


 そういってアヤセさんは笑った。


「そういえば、エリカさんってマシンガンを使っていましたけど、銃って作れないんじゃなかったですか?」

「厳密にゃー作れっけども、銃みたいな色んな精密部品使うんは手間がかかるよーになっとんねぇ。それに銃っちゃ弾がたいりょーにいる。そーいう大量生産は難しいんよ。やから実質銃は作れん。でも、打のやつ、エリカがどうしてもーっつって頼み込むもんだから、エアーガンやけど頑張って作ったんや。ようやるわ。戦闘にはあまり向かん武器やけどね。職業で狙撃手と速射手が別れとんのは、弓だったりクロスボウが普通だからそれが狙撃手やけど、銃もでてきてしもたからその枠として速射手ができたってわけ。」

「なるほど…。爆撃師はどんな職業なんですか?」

「そーつらミサイルぶち込んでくるんよ。しかもちょーどいい大きさのもんならなーでもミサイルにできるイカれっぷりよ。」

「あー…あいつらかぁ…。」


 RWに来たばかりの頃を思い出す。散々マイクロミサイル投げつけられて、HPゴリゴリに削られたなぁ。懐かしい。


「までも、これからはみんな仲間さぁ、他の戦略家と一緒に計画立ててみーな生き残れるようにするさ。」

「よろしくお願いします!」

「いーのいーの、それよりあんさんは彼女ちゃんを大事にしぃーねぇ。」

「かの…ただの幼馴染なんですが…。」

「嘘ぉ。本気でぇ?幸せにしたりなぁね。」

「え…は、はい。」


 ウインクされても…ただの幼馴染なんだけどな…。




「そーうっ!!」


 部屋を出た瞬間、急に世界が回る。気づけば、天井が見えていた。


「長かったねぇ。」

「あ、ああ、凛。待たせてごめんね。」

「んー、ゆるす!」


 待て、ナニカオカシイ。凛ってこんな感じだっけ。

 少し匂いを嗅いでみると、お酒の匂いがした。


「凛、何を飲んだんだい?」

「んー、りんごじゅーすだよぉ。」


 凛がにへらと笑う。


「あー、よだれたれてるよ。」


 タオルで拭いつつ、凛を持ち上げる。運動してなさすぎて重く感じる…。


「凛、ほらちゃんと立って歩いて。」

「そーうー。えへへっ。」

「だめだこりゃ。」


 凛を背中に背負い直し、部屋に戻る。




「…で、凛…赤鮫に酒を飲ませたんですか。」

「飲ませてはいないわよ。彼女が間違えちゃったのに気づかなかったの。ノルン結成のこの宴の用意で忙しかったからね。」

「ほんとに気を付けてくださいよ…。彼女も未成年ですし…。」

「ちゃんと気を付けるよ。でも、折角の宴なんだし、君もほら、カリカリしてないでばーっと楽しんじゃお!!」


 そういってチトセさんはビールを僕に渡してきた。


「ちょっとチトセさん!!やっぱり凛にお酒飲ませたんじゃないですか?!」

「ふふーん、何のことかな?」

「そーうっ!おいてくなんてひどいじゃなぁい。」

「わっ、凛!酔ってる酔ってる!!水、水飲も!」

「よってないよぉ。それよりぃ、あそぼっ!!」

「わわわっ、ちょっと、凛!!」

「うふふふふ、若いっていいねぇ。」




「疲れた…。」


 ビルの屋上から、空を眺める。相変わらず灰色の雲が空を埋めている。


「んー…。」


 横で凛が僕に寄りかかり眠っている。相変わらず凛は、美少女という言葉が似合う。

 そんな彼女の乱れた服をそっと直しながら、彼女の言葉を思い出す。


『家では家族から邪魔者にされて、学校では除け者にされて…!!誰が心配してるっての?!』


 僕は、何一つとして気付くことはなかった。

 彼女の傷ついた心に。彼女の苦しみに。

 ずっと彼女の隣に居たのに。


「…想。」

「どうしたの、凛。」

「…私から離れないで。ずっと傍にいて。」

「ああ、僕はここにいるよ。」

「怖いの。寂しいの。」

「僕はここにいるよ。」

「うん、うん…。」


 暫くすると、か細く寝息が聞こえてくる。

 僕には、彼女の気持ちを知ることはできない。彼女の苦しみを理解することはできない。

 今の僕には、彼女を楽にしてあげることもできない。

 今の僕にできることはただ凛の傍にいてあげることだけ。

 いつかは、彼女が安心して眠れるようにしてあげたい。

 僕は何度も彼女に助けられた。僕も何度も彼女を助けたい。


「もう、君を傷つけさせたりはしない。」





 宴の音も次第に聞こえなくなった。

 凛がゆっくりと瞼を開く。


「…想?」

「おはよう、凛。」

「私どうしてここに…。」


 しばらくして思い出したようだ、顔を赤くし目線を僕から逸らした。


「変なこと言って無いよね…?」

「うん、普段の凛だったよ。」

「なら、大丈夫…。」


 そう言いつつ、凛は屋上からすっと降りていった。

 コンクリートに残った彼女の温もりを感じつつ、空を見上げる。相変わらずの曇り空。


「この空が青くなることはあるんだろうか…。」


 僕もビルを静かに降りた。





 ノルンの活動の進展がないまま、時間だけが過ぎてゆく。あれ以来、死神は目撃されていない。RWに居た人も、一人、また一人と去っているようだ。


「カレンさん、進展はあった?」

「全く。見たこともない言語が使われてる。ところどころ英語だったりはするけど、読み解けない。わかるところを探してみたけど、前に分かった分だけ。取り合えず、わかってるところから考察しようとは頑張ってる。そっちは?」

「こっちも全然。あれ以来死神が現れてないことが幸いか不幸か…。」

「このプログラムに関係のないことではあるけど、この世界での戦闘能力に関係するもので一つ思うことはある。」

「思うこと…?何?」

「ファンタジーではよく魔法が出てくるけど、RWでの打みたいな錬成師の錬成だったり、あんたが使ってるようなバフだったり。ああいうのって魔法の『魔素』みたいな共通のエネルギーみたいなので運用されてることはない?」

「エネルギー…。確かに、バフとかにエネルギーは必要だったな。待ってよ。」


 ウィンドウを開く。


“魔力:256/256”

“通常スキル:256/256”


「確かに、魔力と通常スキルの項目があるね…。」

「通常スキルっていうのがバフだよね?」

「うん。」

「魔力は何?」

「…。」


 待て、魔力はなんだ?戦闘したときに減っていた記憶はある。でも何に使ったかを覚えてない。


「…分からない。なんだこれ。」

「あんたそれ研究しといてよ。何かしらの発見にはなりそうじゃん。」

「わかった。研究しておこう。」




「あ、Souさん!あ、あの…、今お時間いいですか…?」

「ああ、蒼、どうしたの?」

「赤鮫さんのことなんですけど…い、いろいろお聞きしても良いですか…?」

「うん、いいよ。何でも聞いて。」

「えっと、赤鮫さんとお話がしたいのですが、ちょっと話しかけづらくて…。」

「あー。彼女いつも無表情だし無口だし話しかけにくい感じするよね。」

「そうなんです…。話しかけてもいいのかな、って…。」

「最初はちょっと警戒されるかもだけど、頑張って話しかけてたらすぐ心を開いてくれると思うよ。」

「そうなんですか?!」

「うん。ちなみに、彼女、とっても冷酷に見えるけど実は優しいし、押しに弱いし。彼女が怒ることってあまりないんだよ。僕が彼女に怒られたことって、待ち合わせに遅れたときとか、冷凍庫のアイス食べちゃった時とかしかないよ。」

「あらま…。本当に、優しいんですね…?」

「うん、先生に何度も名前を間違えられた時も、友達に物を壊された時も、窃盗の濡れ衣を着せられて後に間違いだって分かったのにお店の店主が頑なに謝らなかった時も彼女は怒らなかったよ。」

「…それは…。優しい、ですね…?」

「まあ、彼女が怒ることはなかなかないから、安心して。最初は冷たくあしらわれるかもしれないけど、根気強く、ね。」

「は、はい。頑張ります!!ありがとうございますっ!」


 蒼は笑顔で駆けていった。

 ごめんね、凛、最初はトラウマを抉るかもしれないけど人に心を開くことも大事だよ。蒼は純粋な子だから大丈夫だよ。

 そんなことを思いつつ、蒼を見送り僕は訓練室に向かった。

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