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運命を摑む

 静かな部屋に、緊張が漂う。戦場で見た顔が、揃っている。


「急な呼びかけで申し訳ない。今、すぐに対応すべき事象が発生している。その件について、我々十六夜の持つ情報を共有し、これからの対応について協議したいと思う。」


 チトセさんの発言に、各々うなずく。


「おおよその情報はすでにみなさんに届いているだろうが、つい先程正体不明の生命体が出現、これを十六夜と赤鮫で撃退した。その正体についてだが、こちらのSouから詳細を伝えさせてもらう。」

「はい。十六夜所属のSouです。生命体の正体についてですが、その前にまずはここまでの調査で判明しているRWの構造などから説明させていただきます。」


 空気が張り詰める。


「まて、それはどういうことだ?」

「簡単に言うと、あの生命体はRWにもともと存在していた生物であった可能性が高いです。現在判明している内容では、RWはゲームのようにプログラムで構築されており、人為的に追加されたシステムによりあの生物は封印されていました。」

「システム…?嘘だろ?」

「大戦システムもその一つですし、飲食・睡眠無しで生命維持できるのもプログラミングされたシステムによるものです。」


 ざわつく部屋。


「具体的な話に移りますが、そもそもRWはOWとの並行世界というよりかは黄泉の世界

とOWの間に存在する世界のようです。そこに迷い込んだある人が、RWにもともと合ったシステムにさらにプログラムを追加し、現在のRWを作ったそうです。」

「その話はどこから?」

「これらです。」


 拠点から持ってきた資料を机の上に広げる。


「なんだ、これ…。」

「僕の、祖父が亡くなった時、その周りに散らばっていました。祖父は、…RWの管理人だったようです。」

「管理人…?」

「システムの維持などをしていたようです。」

「君はなぜここに?」

「幼馴染を探していたところ、ここにたどり着きました。その時は知りませんでしたが、僕はどうやら次の管理人のようです。果たして、なぜ僕がRWに来れたのかはわかりませんが。」

「それは、想が管理人だから。」

「や…赤鮫?」

「RWを出たら、普段と違う場所に出た。そこで想と会った。急いでRWに戻ろうとしたけど、想も改札まで来れたから。その時私が君の案内人だったってわかった。だから。」

「そうだったのか…。」

「わざわざ案内人なんて、普段はありえない。だから想は “普通じゃない” 。それと君のおじいさんのことも考えると、想は最初から管理人としてRWに来たことが推測できる。」

「なるほどね。でもじゃあなんで、Souは今管理人の仕事をしていない?」

「それは…。これらの資料から、RWにサーバーのようなものが存在しているとは思うのですが、その場所がわからないんです。」

「つまり、管理人としてRWに招待されたはずが、仕事の引継ぎがされていない、と…。」

「おそらくそうかと。話を戻しましょう。件の生命体は、資料において死神だと推測されています。まず、OWにて生死不明となった時、RWに行き着きます。そこで例の生命体、死神に見つかれば黄泉の世界に連れ去られる、とされていました。とはいえど、このことに関しては資料内でもあくまで憶測として扱われていましたが、可能性はある話だと思います。」

「待て、そうなると俺たちも生死不明ということか?」

「僕たちがこのRWにいる間は、OWではそうなっていることになりますね。どっちにしても、OWには存在していない、行方不明の状態であるのは事実です。」

「なるほどね。続けて。」

「死神が現れたということは、封印が解かれた、と考えるのが妥当でしょう。となると、システムに不具合が生じている可能性が高い。また、封印のシステムだけに不具合が生じた、と考えるよりもシステム全体でエラーが発生している、と考えた方が賢明かと思います。」

「つまり、ここでは食事も睡眠も病気も心配しなくてよかったのが、また心配しないといけないということか…。」

「ええ。でも現状はすべてのシステムに不具合があるというわけではなさそうです。実際、僕の視界には管理者権限によるゲーム画面みたいなのが見えてますし。」

「…なにそれ??」

「自分の所持品だったり、ステータス、身体状態などが映ってますね。」


 沈黙。まぁ、そりゃそうか…。


「ステータス…?」

「はい。ゲームでもよくあるような、筋力とか、体力とか、速度とか。」

「…その話は後で聞くとしよう。とにかく、今は生命体に関する話をしようか。」

「とりあえず、現状をまとめると正体不明の生命体がRWに存在しているということでいいのね?」

「はい。そしてここからが本題なのですが、十六夜で調査した結果これからOWに…RWが、OWに影響を及ぼす可能性が高いと思われます。」

「どういうこと…?」

「まず一番可能性があることとして、生命体がOWにも出現する可能性が高いです。これに関しては、僕の祖父…前管理人がOWへの恨みを晴らす計画を立てていたようなのでほとんど確実と思われます。そして、その生命体をOWに出現させる方法によってはRWのシステムがOWに干渉する可能性も考えられます。」

「待ってくれ、一旦整理させてくれ。えっと、まず…?」

「現状必要なことは、まずRWでの生命体排除のシナリオの設定、そしてOWに生命体が出現した場合の対応の検討、あとはサーバーの存在と座標の特定、システムの復旧か。」


 あの人は…弦雷のリーダーか。名前は…忘れた…。


「はい、基本はそうなります。そしてこれはRW全体での問題であり、個人の力では対応できない課題です。」


 張り詰める空気の中、僕は静かに頭を下げる。


「今回の件、皆様にご協力いただきたいです。管理者として、そして僕という一人の人間として、よろしくお願いします。」

「運営チームからも。どうか、よろしくお願いします。」

「問題ない、弦雷はよろこんで協力しよう。」

「ああ。時計屋も協力しよう。」

「輝石も協力するよ〜。」

「ポンプもぜひ協力させてもらおう。というか協力しないと我々もどうなってしまうかわからないからな。こちらからも、ぜひよろしく頼む。」

「みなさん、ありがとうございます!」


 人望には恵まれているのかもしれない。いつも話が早く進むのだから。


「ねぇねぇ、せっかく団結するんだし、組織に名前をつけない?あと、生命体って呼ぶのも気持ち悪いしそっちも。」

「相変わらずね、アカネ…。」


 チトセさんが呆れた顔で呟く。


「名前、か…。運命、定められた運命…。運命を司る『ノルン』とかどうだろうか。これからの運命は我々が掴むものだ、北欧神話のNornになる、ともいえるだろう?」

「ノルン、ノルン…良いですね。」

「あんた天才じゃーん!」

「RWの、私たちの運命を掴む『ノルン』…。反対の人いますか?」


 異議を唱える者もいなかった。



RW特殊作戦部隊『ノルン』

正体不明の生命体『死神』の排除とRW・OWの安全の確保とRWの謎の解明を目的とする。


代表:管理人『Sou』

副代表:赤鮫

団体長:各派閥リーダー



「いろんなことがバタバタとあったね。」

「うん。でも、何とかなってよかった。」

「まだまだこれからだよー。それぞれ理想の異なる人たちが集まったRWで、果たして結束してOWを救うことまでできるのか。」

「頑張らなきゃね。」

「ちなみに想は学校とか、どうするの?」

「うーん。ぎりぎりまでここに残って、時間が来たら後片付けだけするのにOWに戻るかな。」

「しばらくはここにいるってことだよね。」

「うん。やらなきゃいけないことも色々あるし。」

「うん、ありがと。」


 矢鮫はそう言って満足げに微笑んだ。


「あと、私を呼ぶとき、苗字じゃなくて昔みたいに名前で呼んでよ。」

「ああ、ごめん。…凛。」

「うん、うん。」


 矢鮫…凛は満面の笑顔で頷いた。

 空は相変わらず曇ったままだった。

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