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新たな戦い

「あ、Souさん。」

「おはようございます。」

「ここに戻ってきたということは、信じてくれるということかい?」

「まだ、僕は自分自身を信じることすらできませんが…。それでも、今回のことは後回しにはできない。…みなさんのお力を、お借りしたいです。どうか、よろしくお願いします。」

「当たり前だろ?今回の件は君の問題じゃない、RWの問題だ。それならば、RW全員で取り組むさ。」

「ありがとうございます。」

「じゃ、早速作業を再開しよう。ある程度話がわかってきたからあたしがある程度まとめといたよ。

大半の情報は管理者手記に載っている通り。システムに関してはいろいろあるから後でカレンに聞いて。それと疑問点として、やっぱり一番は復讐のこと。RWには干渉できても、OWには干渉することができない。なのにどうやってOWに化け物を送り込むのか。これに対して一番有りえるのはあたしたちがRWに来る、そしてOWに行く道を通らせること。でも、果たしてRWの存在である化け物がOWに移動しても存在することができるのか、さらにそもそもあの道を化け物は通れるのか。その点に関しては情報が少ないからなんともいえない。そもそもこの話はおそらくかなり前の話だから、今まで何も起きていなかったのか、なにか起きていたのかもわからない。この辺の話は不明点が多いから本当に復讐が行われるときのために調べておく必要があるね。他には、サーバーの存在。記述的にはサーバーはこのRWのどこかに存在する。けれども、どこにあるのかまではわからない。あたしたちも見たことがない。…けれども、有り得そうな場所はいくつかある。そこも調べよう。他にも色々あるけど、Souが気になってることとかある?」

「みなさんは…復讐について、どう思いますか?彼の、エトスの意見が果たして正当なのかどうか。」

「あたしは…。彼の動機については否定しない。あたしももう、帰りたい…いえ、帰る場所はOWにはない。けれども、それは人殺しとは同じではない。この世界でも最初は抵抗があった。でもこの世界では殺すことが死になる訳では無いと知ったから戦ってる。もし人が死ぬなら、あたしは戦わない。もし、OWで誰かに殺されたとしても、あたしはそいつを殺すことはしない。」

「俺もだ。ここで俺が戦うみんなをサポートするのは、それが戦いだからだ。人殺しなら、サポートなんてしないさ。」

「憎悪は、愚かなもの。殺されたなら殺してもいい。それなら、殺したから殺されてもいいことになる。憎悪は、反響して、増すだけ。いつかはその連鎖を止めなければいけない。それならば、最初に止めるべきだろう。」

「私は、最初こそ人が憎くて、殺したくてたまらなかった。世界がなくなればいいとも思っていた。でもね、ここでみんなと会えて初めて知った。世界は一つじゃない、殺しをしなくても、私には居場所がある。誰かが支えてくれる。どの世界にも、支える人がいる。その世界を壊すことは、どれだけ他人を苦しめた人間に対してであっても駄目なんだって。上手く説明できないけど、私は知ったの。壊して失うより、自分にあるものを守るべきだって。壊すための力は、守るために使おうって。」

「ヒーローになるためじゃない。他人のためじゃない。自分のために世界を守る。そのための力を私達は持っている。その力を使うなら、今だろう。なんとしてでも復讐を止めるぞ。」

「或都さん…皆さん…。」


 みんなの意志は固い。そして僕も、そんな彼らに異議はない。


「ええ、戦いましょう。それが破壊のための戦いなら、力を捨てましょう。それが守るための戦いなら、力を手に立ち向かいましょう。背中を預けられる人たちがここにはいる。全ては誰のためでもない。今の、自分の幸せを創るために!」




 でも僕らは読み違えていた。復讐の対象、動きの予想。何が起きるのか、何を起こすのか。

 エトスにとってのRWという存在。

 世界は、動いていること。




「緊急!例の化け物らしきものが出たらしい。場所はB207ポイント。狼のような見た目の、バカでかい化け物だってよ。現在弦雷が交戦中。ただ…普通の攻撃がまるで効いていないらしいのと、化け物に負けた一人が…リスポーンしていないらしい。」

「なっ…!」

「…了解。十六夜もすぐに救援に向かう。動けるものはすぐに用意してくれ。そしてひとつ。相手は未知のやつだ。倒せなくてもいい。生きて帰るぞ。」

「「「了解!」」」

「チトセさん、僕は先に向かい情報収集と事態把握をします。」

「わかったわ。気を付けて。」

「はい。」


 化け物が現れた、ということはシステムに組み込まれていた “封印” が解かれた、ということで間違いないはず。とすれば、復讐はすでに始まっているのかもしれない。


「…急がないと。」


 僕は現場に向かう足を急がせた。




 ビルの上から様子を伺う。狼はビルの合間をゆったりと歩いている。闊歩している、と言っていい。弦雷のメンバーはおそらく周囲に隠れている。だがしかし、狼は鼻が利くはずだから隠れても無駄と考えるのが賢明か。先程から狼の動きを観察していると、人間の居場所は理解しているような仕草をしている。つまり、見逃されている、ということか。

 けれども、化け物が死神だとすれば、人を選ぶのだろうか。RWが生と死の間なら、その場にいる人間を狩るのが化け物のはずだ。この武装した人数と相対することに警戒しているのか、舐めきっているのか。


「Souです。対象は現在、B209ポイントからB208ポイントへ移動中。周囲に弦雷のメンバーが隠れていることに気付いている模様、しかし襲う気配はなし。行動が読めません。」

『了解。注意して観察を継続してください。ポイントへの到着予想はあと10分程度。』

「了解。」


 狼の佇まいはまさに孤高のハンターといった感じだ。その姿を見るだけで体が震える。

 その鋭い眼が、あたりを見回す。


「…!!!」


 殺気。それも僕が感じたこともないような、鋭利で、凶悪な殺気。


「まずい…!気づかれた?!」

『Sou、危険な場合は即時撤退してください!』

「りょ…うわぁ?!」


 突然ビルが大きく揺れる。そして、僕の体が落下し始める。

 真下には、牙を覗かせた化け物。


「やるしかない…!」


 白兎を手に取る。そして全てのバフを自身に掛け、秘技の準備。


「やってやんよ、化け物。」

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